日本画の神秘的な美しさと北海道の壮大な自然を組み合わせて、人々に一生に一度は体験してもらいたい特別な旅をご紹介します。
日本画と自然が織り交ぜられた旅を通じて、日本の伝統的な美術形式の魅力を深く探求します。
この旅を通じて、日本画の繊細な技法や風格ある表現が、北海道の自然とどのように共鳴するかを感じ取ることができます。
美術館の静寂と北海道の広大な風景が調和して、心に残る体験を提供してくれることでしょう。
北海道立近代美術館
北海道立近代美術館は、1977年に札幌市に開設されました。
1967年に開館した「北海道立美術館」を、1977年「近代美術館」と「三岸好太郎美術館」に発展的に改組する形で開設されました。
建築設計は、日本の建築都市環境学の研究者、建築家である太田實氏によるものです。
両サイドにシンメトリーの大きな斜め屋根が特徴的です。
北海道立近代美術館は、地域性と国際性を併せ持つ総合的近代美術館です。
収蔵作品をさまざまなテーマで紹介する「近美コレクション」展、幅広い時代・分野を視野に入れながら国内外のすぐれた作品を紹介する「特別展」を開催しています。
「三岸好太郎美術館」は、2011年に「北海道立近代美術館の分館」として位置づけられました。
北海道立近代美術館は、北海道の文化拠点として、そして誰もが心豊かにアートに触れられる憩いと学びの場として、コレクションの充実、多彩な展覧会と教育プログラム、調査研究活動などを進めています。
美術館内には、カフェやミュージアムショップもあり、ここでは、地元の食材や雑貨を楽しめます。
北海道立近代美術館は、北海道札幌市中央区にある美術館です。
コレクション
北海道立近代美術館では、5つの収集方針を掲げて、多彩なジャンルの作品を収集しており、
また、篤志家からの寄贈コレクションが収蔵されています。
[コレクション数:5,908点(令和5年3月末現在)]
「北海道ゆかりの作家」 | 北海道の美術林竹治郎、木田金次郎、神田日勝、杉山留美子、花田和治等 | 片山球子、蠣崎波響、岩橋英遠
日本近代の美術 | 横山大観、松岡映丘 青山熊治、国吉康雄、桂ゆき等 |
エコール・ド・パリ | ドラン、ローランサン、ユトリロ、エルミーヌ・ダヴィッド等 | パスキン、シャガール、フジタ、キスリング、スーチン
ガラス工芸 | 日本及びヨーロッパ近代、世界の現代ガラス |
現代の美術 | ボルタンスキー、宮島達男等 | 1960年代降に活躍した作家
高橋博信コレクション | ルネサンスから近代までのヨーロッパ版画 歌川国貞を主とする江戸後期の浮世絵 |
江上壽幸コレクション | 幕末から昭和戦後に至る北海道のやきもの |
友田多喜雄コレクション | 西洋と日本の近現代版画 |
作品紹介
狆鉄線花図(ちんてっせんかず)《蠣崎 波響(かきざき はきょう)》
この作品は、舞う蝶を大きな瞳でみつめる狆に、鉄線花を添えたものです。
北海道立近代美術館 HPより
緊張感のある構図や狆の毛並みにみる流麗な筆致など、充実した作風を示します。
署名の筆跡と印章から、文化10年頃の制作であり、波響円熟期の作品です。
- この絵に描かれている狆(ちん)は、その時代において大名家を始めとする高い位の家庭で愛される小型室内犬です。
- 画面を見ると、黒と白の毛並みがなんとも柔らかそうに描かれ、赤と青のコントラストが鮮やかな首輪には小さな鈴が優雅に鳴り響いているようです。
- 白い花びらに花芯が紫色の鉄線の花が咲く庭で蝶をじっと見つめるその愛くるしい姿は、まるで狆がかつてどれほど大切にされていたかを物語っています。
皆さんは、この狆の表情からどのような物語を感じ取られますか?
この一枚の絵が、当時の人々の生活に寄り添う愛おしいペットの存在を、今に伝えてくれているように思えます。
蠣崎 波響(かきざき はきょう)について
本名:蠣崎 広年(かきざき ひろとし)
1764(明和元)年~1826(文政9)年
福山城内(現・北海道松前町)生まれ。松前藩主の五男
江戸で南蘋派の宋紫石に師事して中国の写実画法を学びます。
1789(寛政元)年クナシリ・メナシの戦いに際し、松前藩の功労者としてアイヌの連作肖像画「夷酋列像(いしゅうれつぞう)」を描きました。
1790(寛政2)年に完成したその作品群は、光格天皇の叡覧に供されました。
その上洛の折に、当時京都画壇の主流であった円山四条派の画家や文人たちと交流を持つようになり、大きな影響を受けました。
波響は、松前藩家老であり、また、優美な花鳥や豊麗な美人画を描く画家です。
近世の北海道が生んだ最初の本格的な画人と言われています。
夷酋列像(いしゅうれつぞう)
集まれ!北海道の学芸員より
歴史的背景から複雑な思いがしますが、豪華で細やかに威厳を持って描かれた人物像から、波響はこの肖像画のモデルのアイヌの首長達一人一人に向き合って描いたと思われます。
釈迦涅槃図(しゃかねはんず)
文化遺産オンラインより
涅槃図では珍しく、双幅の形式をとっています。
文化遺産オンラインより
中心となる釈迦を囲む会衆や寝台の東西南北に2本1組で配される沙羅樹などは左(右幅)に集中しており、右幅だけで成立するようにも、3幅で1幅を欠くようにも受け取れる構図です。
波響が生涯で描いた最大の作品です。
函館の高龍寺11世禅海上人のために波響楼で制作されたといわれます。
これだけの大画面に、得意とする唐人物風の菩薩や多種多様の鳥、動物が写実的に描き込まれ、波響が全身全霊をもって取り組んだ様子が感じられます。
波響作品における最高傑作の1つに挙げられます。
当時の50才前後は老年といわれる年齢です。
その時に、渾身込めて描かれたであろう作品は、
とても風雅な雰囲気を持っています。
道産子追憶之巻(どさんこついおくのまき)《岩橋 英遠(いわはし えいえん)》
岩橋英遠の『道産子追憶之巻』は、全長約29メートルに及びます。
北海道立近代美術館HP、たびらい北海道情報 より
英遠が長い構想の末、79歳の時に完成した絵巻形式の大作です。
巡りゆく北海道の四季が、日の出から日没までの一日の移ろいと重なりながら、静かに鮮やかに展開します。
なかでも、夕焼けの茜色に染まる田んぼの上を、無数の赤トンボが渡りゆく秋の情景は圧巻です。
一度完成するも、その4年後に描き足したというエピソードからも強い思い入れが伺えます。
記憶のなかに生き続けた北海道の原風景を詩情豊かに描いた英遠芸術の集大成です。
岩橋英遠の『道産子追憶之巻』は、厳冬の閑寂から始まります。
- 深い雪と寒さに覆われた暗いモノクロの世界から、徐々に朝日の光を浴びて温もりを帯び、春の息吹とともに色彩豊かな百花繚乱へと移り変わります。
- 生命を蘇らせる雨後の新緑から夏の濃い緑へと景色は深まり、やがて秋の落日が照らす茜色の空へと変貌します。
- 豊穣な秋が過ぎ去り、黄金色に輝く大地はやがて冬の訪れとともに静かな雪景色に包まれます。
- そして、全てを照らす満月の下、再びモノトーンの深閑な世界が訪れるのです。
一年のサイクルと一日の流れが見事に重なり合い、北海道の大地とそこで生きる人々の営みが息づく、時を超えた美の讃歌です。
作中の冬眠している熊はこの絵の景色を見ている人、また、夢に見ているのは追憶の景色のように見えます。
岩橋 英遠(いわはし えいえん)について
本名:岩橋 英遠(いわはし ひでとお)
1903(明治36)〜1999(平成11)年
北海道の江部乙(現・滝川市)生まれ。
21歳で上京し、日本画家、山内多門に師事。
壮大なスケールで自然現象や風景をとらえた作品で高い評価を受けました。
1994(平成6)年、文化勲章受章。
双璧・那智〔そうへき・なち〕、双璧・華厳〔そうへき・けごん〕
紙本彩色 210×150(cm) 1963(昭和38)年
紙本彩色 210×150(cm) 1963(昭和38)年
和歌山県の「那智の滝」、栃木県の「華厳の滝」。
ともに【日本三名瀑】として挙げられる大きな滝です。
日本三名瀑【華厳の滝・那智の滝・袋田の滝】
それぞれの滝や景色の特徴が描かれています。
瀑布の轟音まで聞こえてきそうです。
また、白い水飛沫と清涼感のある空気が感じられます。
北の海(陽)〔きたのうみ(ひ)〕、北の海(氷)〔きたのうみ(こおり)〕
1980(昭和55)年
120.3×180.5(cm) 1980(昭和55)年
夏の海と冬の海。
相模原市 HPより
描かれたのは、北海道の東端、標津(しべつ)の海岸です。
北の海(陽)では、朝日に向かうように、北の海(氷)では、流氷の海上を遠くの島へ向かうように群れで飛ぶ海鳥達が描かれている海の景色の作品です。
