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読売新聞オンライン「猫学(ニャンコロジー)第3回ねこ路地散歩【和の情緒あふれる「神楽坂」…かの文豪ゆかりの街にはやっぱりネコがよく似合う】」の記事に、日本画家:髙橋友美の紹介をしていただきました。ぜひご覧くださいませ。

日本画の魅力と歴史を知る!京都のおすすめ美術館【作品解説付き】

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京都府は日本の文化・歴史の中心地の一つとして、多くの美術館や文化施設が点在しています。

今回は、京都で日本画の美を堪能できる、おすすめの美術館をご紹介します。

古き良き時代から続く、繊細かつ表現豊かな日本画の世界。

その深い歴史とともに、京都にある素晴らしい美術館を訪れて、
その魅力を存分に感じてみませんか?

美しい京都の景色とともに、心に残る芸術の旅に出掛けましょう!

目次

京都国立博物館

京都国立博物館

京都国立博物館は、日本の国立の博物館の一つとして、日本の歴史や文化の中心地、京都に位置しています。
この博物館は、日本の伝統文化や歴史的背景を持つ数々の貴重な文化財を収蔵・展示しています。

古文書、仏像、絵画、工芸品など、日本の歴史や文化を学ぶための多岐にわたる展示が行われています。
時折、特別展示も開催され、様々なテーマでの展示が楽しめます。

明治時代のレトロなレンガ造りの建物と、現代的なデザインの平成館の二つの建物が特徴的です。

明治の赤煉瓦造りの本館「明治古都館」は、国の重要文化財に指定されています。
建築は、東宮御所(のちの赤坂離宮、現・迎賓館)、同じく重要文化財の奈良国立博物館を設計した片山東熊です。

新館「平成知新館」は、建築家、谷口吉生氏の設計によるものです。

美術館は、京都市東山区茶屋町にある美術館です。

この地域には、「豊国神社」「方広寺」「三十三間堂」など、歴史的かつ文化的に重要な寺社仏閣が点在しています。

豊国神社
京都ガイド
三十三間堂観光マップ(方広寺・豊国神社・・・) 三十三間堂観光マップでは例年1月に通し矢が行わる三十三間堂周辺の観光スポットを紹介しています。三十三間堂北側には三十三間堂の本坊である妙法院・豊臣秀吉創建の方広...

コレクション

京都国立博物館 名品紹介 HPより

京都国立博物館は、日本の伝統的な芸術と文化の宝庫です。

この博物館のコレクションには、古代から現代に至るまでの幅広い時代の美術品が含まれています。

特に、平安時代から江戸時代にかけての日本画、仏教美術、陶磁器、そして鎧兜などの武具が豊富です。
また、国宝や重要文化財といった、日本の歴史的に価値の高い品々も多数展示されています。

定期的な特別展示会も開催されており、日本の芸術と歴史に深く触れることができる場所として、多くの人々に親しまれています。

コレクションページは、様々な分野の作品を検索しやすくされており、訪問者の興味や好みに合わせた探索が可能です。

是非、この便利な機能をご活用いただき、京都国立博物館の多彩な美術品の世界を堪能してください。

京都国立博物館が直接所蔵する美術品や、社寺などからお預かりしている寄託品の中から、特に人気のある作品を分野別に選び抜きました。
お好きな分野の作品を選んで、その美しさと歴史をご堪能ください。
また、このページで紹介しているもの以外の館蔵品については、館蔵品データベースを通じてご覧いただけます。
分野や時代、世紀など様々な条件で検索が可能です。
京都国立博物館の豊かなコレクションを、どうぞお楽しみください。

京都国立博物館 名品紹介 より

作品紹介

阿国歌舞伎図屏風(おくにかぶきずびょうぶ)

阿国歌舞伎図屏風 6曲1隻 紙本金地著色 縦88.0cm 横268.0cm 桃山時代 17世紀 重要文化財

舞台上を見ると、刀を肩にかけたかぶき者、柱のそばに坐す茶屋のかか、頬かむりをした道化役の猿若がおり、これは阿国歌舞伎の代表的演目である「茶屋遊び」が演じられていることを示す。

出雲の阿国が北野社の能舞台を代用して「歌舞伎踊り」を始めたのは慶長8年(1603)、本図はその舞台を描いたもので、制作もそれからさほど降らぬ頃と考えられる。

囃座も三味線などなく、笛、小鼓、大鼓、太鼓ばかりで、いかにも初期的様相を示す。

図中に印象的に配された松の表現が、たとえば妙蓮寺障壁画中のそれと通有する性格を有しており、長谷川派による風俗画の一例とする有力な説がある。

17世紀初頭の日本を生き生きと描いたこの絵は、出雲の阿国によって創始された歌舞伎の初期の舞台を表現しています。

舞台上には、典型的な歌舞伎のキャラクターたちが演じられており、見る人をその時代へといざないます。

舞台装置や演者の衣装、楽器を持つ囃子方(はやしがた)まで、詳細に描かれたこの作品は、長谷川派の風俗画の特徴を持つとされており、その時代の日本の文化や芸術の様子を伝える貴重な資料となっています。

絵画内に描かれた松の木の表現は、特に妙蓮寺障壁画中の松と共通する特徴を持っており、この作品が長谷川派によるものであるとする説を強く支持しています。

妙蓮寺障壁画 京都観光オフィシャルサイトNavi より

初期歌舞伎の歴史的瞬間を捉えたこの屏風絵は、日本美術史の中でも特に注目される作品の一つです。

この屏風絵は、歌舞伎の原初の舞台を煌びやかに捉えています。

地面に金箔が使用され、その輝きが舞台と観衆の活気を一層際立たせています。

細部まで精巧に描かれた人々の姿は、当時の歌舞伎がいかに華やかで社交的な場であったかを物語っています。

アクセス

住 所:〒605-0931 京都府京都市東山区茶屋町527

京都国立近代美術館

京都国立近代美術館 (The National Museum of Modern Art, Kyoto; 通称:MOMAK)は、東京国立近代美術館(MOMAT)の分館として1962年に開館した日本の国立の近代美術館の一つです。

京都国立近代美術館につきましては、以下の記事でご紹介しております。
合わせてご覧下さい。

京都市京セラ美術館

京都市京セラ美術館

「京都市美術館」として1933年に開館し、2020年大規模なリニューアルを経て「京都市京セラ美術館」として再開館しました。

日本で最も古い公立美術館の建築として知られています。

設計は、建築家、前田健二郎氏です。
大規模リニューアル工事の設計は、青木 淳氏、西澤 徹夫氏によるものです。

歴史と現代が融合した空間で、アートの楽しさを存分に体験することができます。

京都市京セラ美術館は、京都市左京区の平安神宮 大鳥居に隣接している美術館です。

平安神宮 大鳥居
スマホ対応最終版
[公式]Heian Jingu Shrine 平安神宮 | 京都 平安神宮の参拝情報と神前結婚式・七五三など各種ご祈祷、名勝... 平安神宮の公式サイト。明治28(1895)年平安遷都1100年を期に市民の総社として創建。平安京の正庁(朝堂院)を模した朱塗りの社殿が美しく平安京の雅な雰囲気が漂う。本殿を囲...

コレクション

近代以降の京都の美術を中心に約4,200点の作品が収蔵されています。

なかでも見どころは、明治から昭和にかけての京都画壇の作家たちによる作品群です。
近代日本画を代表する名品が揃っており、全国有数の優れたコレクションとなっています。

作品紹介

寒月《木島 桜谷(このしま おうこく)》

《寒月》木島桜谷 1912年(大正1年) 絹本着色 屏風 六曲一双 各167.0 × 372.0 cm 上:左隻 下:右隻

冬の夜、静けさに包まれた冬枯れの竹林を下弦の月が明るく照らす。
冴えわたる雪面には、まばらに生える竹や若木のシルエットが浮かび、凍てついた空気が流れる。

さまよう狐は餌を求めて鋭い視線であたりを窺っている。
孤独な生命が厳冬の静寂を深めている。

京都市京セラ美術館 HPより

木島桜谷の「寒月」は、冬の静寂と自然の美を見事に表現した作品です。

  • 冷え切った夜に広がる竹林は、下弦の月の柔らかな光に照らされ、その細長い陰が雪面に落ちています。
  • 雪に覆われた地面は、竹や若木のシルエットでほんのりと際立っており、その冷たさが視覚を通じて感じられるかのようです。
  • 絵の中をさまよう狐は、厳しい冬を生き延びるために餌を探しています。その狐の存在が、この寂静な風景に生命の息吹を吹き込んでいます。
  • 狐の鋭い視線と、その周囲を囲む冬枯れの竹林が、静かながらも緊張感のある一幕を作り上げています。

静寂の中でも、生きとし生けるものの持つ生命力が感じられる一枚であり、観る者を冬の情景へと誘います。

この作品は、冬の孤独と美しさ、そして自然の厳しさと生命の温もりが共存する絶妙なバランスを見事に捉えています。

アクセス

京都市京セラ美術館

住 所:〒606-8344 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124

細見美術館

細見美術館 京都公式サイトより

細見美術館は、日本美術コレクター、初代細見古香庵こと細見良氏に始まる細見家三代のコレクションを基にして、細見美術財団が運営する美術館として、1998年に開館しました。