標津町の海岸からは国後島が見えるそうです。
海鳥達の、国境など関係なく自由にどこへでも向かうことができる姿は、人間も本来は、自由であることが描かれているようです。
岩橋永遠は、連作や対の作品を複数描かれています。
それぞれの繋がりや対比を描く事によって
多面的に美を見出そうとされたのかもしれません。
アクセス
住 所:〒060-0001 北海道札幌市中央区北1条西17丁目
TEL:011-644-6881
\ 周辺エリアのご紹介:「近美・三岸・知事公館 3館魅力エリア ART & EAT MAP」配布されています/
利用案内
開館時間
9:30 – 17:00 (入場は16:30まで)
休館日
月曜日(月曜日が祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日は休館)
年末年始(12月29日~1月3日)
展示替期間 等
※詳しくはスケジュールカレンダーで確認をお願いします。
観覧料
近美コレクション観覧料
【近美コレクションのみ】
一般 510(420)円 高大生 250(170)円
※( )内は、10名以上の団体料金
【近美コレクションと三岸好太郎美術館共通券】
*特別展をのぞく
一般 830(670)円 高大生 410(270)円
※( )内は、10名以上の団体料金
観覧料の免除
- 65歳以上。中学生以下。
- 身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方(ミライロID利用可)及びその介護者(1名)など。
受付で手帳等をご提示ください。 - 高校生は毎週土曜日および学校の教育活動で利用する場合は無料。
特別展観覧料
特別展の観覧料は展覧会によって異なります。
※詳細はHPをご確認下さい。
札幌芸術の森美術館
札幌芸術の森美術館は、1990(平成2)年9月に開館しました。
この美術館は、「札幌芸術の森」の一環として、北方地域における新しい芸術文化の創出と発展を目指して設立されました。
「札幌芸術の森」について
札幌芸術の森は昭和61年(1986年)7月27日に開園しました。
そして、1999年までの3期15年にわたる整備期間を経て、現在の形に至っています。
〈新しい札幌の文化を育成〉
豊かな自然と都市、芸術、文化が調和した環境づくりを目指し、四季折々の自然を背景に国内外の彫刻作品を展示する野外美術館、企画展示、音楽や舞台芸術の創作・公演、工芸や版画の講習会など、多岐にわたる文化活動を支援しています。
札幌芸術の森美術館の設計に携わったのは、久米建築事務所〔現:(株)久米設計〕・日本都市開発設計〔現:日本都市設計(株)〕共同企業体です。
札幌芸術の森美術館は、芸術と自然が一体となったユニークな環境で、観ること、体験すること、そして創ることを通じて、訪れる人々に芸術との出会いと交流の機会を提供し続けています。
ここは、将来を担う芸術家の育成にも力を入れており、野外ステージやアートホールでは、国内外からの講師や参加者を迎え、芸術家育成事業が行われています。
札幌芸術の森美術館は、「札幌芸術の森」内にあります。
コレクション
札幌芸術の森美術館は、約1500点のコレクションがあります。
主に、北海道ゆかりの作家や現代的観点から優れた国内外の作品、森に関わる作品等が収集されています。
〈美術作品収集の基本〉
札幌芸術の森美術館 HPより
- 札幌および北海道ゆかりの作家による優れた作品を収集する。
- 国内外の優れた作品を現代的観点から収集する。
- 人類の始原である“森”に関わりのある作品を収集する。
ジャンル | 主な作家 |
日本画 | 小島和夫、羽生輝、平向功一、森山季紫鳥、猪熊佳子 等 | 片岡球子、山内弥一郎、笹山峻弘、黒川青泉、豊秋半二、平子聖龍
作品紹介
パンドラの帰還《平向 功一(ひらむかい こういち)》
2011(平成23)年 紙本彩色 116.1×116.1cm
平向 功一 Instagramより
或る旅団は長い旅の途中で永遠に燃える炎の入った箱を見つけ祖国に持ち帰る。
平向 功一 Instagramより
しかしその箱は遠い昔、その国の祖先が棄てた災の箱であった。
平向功一氏の作品『パンドラの帰還』は、深遠な物語を描いた一枚です。
古典神話を思わせるストーリーテリングの手法を用いて、視覚的な物語を展開しています。
画面には、重厚な船体が天空に浮かび、神秘的な炎を封じ込めた箱が吊るされている様子が描かれています。
実際にあり得ないファンタジックな情景をリアルに描写することで、幻想的な世界観を醸し出しています。
- 『パンドラの帰還』では、茶色を基調とした色調(=「セピア調」)が全体を包み込んでいます。
- 画面の上部に占める大きな船体は、箱を吊るし、着陸準備の姿勢をとっているかのように描かれています。
- 船体や箱、そして街並みが重厚な茶色調で逆光に浮かび上がることで、一層の重みと薄暗い雰囲気を演出しています。
- これらが斜め下向きの構図と結びつき、画作に不穏な空気を醸し出しています。
- また、光と影の対比が強調されており、物語の緊張感や予期せぬ展開の暗示を視覚的に表現しています。
「セピア調」
モノクロの古い写真が色あせて茶色っぽくなったことから、郷愁をさそうような古い情景や事柄に用いられる言葉
「パンドラ」について
パンドラは、ギリシャ神話における人類最初の女性で、しばしば「災の箱」として知られる「パンドラの箱」の物語の主人公です。
この伝説は、様々な悪や災厄が世界に存在するいきさつを説明しています。
【パンドラの箱】
災難を引き起こす原因となるものを例えた言葉です。
「パンドラの箱を開ける」とは、「取返しの付かない事をする」という意味です。
「浦島太郎の玉手箱」同様、開けてはいけないものです。
この神話は、希望がどんな状況にあっても失われないという教訓や、人間の好奇心や行動が未想定の結果をもたらすことがあるという警告のメッセージを含んでいます。
また、パンドラの物語は、原罪や知識の危険性、無知の幸福など、多くのテーマで解釈されます。
美術や文学などの多くの分野で、この物語は異なる形で描かれ、それぞれの時代や文化に応じた意味を持ちます。
この作品から、昔からの教訓が現代に活かされる事の重要性を痛感します。
時を超えた警句がいかにして現代を生きる私達に響くのか、その必要性を改めて感じさせらます。
平向 功一について
1964年生まれ
1988(昭和63)年 北海道教育大学札幌校卒業
日本画の新たな可能性を切り拓く作品で知られる画家です。
彼の創作活動は、伝統的な日本画の固定観念に挑み、新しい解釈と表現を提示してきました。
複数の個展を成功させると同時に、北海道だけでなく全国の展覧会でも入選を重ねるなど、その才能と実力は広く認められています。
平向氏の活動は、画家としてだけはなく、熱心な教育者としても知られ、多くの美術を志す学生たちに知識と技術を伝えてきました。
美術教育に関する彼の論文は高く評価され、学術界においてもその名を知られています。
平向功一氏の献身と成果は、今後も日本画の世界において大きな足跡を残し続けるでしょう。
2008(平成20)年 札幌文化奨励賞受賞
作品紹介
森へ − 白樺《猪熊 佳子(いのくま けいこ)》
早朝だろうか、澄んだ空気に包まれた森の中にたたずむ二頭のつがいの鹿。
(佐藤弥生・札幌芸術の森美術館)朝日新聞デジタルより
ふわふわした夏毛、愛らしい瞳とは裏腹に、野生の獣であるこの臆病な動物は、観察者である人間の存在に気づいたが最後、あっという間に森の奥へ姿を消してしまうだろう。
本作は、猪熊佳子氏の知床半島での取材旅行に基づく作品です。
定型をなぞるのではなく生身の野生動物に取材する画家は、造形的な美しさもさることながら、厳しい北の自然環境で生きる姿にこそ心動かされるのだろう。
- 明るい新緑の森の景色、春から夏の季節です。
- 白樺の白い幹に黒い斑点の樹皮と、鹿の夏毛の茶色に白斑の模様がリズミカルです。
- 鹿の夏毛は茶色に白斑があり、冬毛は灰褐色になります。
- 画面全体のトーンを、明るめに彩度を高く設定して軽やかで爽やかな雰囲気に描かれています。
それが季節感と空気感を醸し出しています。
鹿は、吉兆の意味、そして造形的な魅力から多くの日本画家が好んで描いた動物です。
明るくて柔らかい色使いに心惹かれます。
また、二頭の鹿が恋をしている姿に見えて微笑ましいです。
その自然の景色に癒されていくようです。
猪熊 佳子(いのくま けいこ)について
1958(昭和33)年 京都生まれ
京都市在住
1984(昭和59)年 京都市立芸術大学大学院 日本画修了 買上げ賞