神道・仏教美術から茶の湯の美術、琳派・伊藤若冲といった江戸絵画など、日本美術のほとんどすべての分野・時代を網羅しています。

館内には茶室・ショップ・カフェも併設されております。

建物は、建築家大江匡氏による設計です。

アートをより身近により愉しく」をコンセプトに、講演会やワークショップなども開催されております。

細見美術館は、京都市左京区の岡崎公園西、東山二条にある美術館です。

岡崎公園 京都
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コレクション・ギャラリー

コレクションは、日本の美術工芸のほとんどすべての分野・時代を網羅するもので、国宝や重要文化財を含む仏像、水墨画、茶の湯釜や茶陶、根来、七宝工芸、琳派や若冲など江戸時代の絵画を約1000点所蔵しています。

日本における伊藤若冲コレクターの先駆け

細見美術館における伊藤若冲作品の蒐集は、その美術的価値がまだ十分に認識されていなかった時期、つまり約50年前に始まりました。

この時期、海外では若冲の作品が評価され始めていましたが、日本国内の蒐集家の間ではまだそれほど注目されていませんでした。

細見家はこの状況を見逃さず、若冲の作品の蒐集を積極的に行いました。

細見美術館のコレクションは、若冲の画業の初期から最晩年に至るまでの幅広い作品を含んでいます。

彼の初期の著色画から、生涯の終わりにかけて制作された水墨画に至るまで、若冲の芸術的変遷を一望できる貴重なコレクションとなっています。

これにより、若冲の芸術的技巧と創造性の発展を追体験することが可能です。

このコレクションは、伊藤若冲という画家の全貌を理解する上で、非常に重要な資料となっています。

若冲の独特な世界観と、彼の作品が日本画に与えた影響を深く感じることができるでしょう。

若冲の作品を通じて、日本の伝統美術とその進化の歴史に触れることができます。

作品紹介

《白蓮図》酒井抱一
一幅 江戸後期

白蓮図《酒井抱一》

  • 蓮の花と葉の細部にわたる陰影が丁寧に表現され、静寂の中にも生命のエネルギーを感じさせるような繊細さがあります。
  • 花はその純白さで目を引き、薄墨を引かれた背景によって一層の清潔感と高貴さを放っています。

酒井抱一の作品には、自然の一部を切り取って観察するという特徴がしばし見られます。
彼の作品は静けさと自然への深い洞察が見られます。

蓮は仏教において清浄な心を象徴する花であり、この宗教的な意味合いが作品にさらなる深みを与えています。
白蓮が浮かぶ水面は描かれていませんが、観る者は自然とその静かな水の存在を感じ取ることができるでしょう。

この「白蓮図」は、日本の伝統美術の中でも特に静謐な美を持つ作品として、多くの人々に愛され続けています。

すらりと伸びた純白の蓮の花が、その静謐で儚げな姿に、一瞬にして心を捉えました。

この絵からは、穏やかながらも力強い生命の美が感じられ、見る者を深い静寂の世界へと誘います。

アクセス

住 所:〒606-8342 京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6−3

福田美術館

福田美術館

福田美術館は、実業家である福田恒存氏が私費で築いた私立の美術館です。

2019年に開館し、福田氏が生涯にわたって収集した約1,800点の日本画を中心とした日本美術のコレクションが展示されています。

日本画は、明治から昭和初期までの作品が多く、竹内栖鳳や橋本雅邦、川合玉堂などの京都画壇の手や、小林清親や菱田春草などの東京画壇の巨匠の作品があります。

また、渡月橋を一望できるカフェも併設されています。

福田美術館は、京都市右京区の嵯峨嵐山にある美術館です。

渡月橋
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コレクション

福田美術館 コレクション(一部) HPより

福田美術館は、江戸時代から近代にかけての、有名な日本画家の作品で構成されるコレクション約2,000点を有しています。

コレクション・コンセプト

たとえ美術に詳しくない方が見ても、感動を覚えるような」作品

京都画壇の作品には特に力を入れており、注目すべき初公開のものや、幻の作品が多数含まれます。

作品紹介

雪月花《川合玉堂, 横山大観, 竹内栖鳳 》

雪《川合玉堂》月《横山大観》花《竹内栖鳳》
水墨画のように、静かな冬景色が描かれています。

雪景色の中、水辺の停泊している船に竿か箒か雪かきを持つ人が近付いている様です。

白い雪景色と深く暗い藍黒の水面、背中を丸めている黒い人影が、冬の厳しい寒さと冷たさを表しています。
しかし、奥には家と寄り添うように木があり、そこには人の暮らしと温もりが感じられます。

《色彩について》
手前の深い藍黒の水面と、雪の純白との対比が、冬の静寂と美しさを際立たせています。
深く暗い水面は、雪に覆われた風景の白さをより一層強調し、冬の厳しさと静けさを表現しています。

《形について》
画面上部のぼかされた空と屋根に積もる雪は、周囲の寒さを柔らかく伝える一方で、画面下部の船ははっきりとした形で描かれています。
この船の形の鋭さは、冬の寒さとその環境に生きる人々の日常を象徴しています。

《構図について》

船、岸辺、家、背後の木が巧みに配置されており、視線をジグザグに絵の中心に導いています。
この構成により、作品全体に動きとリズムが生まれ、視覚的に引き込む効果を生んでいます。


この絵は、単なる風景描写を超え、冬景色の中の静謐な美と、そこに生きる人の存在を巧みに捉えています。
空は清澄な青色、満月は白く光り輝いています。

それは、月が夜空を明るく照らしている様子でしょうか。

それとも、夕暮れ時日が沈む頃、東の空に昇る明るい月を表しているのでしょうか。

日本画における自然表現の繊細さと、夜の風景が持つ幻想的な美を見事に捉えた作品です。

《色彩について》
夜空に浮かぶ満月が、その純白の輝きで静かな存在感を放っています。
冬の晴れた夜によく見られる積雲を思わせる雲は、空に溶け込むように描かれ、月と、空の明度の違いが一層月の輝きを際立たせています。

《形について》
満月の円形と、それを取り巻く雲の抽象的な形の対比が、自然界の有機的な美と幾何学的な美しさを同時に捉えています。

この対比は、宇宙の秩序と自然の流動性を感じさせます。
また、大観の深い観察力と芸術的な洞察力を示しています。

《構図について》

雲を螺旋状に配置することで、視線を自然と中央にある月へと導きます。
この巧みな配置は、月へ視線を引き付け、その静謐な美しさをより強調しています。


画面全体には静けさと調和が漂い、観る者を満月の夜の幽玄で詩的な風景へと誘います。
丸い鮮やかな緑の丘に笹草と、薄紅色の桜の花が繊細に描かれていて、春の息吹を感じさせます。

ここに描かれた桜の木は、その細い幹が若さと生命の初々しさを象徴しており、春の新しい始まりを感じさせます。

対照的に、崖の描写は自然の土台となる地形の力強さを感じさせます。

日本の春の情景を、詩的な感覚で捉えた優れた作品です。

《色彩について》
絵の中心に、画面の半分以上を占める鮮やかな緑の丘とそこに生えている笹草、薄紅色の花を咲かせた桜の木。
背景の上部の空は生成、下部の崖は黄土色のグラデーション配色で全体がまとまる様に構成されています。

《形について》
桜の木は細く繊細に、丘と遠景に霞む山の稜線が丸く、また、山と同じ形状の雲がふんわり柔らかく描かれており、全体を可愛らしい印象にしています。

対照的に、崖は荒い筆致で力強さを感じさせます。

《構図について》
全体が、丘の斜面の傾きに同調しています。

桜は上半分が見切れていますが、画面に動的なリズムを与えています。
小さな笹草が桜の若木を支えている様な位置にあります。

日本の春を象徴する桜の風景を、穏やかに親しみやすく、そして視覚的に魅力的な方法で表現しています。

「雪月花」は、日本画壇の三巨匠、川合玉堂、横山大観、竹内栖鳳による共作であり、日本美術の最も愛されるテーマの一つを捉えています。

これらの作品は、日本の四季を象徴する「雪」「月」「花」をテーマにしており、それぞれの画家が自らの視点で自然の美を表現しています。

日本美術院を再興した横山大観は度々京都を訪れ、組織を拡大するために有望な画家の引き抜きを試みます。
京都市立美術工芸学校で共に教鞭を執った京都画壇の巨頭・竹内栖鳳を鴨東の料亭で説得するも、栖鳳はこれを拒否。
一旦交信が途絶えますが、関東大震災の後に栖鳳は大観と淡交会を結成し、川合玉堂も加わります。