2018(平成30)、2021(令和03)年の日展特選等、受賞歴多数
個展・グループ展、嵯峨芸術大学非常勤講師、嵯峨美術短期大学非常勤講師等
日本の自然とそこに息づく生命の繊細な交わりを描く日本画家です。
1990年頃初めて訪れた屋久島の森に感動し、以後、自然をテーマに制作を続けています。
彼女は全国各地の里山を巡り、深い森、静かな川、そしてそこで生きる小動物たちの細やかな日常を観察し、その光景を温かみのある筆致で描きます。
自然の息吹を捉えることに特化しており、見る者に自然との一体感を感じさせる色鮮やかな透明感のある画風で知られています。
彼女の表現は、日本の四季の変化を通じて、風土ごとの独特の美しさを捉え、それを伝統的な日本画の技法で繊細に、時には大胆に描き出します。
彼女の作品は、展覧会で高い評価を受け、自然と人間の関係を再考する機会を提供しています。
ただ美しいだけでなく、自然と対話し、その教訓を伝える力を持っています。
鹿は、日本画を描くのに欠かせない膠(にかわ)の原料にも使われています。
日本画材料「膠」についての記事を、後日UPします。
アクセス
住 所:〒005-0864 北海道札幌市南区芸術の森2丁目75
TEL:011-591-0090
利用案内
開館時間
9:45~17:00
(6月1日~8月31日:17:30まで)
※入館は閉館30分前まで
休館日
4月29日~11月3日:無休
11月4日~4月28日:毎週月曜日
※月曜が祝日・振替休日の場合はその翌平日
年末年始(12月29日~1月3日)
入館料
展覧会ごとに変わります(小学生以上有料)
※詳細はHPをご確認下さい。
関口雄揮記念美術館
関口雄揮記念美術館は、2005年7月、札幌市南区芸術の森地区の一角に設立されました。
北海道という地が彼の芸術活動に与えた影響とその地への深い感謝の念を表して、この地に自らの美術館を設立することは関口にとって長年の夢でした。
美術館は、竹中工務店が設計施工しました。
関口雄揮氏の作風から、北海道の風土性を象徴するデザイン表現、周辺の豊かな自然と建物の内外が連続する環境づくり、地域性を生かした自然エネルギー利用を図られています。
竹中工務店 HPより
常設展示では、所蔵する関口氏の作品群から、選りすぐりの約40点がテーマに沿って展示され、関口氏の多岐にわたる魅力をさまざまな視点から紹介しています。
また、年間3~4回の特別展示を開催して、関口氏の芸術世界を深く掘り下げて紹介されています。
関口雄揮記念美術館は、他にも様々な活動を通して画家の遺した精神を今に伝え、訪れるすべての人に芸術への深い理解と感動を提供しています。
また、施設を開放して、様々な用途で活用されていることも大きな特色の一つです。
- 学術会議や講演会を開催するなど、学界や大学との連携も積極的に行い、地域社会や北海道全体の芸術文化の振興に貢献しています。
- 館内外のカフェスペースでは季節ごとにお茶会を実施しています。
- これらのお茶会では、茶道各流派と協力し、訪れた人々に周囲の自然の美しさと日本の伝統文化に親しむ機会を提供しています。
- 結婚式など、多目的に利用されています。
関口雄揮記念美術館は、北海道札幌市郊外にある札幌芸術の森の一画にあります。
近隣に北海道立真駒内公園や国営 滝野すずらん丘陵公園があります。
コレクション
関口雄揮記念美術館には、関口雄揮氏の作品(スケッチ類を含む)約3,000点のコレクションがあります。
\ 最新情報発信中! /
作品紹介
早春の林(そうしゅんのはやし)《関口 雄揮(せきぐち ゆうき)》
《早春の林》は、北海道の四季を描いた屏風のうちの1点です。
本作は、ほぼ孔雀石(岩緑青)のみを用いて描かれています。
木の葉は粒子の細かさを変え、木の幹や周辺部の暗い空間は絵具の焼き加減を変えて描くことで、驚くほど多様な彩色を実現しているのです。
関口は「技術を示し伝承するため」に敢えてそのような手法をとったと語っていました。それまでは主に自然の光を描いてきた関口が、非現実的で幻想的な光を描いたという点でも興味深い作例です。
公式Facebook より
本作における光の表現は、後年の、浄土教への傾倒をうかがわせる永観堂障壁画制作以降の作品群に継承されていきます。
本作は、早い段階から関口が光そのものに聖性を見出していた証拠と言うことができるでしょう。
季節の変わり目を感じさせる幽玄な作品です。
画面は淡い色彩のヴェールに包まれた森を捉えており、冬の終わりから春の始まりへの自然の移り変わりを表現しています。
この作品では、まだ裸の木々が新緑に覆われることを待ちわびるかのように、静かにそびえ立っています。
- 画面全体を支配するのは、冷たくも温かみのある青と白のトーンで、初春の冷気と、それがもたらす新生の息吹を視覚的に感じさせます。
- ほぼ孔雀石(岩緑青)のみを用いて、粒子の細かさや絵具の焼き加減を変えて描かれています。
- 樹木の繊細な枝は、まるで生命がじっとその時を待っているかのように、微細ながら力強い印象を与えます。
- 暗い背景から徐々に明るくなるグラデーションは、日が昇り、季節が変わることを象徴しており、冬の寂しさから春の希望へと心情を導いています。
関口雄揮は、この作品で静寂と期待感、そして季節のリズムを見事に捉え、観る者に自然の不変の美と、それがもたらす内面の感情の動きを感じさせます。
美しさと共に、永続する季節の変遷への敬意が表れています。
実験的に作品を描く事も楽しいです。
また、それを発表する事は技術の伝承に繋がります。
こうして残していただいて事が大変ありがたいです。
雨後(うご)《関口 雄揮》
この作品は、日本画家:関口雄輝が描いた数少ない夏の風景のなかでも、さらに希少な屏風の作品です。
描かれているのは十勝岳です。
後年、永観堂の障壁画を制作する際に、浄土の霊峰である須弥山をこの十勝岳をモデルに描くほど、画家にとってその印象は鮮烈でした。雲間からのぞく青い山並みは美しく、自然の神秘を垣間見せているようでもあります。
公式Facebook より
雨が通り過ぎた直後の自然が放つ一瞬の静謐を捉えた作品です。
画面に広がるのは、雨に洗われた後の空の広がりと、その下に横たわる大地の景色。
雲が切れ間から明るい景色を覗かせ、雨上がり特有の清々しさと解放感を描き出しています。
この自然の光は、希望と再生の象徴として、観る者を前向きな気持ちにさせてくれます。
- 白い雲の切れ間から姿を現している空と十勝岳が青で描かれています。
- 十勝岳は存在感を表すように鮮烈な青で、遠くの山々は日の光を浴びて爽やかで明るい空色に彩色されています。
- 画面下部は、日光を反射して白い雲とは対照的に、大地の森林は逆光で黒くシルエットが浮かび上がり、田園はまだ雲の影に覆われているようで暗く黒に近いグレーの景色です。
- 山々は鮮やかな青色で彩色され、雲と大地はほぼモノトーンで、そのコントラストが空の広がりと自然の美しさを強調しています。
- 全体的に様々なブルーのトーンを用いて雨後の空気感を巧みに表現し、抽象的なタッチで雲と光の動きを描いています。
見慣れた風景に新たな感動をもたらし、普遍的な自然の美しさに新しい視点を提供します。
一過性の自然の瞬間を永遠のものに変える、関口雄揮の視覚芸術の妙技が示されています。
ほぼ画面全体に描かれた鮮烈な青い山々とそれらを覆っていた白い雲が上空に流れて晴れていく景色が大変印象に残ります。
この作品は、忘れがたい自然の移ろいと美しさを描いています。
関口 雄揮(せきぐち ゆうき)について
1923(大正12)年 – 2008(平成20)年
埼玉県児玉郡美里町生まれ
幼少の頃より、画家を志し、洋画家・古川弘に師事。
両親の反対を押し切って上京、東京美術学校日本画入学。
在学中、戦争による学徒出陣、画業中断。
帰還後復学、東京美術学校教授の安田靫彦に師事。
東京美術学校卒業後、親交のあった東山魁夷に師事。
日本美術協会総裁賞受賞
文部省給費留学生としての渡仏。
将来を嘱望される画家として戦後の日本画壇に立つ。
郷里の秩父や信濃など山野の自然を画題に写実的な風景画を描く。
1970年代より北海道を取材。
写実的な描写と原色を用いた大胆な彩色が入り交じる幻想的な風景画を描く様になる。
特に、冬の北海道の風景を描いた作品が好評を博す。
1979(昭和54)年、1983(昭和58)年 日展特選受賞。
1998(平成10)年、2004(平成16)年 京都の永観堂・禅林寺のための障壁画を制作、奉納。
後日、岩絵具についての記事をUPします。
アクセス