本作品はその時期に描かれたもので、大観、栖鳳、玉堂の共作です。

雪月花は古来、美しいものの代表として日本人に愛でられ、多くの芸術作品の題材となっています。

あえて伝統に挑んだ、三者三様の心意気が感じられます。

福田美術館 HPより

この三作品は、各画家の個性と技術を駆使しつつ、日本画の伝統に新たな息吹を吹き込んでいます。

これらの作品は、日本人にとって永遠のテーマである雪月花を、三者三様の解釈で捉え、伝統への挑戦とも言える独創性が感じられる傑作となっています。

観る者にとっては、日本の自然の美しさと、そこに対する深い敬愛を感じさせる、価値ある芸術的体験を提供してくれるでしょう。

この三部作「雪月花」は、それぞれが単独でその美を完結させつつ、一緒に展示することで、まるで一つの物語を紡ぐかのような工夫がされています。

個々の作品は、それぞれが独自の情感と美を持ちながらも、隣合せにすることで一層の調和と対話を生み出しています。

そして、これらが制作された時の背景を知ることで、作品からはただ静寂な美だけでなく、未来への希望と静かながらも強い決意が感じられます。

アクセス

住 所:〒616-8385 京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3−16

相国寺承天閣美術館

相国寺承天閣美術館

相国寺承天閣美術館は、昭和59年4月、相国寺創建600年記念事業の一環として、本山相国寺・鹿苑寺(金閣)・慈照寺(銀閣)・他塔頭寺院に伝わる美術品を受託、保存、展示公開、修理、研究調査、禅文化の普及を目的として京都の相国寺内に建設されました。

美術館の設計は、建築家川崎清氏です。

相国寺の創建は室町時代にさかのぼり、室町幕府第三代将軍足利義満によって創建された臨済宗相国寺派の大本山です。

京都五山の第二位に列せられ、五山文学を代表する禅僧や、如拙、周文、雪舟らの日本水墨画の規範を築いた画僧を多く輩出しました。

地理的にも、文化的にも京都の中心に在り続け、このような600年余の歴史により、京都の精神文化を伝える窓口として、中近世の墨蹟・絵画・茶道具を中心に多数の文化財が伝来しています。

相国寺承天閣美術館 HPより

第一展示室には、鹿苑寺境内に建つ金森宗和造と伝えられる茶室「夕佳亭(せっかてい)」を復元されています。

鹿苑寺(金閣寺)茶室「夕佳亭」
臨済宗相国寺派
館内案内 | 承天閣美術館 | 臨済宗相国寺派 館内案内 | 相国寺承天閣美術館は、相国寺・金閣寺・銀閣寺・他塔頭寺院に伝わる美術品を受託し、保存及び展示公開、修理、研究調査、禅文化の普及を目的として建設されま...
臨済宗相国寺派
金閣寺 | 臨済宗相国寺派 正式名称を鹿苑寺といい、相国寺の塔頭寺院の一つ。舎利殿「金閣」が特に有名なため一般的に金閣寺と呼ばれています。

美術館は、その歴史的価値と美術的重要性を今に伝えています。
美術館を訪れることで、日本文化の深い理解とともに、心に残る芸術体験を得ることができるでしょう。

相国寺承天閣美術館は、京都市上京区の相国寺内にある美術館です。

臨済宗相国寺派
相国寺 | 臨済宗相国寺派 臨済宗相国寺派の大本山である相国寺は、京都五山第二位に列せられる名刹です。正式名称は萬年山相國承天禅寺。

収蔵品

美術館には、相国寺およびその関連寺院から伝来する、国宝5点を含む145点の重要文化財など、中近世の墨蹟、絵画、茶道具をはじめとする数多くの貴重な文化財が収蔵されています。

伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯の文化財の作品も収蔵されています。

第二展示室では、伊藤若冲の作品「重要文化財 鹿苑寺大書院障壁画(ろくおんじおおじょいんしょうへきが)《葡萄小禽図(ぶどうしょうきんず)》、《月夜芭蕉図(つきよばしょうず)》」を常設展示されています。