住 所:〒005-0853 北海道札幌市南区常盤3条1丁目7−19
TEL:011-593-5050
利用案内
開館時間
夏期間(4月-10月):10時〜17時 ※入場は16時30分まで
冬期間(11月-3月):10時〜16時30分 ※入場は16時まで
Cafeボザール :10時〜16時
休館日
月曜(月曜が祝祭日の場合は翌日)
年末年始(12月28日~1月5日)
入場料金
大人 800円 <600円>
大学専門 600円 <400円>
中高生 400円 <200円>
小学生 200円 <100円>
幼児無料
※<>内はリピーター割引の料金です
※詳細はHPをご確認下さい。
北海道立函館美術館
北海道立函館美術館は、1986(昭和61)年9月に開館しました。
北海道立函館美術館の建築設計は、北海道を代表する建築家、田上義也の設計によるものです。
北海道立函館美術館は、「道南ゆかりの美術」「書と東洋美術」「文字と記号の現代美術」という三大テーマを軸に、北海道の芸術文化の発展に貢献しています。
地域に根差した作品の収集・保管・展示に加え、多様な展覧会の開催や教育普及プログラムの実施、そして美術作品の調査・研究を行っています。
これらの活動を通じて、地域文化の充実と芸術への関心の高まりを促進しています。
北海道立函館美術館は、北海道函館市の歴史的な町、五稜郭町に位置しています。
五稜郭の星型の要塞跡を中心に、函館の豊かな文化と歴史を感じることができる場所です。
コレクション
北海道立函館美術館は、函館市から寄託された402点を含む総数2,374点の作品群(2023年3月末時点)を収蔵・管理しています。
そのコレクションで「道南ゆかりの美術」「書と東洋美術」「文字と記号に関わる現代美術」という三つの重点的なテーマを展開しています。
テーマ | 概 要 | 主な作家 |
---|---|---|
道南ゆかりの美術 | 道南地域の歴史や文化に 深く根ざした作品群 | 日本画 小玉貞良、蠣崎波響、野田九浦、 山口蓬春、北上聖牛 油彩・版画 横山松三郎、田辺三重松、山本行雄、 池谷寅一、長谷川潾二郎、早瀬龍江、 国松登、岩船修三、橋本三郎、深井克美、 前田政雄 |
書と東洋美術 | 東洋の古典的な書や美術品 | 書 金子鷗亭、比田井天来、中野越南、桑原翠邦、村上三島、中島荘牛、金子卓義、 中野北溟 |
文字と記号に関わる現代美術 | 言葉や記号をテーマにした 現代の創造的な表現 | 篠田桃紅、荒木高子、三島喜美代、 河原温、高松次郎、平林薫、 ジョルジュ・マチュー、 アンディ・ウォーホル、 ジョセフ・コスース、 ジェニー・ホルツァー、 バーバラ・クルーガー |
1969(昭和44)年 油彩・キャンバス
115.0×141.0(cm) 北海道立函館美術館蔵
1970(昭和45)年 油彩・キャンバス
130.3×162.0(cm) 北海道立函館美術館蔵
1981(昭和56)年 33.2×55.8(cm)
北海道立函館美術館蔵
1815(文化12)年 絹本彩色 100.4×43.8 (cm)
北海道立函館美術館蔵
1987(昭和62)年 墨・銀泥・紙 180.2×46.0(cm)
北海道立函館美術館蔵
1955(昭和56)年 墨・紙
68.0×134.5(cm) 北海道立函館美術館蔵
1971(昭和46)年
アクリル、キャンバス、紙箱付属
25.4×33.0(cm) 北海道立函館美術館蔵
1987(昭和62)年 陶磁、シルクスクリーン130.0×98.0x98.0(cm)
北海道立函館美術館蔵
作品紹介
江差屏風(えさしびょうぶ)《小玉 貞良(こだま ていりょう)》
「江差屏風」は、日本の伝統的な屏風絵画の一つです。
この作品は、江戸時代に北海道でいち早く開港した風情豊かな海の町・江差を描いたものです。
画面全体に広がる活気あふれる海と陸の風景は、当時の人々の生活や文化を色鮮やかに表現しています。
- 青く描かれた海に、白い帆に風を受けて優美な姿を見せる舟は、生き生きとした動きを持ち、黄金に輝く砂浜は、金箔を用いることで屏風画特有の豪華さと立体感を出しています。
- 遠くに連なる山々の緑は、日本の自然の美を象徴する景観を作り出しており、日本画の独特の美しさと情緒を感じさせます。
- 神社の鳥居や船の朱色がアクセントになり、港町の活気を伝えています。
- 小豆色、葡萄色等の赤系統の屋根が全体を繋ぎ、また引き締める役割のように存在しており、またこの地の桜の季節を描くことで、絵の雰囲気を一層華やかにしています。
緻密に描かれた船々や家々は、江戸時代の港町の賑わいを伝える貴重な歴史資料とも言えます。
当時の港町の賑わいが伝わってきます。
とても繊細で細かい描写です。
北海道の春の季節という設定が更に栄えている様子を伝えています。
小玉 貞良(こだま ていりょう)について
生年不詳 – 1759(宝暦9)年
江戸時代中期に松前藩で活躍した絵師
北海道絵画史における最初期の人物として知られています。
アイヌ絵の草分けであり、蠣崎波響に先立つ時代にその文化をテーマにした作品を数多く描きました。
彼の作品は、北海道の美術のルーツを知る上で重要な遺産とされています。
小玉貞良は、狩野派の影響を受けた松前藩出身の絵師であり、アイヌ絵を描いたことで知られています。
彼の落款からは、「松前産」「松前住」という文字が見て取れ、松前藩に生まれ、そこに居住していたことが推察されます。
玉圓斎、龍(圓)斎と号し、独自の定型化した松の木の表現や、狩野派が好む壺形印を使用していたことが指摘されています。
しかし、貞良の教育を受けた可能性のある絵師についての記録はなく、彼の作品の様式は、恐らく近江商人との繋がりから関西地方で学んだ結果であると考えられています。
貞良のアイヌ絵は、現存する最古のものとされ、後のアイヌ絵に多大な影響を与えたとされています。
竹図(たけず)《北上聖牛(きたがみ せいぎゅう)》
「竹図」は北上聖牛による伝統的な日本画です。
- 落ち着いた金の背景(裏箔かは不明)に対して緑の竹が静謐に描かれています。
- 金を背景にすることで青竹のツヤと硬さを表現されています。
- 絹本に描かれる事によって、柔らかく繊細な表現です。
- 金の背景は古典的な日本の屏風絵に見られる技法で、空間に豊かな深みと高貴な雰囲気を与えています。
- 竹は日本の文化では節のある姿が節義や粘り強さの象徴とされ、美意識だけでなく哲学的な意味合いをも含んでいます。
- また、飛ぶ雀が動きと生命力を加え、穏やかながらも生き生きとした景色を作り出しています。
- 雀は、日本文化において親しみやすい存在として捉えられ、幸福や豊穣の象徴ともされています。
この作品は、自然を愛でる日本の伝統的な美意識と、画家の繊細な感性が融合した、静けさと動きのバランスが絶妙な作品です。
シンプルな画面ですが、とても格調高い景色に描かれています。
更に、2羽の雀が親しみやすさと、温かみを与えています。
北上 聖牛(きたがみ せいぎゅう)について
1891(明治24)年5月11日 – 1969(昭和44)年12月30日
北海道函館市生
名は利一郎、別号に北山・池龍
画人北上峻山の甥。
京都に出て竹内栖鳳に師事し、写実的な花鳥画を得意としました。
文展・帝展入選
戦後は個展を中心に活躍しました。
聖牛は花鳥画を得意とし、初期のリアリズムから大和絵、さらに洋画風へと画風が進化していきました。
日本画において変遷豊かな作風を展開した画家です。
北海道の背景と繊細な描写が彼の作品の特徴を形成しています。
アクセス
住 所:〒040-0001 北海道函館市五稜郭町37−6
TEL:01-3856-6311
利用案内
開館時間
9:30 -17:00(展示室への入場は16:30まで)
休館日
月曜日
(月曜日が祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日は休館)
※11.1は芸術週間のため開館
年末年始 (12.29-1.3)
展示替期間等
※休館日は変更になる可能性があります。
観覧料
【ミュージアム・コレクション】
個人 260(210)円
高大生 150(110)円
※中学生以下無料
※()内は10名以上の団体料金
【特別展】
開催される展覧会によって異なります。
詳しくは「展覧会」ページより各展覧会の情報をご覧ください。
【観覧料の免除】
詳しくは「ご利用案内」ページより観覧料の免除の条件をご覧ください。
ファミリータイム
毎週日曜日 9:30~12:00
小さなお子さま連れの家族がゆっくり美術鑑賞を楽しむ事ができる時間です。
詳しくは「ご利用案内」ページより「ファミリータイム」の詳細をご覧ください。
※詳細はHPをご確認下さい。
北海道立旭川美術館
北海道立旭川美術館は、1982(昭和57)年7月に開館しました。
豊かな森林に囲まれた常磐公園に誕生した美術のオアシスです。
地域文化を反映する作品から、国際的な美術まで、多様なコレクションを展示するこの美術館は、道北地域の芸術的な中心地としての役割を果たしています。
建物は、北海道を代表する建築家、田上義也氏による設計です。
木工業が盛んなこの地の特性を活かし、木彫や木工芸、椅子など木の造形作品を積極的に収集しています。
さらに、地元作家の絵画や版画、彫刻、工芸品も充実したコレクションとして館内に展示されており、訪れる人々に旭川の文化と美術の豊かさを体験させています。
北海道立旭川美術館は、北海道旭川市常磐公園(ときわこうえん)内に位置しています。
また、近くには石狩川の流れと大雪山の雄大な景観が楽しめる「リベライン旭川パーク ドリームランド」があり、自然と芸術を同時に満喫できる、訪れる人々にとって理想的なロケーションです。
コレクション
北海道立旭川美術館は、地元旭川の豊かな自然環境と文化を反映させたユニークなコレクションを築き上げています。
「木の造形」と「道北の美術」という二つの柱を中心に、地域に根差した収集活動を行ってきました。
また、「北海道の美術」や「国内・海外の美術」の分野にも注目し、歴史的視点から体系的に作品を収集されています。
1979 (昭和54)年 クロガキ、クワ 16.5×16.0×20.0(cm)
彩色(油彩、アクリル絵具)・クス、水晶 40.0×35.0×73.0(cm)
北海道立旭川美術館 HP,公式Xより
《小浜 亀角》
1967(昭和42)年
紙本彩色
223.0×170.0(cm)
1969(昭和44)年 紙本彩色 161.0×223.5(cm)
1972(昭和47)年 紙本彩色 223.0×170.0(cm)
1995(平成07)年
油彩・キャンバス
162.1×162.1(cm)
2005 (平成17)年
エングレーヴィング・アルシュ紙
30.5×20.0(cm)
北海道立旭川美術館 HP,公式Xより
1950(昭和25)年
油彩、キャンバス
53.0×72.8(cm)
1952(昭和27)年
油彩、キャンバス
72.5×90.9(cm)
1971(昭和46)年
油彩、キャンバス
112.1×145.5(cm)
1977(昭和52)年
油彩・キャンバス
194.5×149.5(cm)
1981(昭和56)年
油彩・キャンバス
187.0×227.0(cm)
北海道立旭川美術館 HP,公式Xより
テーマ | 概 要 | 主な作家 |
---|---|---|
木の造形 | 木を主材料とした 彫刻と工芸品 | 須田 桑翠、深井 隆、土屋 仁応、板津 邦夫、井田 照一、 臼田 健二、植木 茂、ナッシュ デイビット |
道北の美術 | 道北ゆかりの美術作品 | 小浜 亀角、菅原 無田、菅原 弘記、三浦 白琇、 高橋 北修、佐藤 道雄、因藤 壽、上野 憲男、山口 健智、 佐野 忠吉、難波田龍起、武田 範芳、木原 康行、一木万寿三、伊藤 一雄 |
その他 | 北海道の美術 国内・海外の美術 | 小野州一、高坂 和子、木田金次郎、田辺三重松、 上野山 清貢、神田一明、村山 陽一、米谷 雄平、 朝倉 力男、三沢 厚彦、上條 雄也、阿部 貞夫 福井 爽人、羽生 輝 |
作品紹介
煌(こう)《福井 爽人(ふくい さわと)》
1999(平成11)年 紙本彩色 180.0×270.0(cm)
北海道立旭川美術館蔵 公式Xより
ゆらめく草原。
北海道立旭川美術館蔵 公式Xより
横たわる人は金の花模様を施した深紅の衣をまとう。
遠くに聳えるクチャのソバシ故城。
ロードシルクのオアシス都市の仏教遺跡
この作品は、遠い過去のオアシス都市の遺跡を思わせる幻想的な風景を描いた作品です。
画面は淡く澄んだ色調で満たされ、古代のロードシルクのソバシ故城がミステリアスな輝きを放ちながら、遙かな記憶を呼び起こします。
草原がゆらめき、遠くに聳える遺跡が現代とは異なる時間の流れを感じさせます。
着物に金の花模様が施された人物は、深紅の衣をまとい、この静寂で静謐な世界に溶け込むように横たわっています。
- この作品は、アクアブルーの色調で統一された、幻想的な雰囲気を持っています。
- 深紅の衣を纏った女性の姿は、この神秘的な風景の中で生き生きとした存在感を放ち、古代の遺跡を背景に歴史の重厚さを感じさせる一方で、水のような透明感ある描写が軽やかさと新たな息吹をもたらしています。
- 女性が横たわる柔らかな白い布や敷石、植物に薄く青の光か影が反射しているようで水中の様にも見えます。
- ソバシ故城の古びたベージュ色のテクスチャは、草原と融合しながらも、歴史の痕跡としての語りかけがあります。
全体として、静謐ながらも動的な印象を与える、複層的な情感を内包した作品です。
画家の独自の技法と色彩が、古代の遺跡の威厳と静けさを見事に表現し、観る者を遠い夢幻の旅へと誘います。
静謐で幻想的な雰囲気をもつこの作品は、夢の世界に迷い込んだかのような心象風景を描き出しています。
観る者を不思議な感覚に誘う、心に残る美しさがあります。
白い風《福井 爽人》
透明感溢れるブルーを基調とした画面には、窓越しに優しく揺れるカーテンとそこから差し込む自然光が描かれています。
画面中央下部には、柔らかな毛並みをした猫が描かれ、その存在が作品全体の静謐な雰囲気に優しい生命感を加えています。
静寂の中にも動きを感じさせる花瓶の植物や、その隣に置かれた椅子に無造作にかけられたストライプの布、日常の一コマが幽玄的な美を放ち、猫の静かな存在が観る者に平穏な心地を与えます。
曖昧な輪郭と儚げな色彩が幻想的な雰囲気を醸し出し、静けさの中にも生命の息吹を感じさせる作品です。
- この作品の色彩は、ブルー(群青)を基調としており、屋内に配置された物はグレーで統一感をもって表現されています。
- その影部分には紫を使用され、静かながらも深い次元を感じさせます。
- 一方で、窓から射し込む外光は白く描かれ、その眩しさが作品に空間の奥行きと明るさをもたらしています。
- 窓の外に広がる木々は、薄い緑色で繊細に色付けられ、穏やかな印象を与えています。
- この繊細な色彩の選択は、作品全体に柔らかく優しい雰囲気を漂わせています。
福井 爽人はこの作品を通じて、微細な光と影の変化を捉え、穏やかな時間の流れを表現しています。
青い静謐な屋内に白い光と風が入り、テーブルの下で猫が丸まって寛ぐ様子は、観る者にも平和と静けさを伝え、心地よい安心感を与えます。
福井 爽人(ふくい さわと)について
1937(昭和12)年 北海道旭川市生、小樽市育ち
中学時代から油彩画をはじめ、高校時代に日本画と出会います。
1959(昭和34)年 上京 平山郁夫に師事
1961(昭和36)年 東京藝術大学美術学部日本画科に入学
1965(昭和40)年 同大学卒業、大学院進学。第50回日本美術院展(院展)に初入選
以後多くの賞を受賞
1967(昭和42)年 東京藝術大学大学院修了。同大学非常勤助手
1983(昭和58)年日本美術院賞、大観賞を受賞
1984(昭和59)年より東京藝術大学助教授
1991年(平成3)年〜2005年(平成17)年 東京藝術大学教授
2024年現在、東京藝術大学 名誉教授、日本美術院 同人・理事
身近な自然、人間等を対象に、淡い中間色のトーンにより、しなやかな線描を用いた、静寂と詩的な幻想的心象風景を描きます。
アクセス
住 所:〒070-0044 北海道旭川市常磐公園4046−1
TEL:01-6625-2577
利用案内
開館時間
9:30-17:00(展示室への入場は16:30まで)
休館日
月曜日
(月曜日が祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日は休館。芸術週間中は開館)
年末年始(12.29-1.3)
展示替期間等
休館日は変更になる可能性があります。詳しくはお問い合わせください。
観覧料
【第1展示室】
(展覧会ごとに異なります)
【第2展示室】
一般260(210)円、高大生150(110)円
※()内は、10名以上の団体料金
【割引や無料になる場合】
詳しくは「ご利用案内」ページより「観覧料」の詳細をご覧ください。
※詳細はHPをご確認下さい。
後藤純男美術館
後藤純男美術館は、1997(平成9)年9月に開館しました。