鹿苑寺大書院障壁画」について

若冲は、その生涯で最高傑作とされる動植綵絵の創作に身を捧げていた時期に、この壮大なプロジェクトに挑みました。

50面にも及ぶ障壁画は、当時まだ一般には無名に近かった若冲にとって、彼の才能が認められた重要な機会であったと言えるでしょう。

この大仕事を任された背景には、若冲と縁の深い相国寺の塔頭寺院である鹿苑寺の影響があります。

また、新しく住職に就任した人物が若冲の支援者である大典の文学の弟子であったことも、若冲が障壁画の製作を任されるきっかけを作りました。

大典の後押しによって、若冲はこの大規模なプロジェクトに参画することとなったのです。

「鹿苑寺大書院障壁画」は、水墨画の様式を用いて描かれた異世界の風景を表しています。

この作品群は、若冲が持つ独特な自然観と創造力を存分に発揮したものであり、彼の描く幻想的な世界が視覚的に表現されています。

今日においても、これらの作品は若冲の芸術的才能と、時代を超えたその画風の斬新さを示す証となっています。

作品紹介

「鹿苑寺大書院障壁画」葡萄小禽図《伊藤若冲》

重要文化財 鹿苑寺大書院障壁画《葡萄小禽図》(床貼付)伊藤若冲
JR東海ツアーズより

伊藤若冲の「葡萄小禽図」は、鹿苑寺大書院の障壁画として特別な位置を占める重要文化財です。
若冲の画業の中でも際立つこの作品は、彼の描く自然界への深い洞察と独自の芸術的視点を反映しています。

  • 枝垂れる葡萄の房と葉、それを取り巻く蔓、小禽(小鳥)が、水墨画の技法によって繊細かつリアルに描かれています。
  • 若冲特有の生き生きとした筆致は、たわわになる葡萄の実、虫食い穴のある葉の質感、自由に伸びる蔓、小鳥の柔らかな羽毛を見事に捉え、作品に動きと息吹を与えています。
  • 全体の構成は、空間に奥行きと静寂をもたらし、観る者を自然の一部に引き込むような感覚を演出しています。

伊藤若冲の「葡萄小禽図」は、彼の作品に対する深い愛着を感じます。

障壁画に描かれた葡萄の蔓は、生命力溢れる勢いで空間を横切り、その自由な伸びやかさが視覚に楽しさを与えてくれます。

葡萄と調和するように配置された小さな鳥たちが、天袋のあたりに控えめながらも存在感を放っており、若冲が鳥をどれほど愛し、しばしば彼の作品で重要な役割を与えたかを物語っています。

自然を愛し、その魅力を余すところなく描き出す若冲の優れた感性を感じさせます。

「鹿苑寺大書院障壁画」月夜芭蕉図《伊藤若冲》

重要文化財 鹿苑寺大書院障壁画《月夜芭蕉図》(床貼付)伊藤若冲

伊藤若冲の「月夜芭蕉図」は、鹿苑寺大書院の障壁画として重要文化財に指定されている作品です。

  • 夜の帳が下りた穏やかな情景の中、勢いのある筆致で力強くも繊細に描かれた芭蕉(バナナの木)の葉が、月明かりのもとで優雅に揺れている様子を捉えています。
  • 彼の技法は、芭蕉の葉の質感とその生命力を、絶妙な墨の濃淡で巧みに描き分けています。
  • 月の柔らかな光が空間に満ち、静寂と安らぎをもたらしながら、夜の自然の中に秘められた生命の息吹を視覚的に表現しています。

若冲は、通常は明るい日中に描かれることの多い芭蕉を選び、月夜という独特の設定の中で表現することにより、日本の絵画に新たな次元をもたらしました。

夜の静けさと植物の静かな動きが共鳴することで、観る者は自然の美しさに対する新たな認識を得ることができます。

この作品は、若冲の独特な自然観を反映しており、日本の伝統的な美術の枠を超えた独自の表現で知られています。

「月夜芭蕉図」は、若冲が実際に見た自然の一コマを捉えたものではなく、彼の内面的な自然観と芸術的な想像力が融合した結果と言えるでしょう。

この作品は、伝統的な水墨画の様式を用いながらも、若冲独自の革新的な視点を通じて、日本の絵画の新しい様式を開いたことを示しています。

月夜の芭蕉を描くという選択は、当時としても珍しく、彼の斬新な視点を感じさせます。

画面の半分を埋め尽くすように茂る芭蕉の葉は、月の光を浴びて夜風に揺れる様子を見事に捉えており、まるでその場にいるかのようです。

墨の濃淡を駆使した表現は、若冲の自由な創造力と緻密な観察力の証であり、その技術には羨望すら感じます。

研究と実践の積み重ねから生まれた芸術の極致と言えるでしょう。

アクセス

住 所:〒602-0898 京都府京都市上京区今出川通烏丸東入相国寺門前町701 相国寺内 相国寺承天閣美術館

白沙村荘 橋本関雪記念館

白沙村荘・橋本関雪記念館 庭園俯瞰
HPより

白沙村荘 橋本関雪(はくさそんそう はしもとかんせつ)記念館は、大正・昭和期に京都画壇で活躍した近代日本画の巨匠・橋本関雪の作品を収蔵・展示する美術館です。

2014年9月に、橋本関雪が晩年に抱いていた「展示棟建設計画」をそのまま引き継ぎ、現代の建築基準において実現された2階建の美術館です。

2階展望テラスを備え、様々な企画展を通じて国内外の現代作家の作品を紹介
1階橋本関雪の貴重な作品や資料、彼の蒐集品を常設展示

「白沙村荘」は、橋本関雪の邸宅としても知られる日本の伝統的な建築様式を持つ建造物と、国の名勝に指定された池泉回遊式庭園で、京都の風情を感じることができる記念館です。