「北海道の自然を描くことで、自分は画家として育てられた。この先もまだまだ北海道を描きたい。」
1991(平成3)年、北海道の厳しい自然に惹かれた日本画家・後藤純男は、道内取材の拠点としてアトリエを構え、同所に美術館を建てました。
「作品を散逸させず一ヶ所で自作をご覧頂きたい」
美術館は、後藤純男氏が自ら建てたものです。
2002(平成14)年6月、新館が完成し、展示室が大幅に拡充されました。
新館と旧館を合わせ約600平方メートルある展示スペースでは、展覧会に出品される主要作品の多くを見ることができます。
また画集や個展の図録をはじめ、ポストカード・色紙・一筆箋などのミュージアムグッズの販売をしています。
2階は、資料室と十勝岳連峰を望めるレストランです。
後藤純男美術館は、十勝岳の麓に位置する北海道上富良野町にあります。
コレクション
後藤純男美術館では、日本画家後藤純男氏の作品を7つの展示室に分けて公開されています。
後藤純男美術館HP より
後藤純男美術館では、後藤純男の絵の世界を存分に楽しむことが出来ます。
1982(昭和57)年
257.6×181.8(cm)
1987(昭和62)年
作品紹介
新雪嵐山(しんせつあらしやま)《後藤 純男(ごとう すみお)》
2月の京都で初雪に巡り合い、スケッチブックを片手に宿を飛び出し渡月橋に駆け付けました。
後藤純男美術館 HP より
目にした光景は想像を遥かに超え、松や桜…様々な木々と山全体が白一色となり、迫り上がって来る別世界を見る思いでありました。
「新雪嵐山」この作品は、冬の京都嵐山、渡月橋と桂川が新雪で覆われて織り成す幻想的な景色を捉えています。
作者自身の言葉によると、初雪が降り積もる嵐山の光景は、突如として現れた別世界のような美しさで、視覚的にも感情的にも深い印象を残します。
- 一面の銀世界は一見、モノトーンの世界ですが、細やかな色彩が使われています。
- 陰影によって豊かなグラデーションが生み出されています。
- 雪に覆われた白さが眩しい光を反射し、それと逆光で対照的に暗く影を成す渡月橋や桂川が絶妙な対比をなしています。
- 冬の寒さや冷たさが作品全体から感じられる一方で、手前に見える松の緑は、寒さにも耐え抜く生命力の象徴として、冬の終わりと春の到来を待ちわびる心情を表しているように感じられます。
「新雪嵐山」は、自然の圧倒的な美しさと、季節の移ろいに対する詩的な感情を鮮やかに捉えた作品です。
静かに降り積もる雪の景色の世界観に圧倒されます。
この世界の雪の冷たさが伝わってきそうです。
知床早春(しれとこそうしゅん)《後藤 純男》
「知床早春」この作品は、知床半島の厳しくも美しい冬景色を捉えた作品です。
この絵からは、オホーツク海の流氷が映し出す、身を切るような寒さが画面越しにも感じ取れます。
- 画面に配された金箔は、移りゆく光を捉え、自然の荘厳さを際立たせています。
- 暗く静かなブルーグレーの世界に、金箔で表された光が神性を漂わせ、厳かな雰囲気を作り出しています。
- そして、雪と氷の白さ、そして影に落ちる青の明るさが、画面上で自然の躍動感を映し出し、厳寒の世界の中にある移ろいと神秘的な美しさを感じさせます。
後藤氏は、「季節、時間、天候」といった自然現象の繊細な変化を尊重し、それを「心象として捉え造形化」することを大切にしました。
また、後藤氏の表現方法について、60年代から70年代にかけての彼の作品には金箔がよく使用されています。
彼の作品の深く暗い青や緑から浮かび上がる金の輝きは、作品に宗教的な崇高さをもたらし、同時に日本人の美的感覚に訴えかける要素となっています。
「知床早春」は、深い洞察と感性によって、我々に自然の雄大さと精神的な美を同時に体験させる作品です。
この作品には、冬の終わりと春の息吹が迫る、静かなる期待の瞬間が捉えられています。
これは、冬から春への季節の移ろいを感じさせ、新たな始まりへの希望を表現しています。
後藤 純男(ごとう すみお)について
1930(昭和5)年-2016(平成28)年
1930(昭和05)年 千葉県関宿町の真言宗住職の家に生まれる
1946(昭和21)年 山本丘人に師事。
1947(昭和22)年 この年から5年間、埼玉県内の小・中学校で教職に就きながら創作を続ける。
1949(昭和24)年 山本丘人の紹介で田中青坪に師事。
1952(昭和27)年 再興第37回院展で初入選。教員生活を終える。
1955(昭和30)年〜1963(昭和38)年頃まで関西、四国の真言宗の寺を巡りスケッチ旅行をする。
1960(昭和35)年〜1969(昭和44)年頃まで、北海道各地を取材。
1962(昭和37)年 千葉県流山市に転居。
1974(昭和49)年 日本美術院同人に推挙される。
1976(昭和51)年 再興第61回院展で「仲秋」が文部大臣賞受賞。
1979(昭和54)年 現代日本絵画展代表団の一員として初めて中国を訪問。
1986(昭和61)年 再興第71回院展で内閣総理大臣賞受賞。
1988(昭和63)年 高野山東京別院に襖絵「高野山の四季」を奉納。東京芸術大学・美術学部教授となる。
1997(平成09)年 東京芸術大学を退官。「後藤純男美術館」開館
2001(平成13)年 中国の西安美術学院研究棟内に「後藤純男工作室」開設。
2002(平成14)年 北海道上富良野町に「後藤純男美術館新館」開設。
日本美術院同人
院展では、大観賞・内閣総理大臣賞などを、また晩年には日本芸術院賞・恩賜賞などを受賞。
長きにわたり日本画壇のリーダーとして活躍されました。
アクセス
住 所:〒071-0524 北海道空知郡上富良野町東4線北26号
TEL:0167-45-6181
FAX:0167-45-6271
利用案内
開館時間
〈4月~10月〉 10:00~17:00
〈11月~3月〉 10:00~16:00
休館日
・12月29日〜1月3日
・展示替え等の臨時休館日
入館料
入館料(税込) | 大人 | 小人(小学生~高校生) |
---|---|---|
一般 | 1,210円 | 605円 |
団体(10名以上) | 990円 | 495円 |
障がい者割引 ※障がい者手帳をご提示下さい。 | 605円 | 303円 |
※詳細はHPをご確認下さい。
福原記念美術館
福原記念美術館は、2007(平成19)年7月に開館しました。
美術館は、十勝・釧路地方を中心に展開する食品スーパー「(株)福原」の創業者である福原治平氏が長年にわたり蒐集してきたコレクションを一般に公開したいとの考えから設立されました。
日本を代表するアーティストや地元・十勝ゆかりのアーティストを中心に、絵画、彫刻、書、掛け軸、リトグラフ、ガラス工芸などを5つの展示室に分けて展示されています
福原記念美術館は、(株)毛利建築設計事務所が設計しました。
福原記念美術館には約500点の作品が収蔵されており、展示作品数は約150点です。
展示品は、季節やテーマに合わせて入れ替えられます。
また、若手芸術家の展覧会企画や音楽会なども行っており、多様な芸術体験ができます。
庭園には、池や滝、小橋などがあり、四季折々の風景が楽しめます。
全敷地面積4,000坪の美術館の前庭・後庭ともに芝を敷き詰められ、そこに巨大(15〜16t)な「黒耀石(十勝石)」が展示されています。
その脇には、推定樹齢1,000年の「いちいの大木」がそびえています。
素晴らしい槐(えんじゅ)並木とあわせて、四季折々の景観を楽しめます。
美術館の2階には、「ランチ&カフェえんじゅ」というレストランがあります。
ここでは、地元の食材を使った料理やスイーツが楽しめます。
福原記念美術館は、北海道の日本一広大な十勝平野を一望出来る町、鹿追(しかおい)町にある美術館です。
鹿追町は、大雪山国立公園(だいせつざんこくりつこうえん)の裾野に広がり、大雪山国立公園内には、北海道で一番高い(標高810m)「天空の湖」と呼ばれる「然別(シカリベツ)湖」があります。
コレクション
福原記念美術館には、約500点の作品が収蔵されています。
アートジャンル | 主な作家 |
---|---|
油彩画 | 斎藤斎、神田日勝、神田絵里子、中西堯昭、寺島龍一、中川一政、中西堯昭 |
日本画 | 藤井範子、平山郁夫、片岡球子 |
彫刻 | 田中彰 |
油彩画
福原記念美術館 HP、北海道デジタルミュージアムより
【福原山荘】
※紅葉シーズンのみ公開されます。
作品紹介
白い雨(しろいあめ)《藤井 範子(ふじい のりこ)》
「白い雨」この作品は、優雅な白い紫陽花が静謐な雨中に咲き誇る様子が映し出されています。
- この絵は、画面全体を水彩の様なソフトな色調にして、優しい雰囲気を作り出しています。
- 「白い」紫陽花と雨が際立つ様に、それらを包み込むように水色、薄紫、薄紅色の紫陽花とその緑の葉が繊細に表現されています。
- 白い紫陽花が丸くまとまって咲いている様子や、降り注ぐ雨の丸い水滴の筆触が、画面全体に穏やかで優しい雰囲気を与えています。
雨粒が花びらを通して見える透明感と、それによって際立つ花の色彩が、一つの詩情豊かな世界を創り出しています。
この作品は、雨の美しさと花の儚さを同時に捉え、観る者に心の安らぎを与えています。
優しい色合いの紫陽花と雨が美しくて女性らしい優雅な時間と空間を提供されている様です。
開花へ(かいかへ)《藤井 範子》
「開花へ」は、一輪の向日葵が開花に向かう生命の瞬間を捉えています。
この作品は、開花という自然現象を通じて、創造と再生のテーマを探求し、見る者に強い印象を与える視覚的な富と感情的な深みを提供しています。
- 茶色がかった紫、赤、オレンジの色彩が背後で炎のように躍動し、生き生きとした葉と茎が渦を巻くように画面いっぱいに展開されています。
- この暖色の背景には乾いた力強さが宿り、一方で中心に位置する向日葵は、瑞々しく柔らかなタッチで描かれ、生命の脆弱さと美しさを表しています。
- 向かい風を受けながらも堂々と花開こうとする一輪の向日葵、若々しい緑の茎と葉が、持ち前の生命力と成長の勢いを象徴しています。
花が持つ美しさだけでなく、その美しさを可能にする自然界のダイナミズムへの賛歌であり、花の存在感と背景の抽象的なパターンが相互に作用して、作品全体に活力を与えています。
背景は、胎内の様にも見えます。
柔らかい若葉が秘めている生命力の強さを感じさせます。
「ひまわり」フィンセント・ファン・ゴッホ 1888(明治21)年
同じ題材でも、表現やスタイルが違えば、千差万別です。
「夏花華 - なつはな -〈Summer Floral Splendor〉」
この絵のタイトルは、「夏の花々の華やかさ」「夏の花々の壮麗さ」を意味します。
夏の花が持つ鮮やかな色彩と、それによって生まれる豊かで華やかな雰囲気を表しています。
花々の美しさの他に、生命の壮大さや輝きを感じる表現を求めました。
「開花へ」を観て、植物本来の瑞々しさや柔らかさをもっと表現できる様になりたいと思いました。
藤井 範子(ふじい のりこ)について
藤井範子は、北海道の自然や民俗を題材にした作品で評価されています。
1940(昭和15)年 京都生まれ
1960(昭和35)年 京都学芸大学(現教育大学)特修美術日本画科入学
1962(昭和37)年 第5回新日展 初入選
1965(昭和40)年 京都教育大学特修美術専攻科卒業
1966(昭和41)年 第1回日春展 入選
1973(昭和48)年 第5回新日展 特選受賞
1974(昭和49)年 第6回日展 特選受賞
1975(昭和50)年 日展会友となる
1976(昭和51)年 全関西展審査員
1991(平成 3)年 第23回日展審査員
1992(平成 4)年 日展会員となる2001グループ黎REI(日展大阪展出品作家グループ)結成参加
2024(令和 6)年 現在日展会員、日春展会員
アクセス
住 所:〒081-0212 北海道河東郡鹿追町泉町1丁目21
TEL:0156-66-1010
Mail:info@art-fukuhara.jp
利用案内
開館時間
【4/1 〜 11/30】
午前9:30~午後5:00(入館は午後4:30まで)
【12/1 〜 3/31】
午前10:00~午後4:00(入館は午後3:30まで)
休館日
毎週月曜日※、第2火曜日、ほか年末年始
※但し、月曜が祝日または祝日の振替休日の場合は開館し、翌火曜が休館
入館料
入館料金 | 個人 | 団体 |
---|---|---|
一般 | 600円 | 500円 |
高校生 | 300円 | 250円 |
小学生・中学生 | 200円 | 150円 |
障がい者 | 個人料金・団体料金共に各料金の半額 |
※詳細はHPをご確認下さい。
北海道立釧路芸術館
北海道立釧路芸術館は、1998(平成10)年10月に開館しました。
北海道立釧路芸術館は、釧路・根室地域の新たな文化の発信地として、優れた芸術作品や創造的な活動を紹介しています。
- 写真や映像作品、自然をテーマにした作品、さらにはこの地域独自の文化に根差した作品を系統的に収集・保存し、北国特有の文化的アイデンティティを形成しようとしています。
- 特色あるコレクションを通じて、地域芸術の充実と発展に寄与しています。
- 多様な展覧会を通じて、国内外の卓越した美術作品を紹介する一方で、独自のコレクションを用いた企画展を行い、訪れる人々に幅広い芸術体験を提供しています。
- 美術館では、美術展示だけでなく、ユニークなコンサート、映画会、そして芸術に親しむための講演会やセミナーなどの普及活動も積極的に開催されています。
- 閲覧コーナーでは、さまざまな芸術文化情報を手軽に得ることができ、多様な芸術との出会いの場を提供しています。
北海道立釧路芸術館は、北海道東部(道東地方)の太平洋沿岸にある釧路市に位置しています。
釧路湿原や釧路港などの観光名所に近く、地域の芸術と自然を繋ぐ拠点として、訪れる人々に特別な体験を提供しています。
コレクション
1989-90(平成元-2)年ブロンズ 2000φ
1991(平成3)年油彩・キャンバス 97.0×129.6(cm)
1996(平成8)年 油彩・キャンバス 130.7×162.1(cm)
1997(平成9)年スキャナグラフ(NECOプリント)・雲肌麻紙 220.0×275.0(cm)
1997(平成9)水墨、アクリル絵具、岩胡粉・雲肌麻紙250.0×105.0(cm)
《川田 喜久治》
1987(昭和62)年ゼラチン・シルバー・プリント51.7×34.3(cm)
1965(昭和40)年 ブロンズ 32.5×20.0x25.0(cm)
1983(昭和58)年 陶 47.0×30.0x30.0(cm)
1997(平成9)年油彩・キャンバス 162.0×215.0(cm)
北海道立釧路芸術館は、「自然と芸術」をテーマにした896点(2023年10月現在)の蒐集品があります。
基 本 方 針 | 作 品 |
---|---|
【映 像 芸 術】 | 写真作品 |
【自然と芸術】 | 自然をテーマとする作品 |
【地域と芸術】 | 釧路・根室地域等と関連する作品 |
ジャンル | 主な作家 |
---|---|
日本画 | 岩崎 永遠 羽生輝 千住 博 日高 理恵子 田中みぎわ 間島 秀徳 等 |
北海道立釧路芸術館のコレクションは、「北海道立美術館・芸術館所蔵作品データベース」から、確認できます。
作品紹介
北の浜辺(小島望、大黒島望)きたのはまべ(こじまのぞむ、だいこくじまのぞむ)《羽生 輝(はにゅう ひかる)》
「北の浜辺(小島望、大黒島望)」は、北海道の厳しい自然と、その中に息づく人々の生活を大胆かつ繊細に描いた作品です。
幅広い画面には、遠望する小島と大黒島が荘厳に描かれ、それらを背景に、浜辺の集落が生活の営みと静寂を同時に示しています。
- この作品は、暗い海と冬の空の間に挟まれた、冷たい風が感じられる浜辺の景色を表しており、厳冬期の北国の浜辺に漂う独特の空気感と風土を色濃く反映しています。
- 寒々としたブルーグレーの空と深い藍墨色の海が北国の冷たさを伝える一方で、雪と氷に覆われた大地の白さがこの地の厳しさを象徴しています。
- 暗い寒色系の背景から浮かび上がる土の色の茶色や集落の姿が、過酷な自然環境の中で生きる人々の耐え忍ぶ力と、暖かさを内包した生活の光景を映し出しています。
画家が、「板」を支持体にして描く理由は、道東地方の厳しい寒さと乾燥から画面に張った和紙が破れてしまう為、試行錯誤の末に得た方法です。
それから、厚みのある豊かな質感と深みのある色彩を実現しています。
また、主に油彩画で使用される「ペインティングナイフ」で鋭利で立体感のある表現を実現しました。
浜辺の家々は、辺境の地の孤独と連帯感を同時に感じさせるシルエットで表現されています。
静寂に満ちたこの風景は、荒涼とした北の大地の美しさと、そこに根差した人々の暮らしの強靭さを讃えています。
暗い寒色系の背景は、深く沈み込んでいくような景色です。
その背景から力強く浮かび上がるように描かれた大地や家々が、その地で暮らす人々の強さと温もりを感じさせます。
海霧(オダイト)うみぎり(オダイト),海霧(07.オダイト)うみぎり(07.オダイト)《羽生 輝》
2001(平成13)年 岩絵具 合板 181.8×227.5(cm)