橋本関雪自身が半生をかけて設計した理想郷と言われており、彼の美意識が随所に見られます。

日本庭園や書斎、画室などが訪問者に公開されており、関雪の日常を感じることができます。
特に春や秋は、庭園が美しく、関雪の作品とともに京都の四季を感じることができます。

美術館は、京都市左京区にあります。
近くに「哲学の道」と呼ばれる散歩道があります。

哲学の道沿いにある桜並木は、関雪夫妻がこの地に迎えられた御礼として寄贈したものです。
親しみを込めて「関雪桜」と呼ばれています。

臨済宗相国寺派
銀閣寺について | 銀閣寺 | 臨済宗相国寺派 正式名称を東山慈照寺といい、相国寺の塔頭寺院の一つ。名の由来は金閣寺に対し、銀閣寺と称せられることとなったといわれています。銀閣寺の概要や歴史についてご案内いた...

コレクション・ギャラリー

白沙村荘 橋本関雪記念館は、橋本関雪の作品・資料・蒐集品を収蔵しています。

収蔵されている橋本関雪の作品群は、その壮大な芸術世界と才能の証です。

神戸で生まれ育った関雪は、漢籍詩文の学びとともに画筆を手にし、四条派の画法を修めました。
彼の闊達な筆さばきは、中国の古典への深い愛着と理解に根差し、若くして画名を高めました。

関雪の芸術は、幅広いジャンルに及ぶその作品群によって、京都画壇を代表する存在として知られています。

歴史画、山水や風景画、花鳥画、美人画といった多岐にわたる分野で傑作を残しました。
特に、和漢の故事や自然の風景を描いた作品には、詩書画一致を目指した深い芸術的志向が見られます。

関雪の作品は、中国や欧州への数多くの旅と、彼の旺盛な蒐集意欲によって養われた豊かな視野を反映しており、近世の伝統と近代性を融合した独自の文雅で、独創的な芸術世界を完成させました。

作品紹介

琵琶行《橋本関雪》

画題の《琵琶行》とは、「琵琶の詩」という意味です。

この作品は、中国の中唐時代に白居易(白楽天)によって創られた長編叙事詩からインスピレーションを受けて描かれました。

詩は、江州司馬に左遷された白居易が、長安から落ちぶれた名妓の琵琶の音色を舟中で聞き、過去の栄華を懐古する情景を描いたものです。

詩の一節「沈吟放撥插絃中 整頓衣裳起斂容 自言本是京城女」、古都の名妓が自身の境遇を物語るように琵琶を弾いている場面です。

橋本関雪の「琵琶行」は、彩色の控えめな使い方によって、一つの時代の終わりとその懐古的な美を巧みに表現しています。

絵の場面は、風が吹き抜けて上空の雲が流れ、水面に月明かりが射し始めた場面を描いています。
白居易たちが、煌々とした月明かりの下で詩の朗読に聞き入っている様子です。

  • 作品全体が薄墨で覆われたようなくすんだ色調により、過ぎ去った栄華への郷愁と落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
  • 名妓の着物の翡翠色は、彼女の落ち着いた内面と外面の美しさを引き立て、
    琵琶の下の薄紅色はその美しい音色を色彩で象徴しています。
  • 白居易を含む他の乗員たちのモノトーンの衣装は、彼らの心情や社会的地位を反映し、彼らが物語の中での役割を色彩によって暗示しています。
  • 白居易の茶色の衣装は、彼の書生としての謙虚さや、詩人としての落ち着きを象徴しています。
  • 乗員たちの白灰黒の着物は、琵琶の音色に対する彼らの静かな感動と尊重を表しているようです。