2007(平成19)年 合板・岩絵具 181.8×227.5(cm)
『海霧(オダイト)』は、孤独な風景の一片を捉えています。
「オダイト」とは、明治時代に実在した地名で、港の築造で姿を消した岩場のイメージを描いた作品です。
海霧(オダイト) | 海霧(07.オダイト) |
海霧が漂う、壮大な断崖とその上に静かに佇む一本の標識が描かれています。 作品の上部は雪に覆われた地表と、開けた空間に浮かぶ空の明るさが、穏やかでありながらも厳しい自然の中での生の繊細さを象徴しています。 一方、作品の下部は、濃密な茶と黒の筆致で表された断崖が、海の霧や影の中に溶け込んでおり、見る者に不可解な美しさと謎を投げかけています。 この強烈なコントラストは、自然の荘厳さと過酷さを同時に表現し、静寂の中にも生の力強さを感じさせる作品です。 | 「海霧(オダイト)」から6年後に改めて描かれた作品です。 【 2007(平成19)年創画会賞受賞作】 岬が更に鋭利な形状で描かれています。 壮大な自然景観を捉えています。 静謐で淡い色調の空が広がり、その中で孤立する一角の地形が、海霧に包まれた崖の端に描かれています。 画面の上部は、雲が光を浴びているかのように明るい色で染まっており、穏やかながらも動的な天候の変化を感じさせます。 対照的に、画面の下部は濃厚な色彩で岩肌が表現され、それによって視覚的な深みと重厚感が生み出されています。 崖の上には微細に描かれた小屋や標識があり、人間の存在やその小ささを象徴しているかのようです。 これは、自然界の偉大さと人類との比較を表現し、私たちが生きる環境の一部であることを思い出させます。 |
羽生 輝氏は、自然の美しさと過酷さの中でのバランスを巧みに表現し、観る者に深い印象を与える情景を描き出しています。
原田康子の小説『海霧』の挿絵を手掛けたことから描かれた作品です。
『海霧』は、自然との共生を促し、人間と自然の関係性に対する思索を誘います。
澄みきった空気を感じさせる厳寒の地ゆえの色彩と画面に心奪われました。
ここに立つ人々の孤独な決意を感じさせます。
羽生 輝(はにゅう ひかる)について
1941(昭和16)年- 東京都生
1964(昭和39)年 北海道学芸大学釧路分校卒業
彫刻家・舟越保武、日本画家・上野泰郎、建築家・森田茂介に師事
1971(昭和46)年 第46回道展にて新人賞
1972(昭和47)年 第1回釧新郷土芸術賞。第47回道展にて北海道教育長賞、維進堂賞
1976(昭和51)年 第50回道展にて会友賞
1977(昭和52)年 第4回山種美術館賞「今日の日本画」展
1993(平成05)年 第20回創画展にて創画賞
1994(平成06)年 東京セントラル美術館日本画大賞展にて優秀賞
第7回上野の森美術館「日本の自然を描く」展にてJR東日本賞 釧路市文化奨励賞
2001(平成13)年 釧路市文化賞
現在、日本美術家連盟会員。創画会会友。北海道美術協会会員
創画会における北海道でただ一人の会員であり、北海道の現代日本画壇を代表する画家です。
道東周辺の岬、浜辺、湿原などを主題として、その地に住むものにしか捉えられない風景表現にこだわり、大画面へと描き出してきました。
重厚な絵肌と鋭いタッチで、北方の風土性を強くにじませた静謐で深遠な絵画世界を描きます。
ウォーターフォール《千住 博(せんじゅ ひろし)》
「ウォーターフォール」は、自然の力強さと美しさを見事に捉えた作品です。
- 氷のように澄んだ青と白の色彩が画面を支配し、視覚的に水の流れとその煌めきを表現しています。
- 水の流れを描くために使われた岩絵具の細かい粒子は、光を散りばめるようにして絵画全体に微妙な質感をもたらし、水しぶきや水蒸気の微細な感触まで感じさせます。
- この大作は、まるで永遠に流れる滝の前に立っているかのような錯覚を覚えさせ、その壮大なスケールと細部にわたる精緻な描写は、見る者を水の永遠の循環と変化の中に引き込みます。
千住 博は、伝統的な日本画の技法を現代的な感性で融合させ、「ウォーターフォール」において自然界の中での水の存在という普遍的なテーマを新たな視点から捉え直しています。
例えば、滝の水飛沫の様々な表情を表現する為に、エアブラシ、スプレーガン、洋画用ブラシ、霧吹き等、あらゆる種類の道具を使用し様々な技法に挑戦して、独自の世界観を作り上げました。
私が、日本画を描く様になったのは、この「ウォーターフォール」シリーズがきっかけです。
シンプルに、具象的であり抽象的なこの作品は、日本画の繊細さと美しさを最大限に引き出されていると思います。
「ウォーターフォール」に出会い、その魅力に引き込まれて以来、日本画家としての私の人生が始まりました。
この作品は私にとって、ただの絵を超えた存在であり、創作活動への永続的な情熱を呼び覚ましてくれました。
千住 博(せんじゅ ひろし)について
1958(昭和33)年- 東京都生
父:工学博士の千住鎮雄、母:教育評論家でエッセイストの千住文子、弟:作曲家の千住明、妹:ヴァイオリニストの千住真理子
芸術一家の長男
1982(昭和33)年 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
1987(昭和33)年 東京藝術大学大学院博士課程修了
1995(平成07)年 第46回ヴェネチア・ビエンナーレ<名誉賞>
彫刻の森美術館「千住博 Waterfall&Glasses 展」(箱根)、
ロンドン現代美術館「ビューティフルプロジェクト」展
2002(平成14)年 第13回MOA岡田茂吉賞<大賞>、大徳寺聚光院別院襖絵完成
2004(平成16)年 東京国際空港第2旅客ターミナルのアートディレクション担当
2007(平成19)年 京都造形芸術大学学長に就任(〜’13年)
2011(平成23)年 軽井沢に千住博美術館開館
2017(平成29)年 第4回イサム・ノグチ賞(アメリカ)
2018(平成30)年〜20(平成07)年 『高野山金剛峯寺襖絵完成記念千住 博展』巡回展。
2021(令和03)年 日本藝術院賞受賞。恩賜賞受賞。
2021(令和03)〜2022(令和04)年 シカゴ美術館(米)で「シカゴにおける千住の滝展」開催。
メトロポリタン美術館をはじめ世界主要美術館に作品収蔵。
現在 京都造形芸術大学大学院教授、同付属康耀堂美術館館長
千住 博は、日本画の伝統技法を用いながらも、その存在を世界的に知らしめるため、絵画制作のみならず講演や著述にも力を注ぎ、国際的な視野で芸術を追求しています。
モダンでスタイリッシュな作品で、自然との共生を日本文化の核と見なし、それを自らの創作の指針にしています。
アクセス
住 所:〒085-0017 北海道釧路市幸町4丁目1−5
TEL:0154-23-2381
FAX:0154-23-2386
利用案内
開館時間
午前9:30 〜 午後5:00
休館日
月曜日(月曜日が祝日のときは翌日が休館日)
年末年始(12月29日から1月3日)
観覧料
【所蔵品展】
個人: 一般460円・高大生200円
団体(10人以上、1人につき): 一般360円・高大生150円
【特別展】1人につき3,520円以内で知事が定める額
※詳細はHPをご確認下さい。
「日本画の魅力を感じる美術館の旅!北海道へ〜」のまとめ
「日本画の魅力を感じる美術館の旅!北海道へ〜」いかがでしたでしょうか?
北海道の各地に点在するこれらの美術館は、それぞれが地域の特色と芸術の多様性を映し出しています。
北海道立近代美術館
北海道の近現代美術を網羅する、豊かなコレクションの宝庫です。
札幌芸術の森美術館
豊かな自然に囲まれた美術館で、さまざまな芸術体験が可能です。
関口雄揮記念美術館
日本画家:関口雄揮の作品と精神を継承し、北海道美術の発展に貢献しています。
北海道立函館美術館
道南地方の芸術文化を体系的に紹介し、東洋美術と現代美術の融合を特色としています。
北海道立旭川美術館
北海道旭川地域特有の木工芸と道北の芸術家作品に焦点を当てた美術館です。
後藤純男美術館
日本画家:後藤純男の多岐にわたる芸術活動を紹介し、彼の足跡を辿る場所です。
福原記念美術館
美術と自然が共存し、親しみやすいアート体験を提供する美術館です。
北海道立釧路芸術館
北海道の豊かな自然を反映した作品を集め、道東地方の芸術文化を代表しています。
北海道を訪れる際は、ぜひこれらの美術館を巡り、豊かな自然と文化に触れ、心に残る作品との出会いと体験をお楽しみください。
美術館の旅が、あなたの人生に新たな彩りを加えることを願っています。
コメント