関雪は、これらの色を用いて、「琵琶行」の深い感情と叙情的な情景を繊細に描き出しています。

関雪は、日露戦争従軍を終え、生涯で最も困難を極めた時期にこの絵を描いています。

関雪は、この絵を通じて、自らの身に起こった困難を、白居易の詩の悲哀や懐古を重ね合わせ、芸術において見事に表現しています。

この作品は、観る者に時代を超えた共感を呼び起こし、過去と現在、文学と絵画が織りなす美の世界へと誘います。

木 蘭《橋本関雪》

橋本関雪の「木蘭」は、古い中国の民話から取り上げられた、勇敢な女性の物語の一場面を描いた作品です。

この物語は、病に伏せる父に代わって戦場に赴いた木蘭が、男装し、無数の戦いで勲功を重ね、最終的には無事に帰郷を果たすというストーリーです。

この叙情的なエピソードは、「木蘭詩」によって最も古くから記録されており、その感動的な物語は後の世にも広く語り継がれてきました。

この絵は、彼女が戦地を離れ、従者とともに馬を休ませている場面が描かれています。

  • 木陰で兜を脱いだ木蘭の姿は、戦士から一転して女性らしい優しさに満ちた表情を浮かべ、群青の衣服がその美しさを際立たせています。
  • 白馬と従者は、彼女の長い軍役の信頼できる同伴者として表現されています。
  • 馬の描写には、関雪の細やかな観察力と精緻な筆遣いが見て取れます。
  • 白馬の堂々とした姿勢と力強い筋肉の表現は、戦場を駆け抜けた緊張と疾走を思わせ、その威厳ある様子が木蘭の勇敢さと相まって一層の力を与えています。
  • また、白馬と従者の穏やかな眼差しと落ち着いた佇まいは、木蘭が女性であることの理解を感じさせ、観る者に平和な帰郷の途へと心を導きます。

関雪は、白馬や従者を通じて、木蘭の内面的な強さと外的な状況の対比を巧みに表現し、物語に深みを加えています。

この作品は、創作された1918年から約100年の長い旅を経て、白沙村荘へと帰郷しました。

橋本関雪の描く「木蘭」は、時を超えても色褪せることのない勇敢さと優雅さを持つ作品です。

彼女の物語が世代を超えて称賛されるように、この絵もまた、
長い時間を経て今に伝えられ、私たちに誇り高い姿を見せてくれます。

アクセス

住 所:〒606-8406 京都府京都市左京区浄土寺石橋町37

「日本画の魅力と歴史を知る!京都のおすすめ美術館」まとめ

この記事では、京都の美術館の中から、特に日本画の優れたコレクションを持ち、歴史と魅力を伝える施設を紹介しました。

京都国立博物館

歴史ある空間の中の古典的な日本画から美の軌跡を辿る事が出来ます。

京都国立近代美術館

モダンな空間で、目の当たりにする時代を超えた日本画の進化に魅せられます。

京都市京セラ美術館

新たに生まれ変わった和と洋の融合された空間の中で、現代の日本画の新しい可能性に触れられます。

細見美術館

日本美術の精華を集めた宝庫です。
「アートをより身近により愉しく」をコンセプトに、琳派の絵画をはじめ貴重なコレクションで、美の世界へと誘います。

福田美術館

日本美術の精粋を集めた空間、歴史が息づく珠玉のコレクションで、京の風情を表します。
歴史を彩る日本画の名作群に出会う旅へと誘います。

相国寺承天閣美術館

京都の歴史を紐解く、禅と美の調和を体現した美術の殿堂です。
古刹の境内の静謐な空間で、時を超えた日本美術の精華に触れられます。

白沙村荘 橋本関雪記念館

京都の静謐な風情に、橋本関雪の美意識を体現した理想郷です。
美術と庭園、伝統の粋と革新の息吹が交錯する新しい空間を楽しむ事が出来ます。

各々の美術館が展示を通じて、日本の伝統美を現代に伝える役割を果たしています。

これらの美術館は、歴史的な名品から現代作家の新しい視点まで、幅広い日本画の世界を展開しています。
ただ美術品を鑑賞するだけでなく、作品が持つ歴史的背景芸術的価値についても深く学ぶことができます。

京都という文化の都を訪れるすべての人々に、日本画という日本の芸術形式を深く理解するための窓口となっています。

それぞれの美術館が持つ個性と強みを生かし、訪問者には日本画の多様性とその背後にある豊かな歴史を感じてもらえることでしょう。

美術館訪問の際には、その日の展示やイベント情報を事前にチェックし、深く芸術に触れる時間を過ごしてみてください。

京都へ訪問する時は、これらの美術館を是非観に行きたいですね。

日本画の深い歴史と美しさを、自分の目で確かめることができる貴重な機会です。

京都にお越しの際は、これらの美術館を訪れて、自身の目で、心で、日本画の魅力と歴史を体験してください。

髙橋 友美 Yumi Takahashi
日本画家 Nihonga Artist
日本画情景 - Scenes Art -
この言葉に相応しい絵を描くことをテーマにしています。

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