日本画は、日本独自の美術形式として多くの人々を魅了しています。
関西地区は、この美術形式を理解するのに最適な数多くの美術館があり、それぞれが日本画の特徴的な展示を行っています。
今回は、関西地区の美術館で日本画の魅力を深く探求する旅に出かけましょう。
京都国立近代美術館
京都国立近代美術館 (The National Museum of Modern Art, Kyoto; 通称:MOMAK)は、東京国立近代美術館(MOMAT)の分館として1962年に開館した日本の国立の近代美術館の一つです。
京都国立近代美術館は、京都市左京区の岡崎公園内にある美術館です。
日本近代美術の発展に貢献した作家や作品を中心に約13,000点を所蔵しており、工芸全般を含む日本近代美術の総合的な展示を行っています。
主に、京都を中心とした西日本の美術に重点を置いています。
また、建物自体も重要文化財に指定されている洋風建築で、昭和初期のモダニズム様式を代表するものです。
コレクション・ギャラリー
京都国立近代美術館では、4Fのコレクション・ギャラリーを使い、年間約5回の「コレクション展」が開催されます。
また、「キュレトリアル・スタディズ」という、各研究員が美術館の研究活動の成果を、コレクション・ギャラリーの一部を用いた展覧会やシンポジウムの開催、論文発表などの形で公表されています。
作品紹介
観音之図(聖蓮華)《村上華岳》
「観音之図(聖蓮華)」は、村上華岳(むらかみかがく)(1879年-1936年)が1930年に制作した仏画です。
村上華岳は、仏画を代表する画家の一人です。
「観音之図(聖蓮華)」は、仏教における慈悲深い観音菩薩を主題とした作品です。
観音菩薩は、慈悲と救済の象徴として、日本の仏教美術において重要な位置を占めています。
この作品では、観音菩薩が華麗で荘厳な姿で描かれており、その表情や姿勢からは優しさと平和の雰囲気が感じられます。
作品の背景には、蓮の花が描かれていることが一般的です。
蓮は、泥の中から生まれながらも清らかな花を咲かせることから、仏教において浄化と再生の象徴とされています。
この蓮の花と観音菩薩の姿は、仏教の教えを象徴しており、観る者に内省と精神性を促す作品となっています。
この作品は、その緻密な描写と深い宗教的意味を持ち、日本画の美しさと精神性を兼ね備えた傑出した作品として評価されています。
彼の作品は、日本画の伝統的な技法と近代的な感性が見事に融合されていることで知られています。
「観音之図(聖蓮華)」の表情は、村上華岳の他の作品と比べて
とても慈愛に満ちた優しい雰囲気を感じます。
アクセス
住 所:〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
TEL:075-761-4111(代表)
FAX:075-771-5792
利用案内
開館時間
通常時間
午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
夜間開館
企画展開催中の毎週金曜日は午後8時(入館は午後7時30分)まで
休館日
毎週月曜日(月曜日が休日に当たる場合は、翌日が休館)及び年末・年始
展示替期間及び年末年始の休館イベントカレンダーをご確認ください。
※開館時間、休館日は臨時に変更する場合があります。
観覧料
展覧会の観覧料は各展覧会によって異なります。
※詳細はHPをご確認下さい。
大阪市立美術館
大阪市立美術館は、大阪市天王寺区の天王寺公園内にある美術館です。
大阪市立美術館は、日本や東洋の古美術品を中心に約8,500点を所蔵しており、日本屈指の質の高さを誇る、歴史ある大阪の美術館です。
特に住友家から寄贈された茶道具や仏教美術品は見逃せません。
また、展示室の一部は住友家の本邸を移築したもので、歴史的な建築も楽しめます。
美術コレクション
大阪市立美術館には、数多くの美術コレクションがあります。
その中で、住友コレクションは、日本画を主としたコレクションです。
「住友コレクション」とは?
昭和18年秋に朝日新聞社の企画により開催された「関西邦画展覧会」に出品するために、上村松園・山口華楊・北野恒富・榊原紫峰など、当時の関西日本画壇の代表的な作家20人によって製作された20点の日本画からなります。
大阪市立美術館 HPより
展覧会の開催後、昭和19年に展覧会への出資者であった男爵16代住友吉左衞門(住友友成 1909-1993)から寄贈されました。
作品紹介
晩秋《上村松園》
この作品は、普段着の着物の女性が縁側の障子の繕いをしている様子を描いています。
- 構図の面では…
-
- 障子と女性の配置は、作品全体のバランスと視覚的な流れを巧みに操っています。
- 女性の姿が中心から向かって左下側、障子が中心から向かって右側に描かれており、この二つの要素は相互に対話をしているかのようです。
- 女性の優雅な姿勢と障子に向けられた視線は、観る者の目を自然と彼女の動作に引き込みます。
- 障子と縁側の直線的なラインは、画面にリズムと均衡を与え、女性の柔らかな曲線との対比を際立たせます。
- 女性の着物の流れるような線と障子の格子の直線は、静と動、柔と剛の対比を生み出し、画面内に静かながらも動的な緊張感を創り出しています。
- さらに、繕い道具が障子の下部に配置されています。
- 道具へと流れる視線から、彼女が家事を丁寧に行う様子が映し出しています。
- 女性の姿勢や障子に向かう繊細な手の動き、花のような形に切られた繕い用の型紙は、日常生活の中の美しさと平穏を表現しています。
- 色彩に関しては…
-
- 全体的にソフトで柔らかい色調で描かれています。
- 穏やかで落ち着いた印象を与え、同時に日本の伝統的な色彩感覚を反映しています。
- その色調で描かれた青の着物が秋の空のように清澄な印象を与えます。
- その着物と合わせた淡い緑色地に細い縞模様の博多帯、淡黄色の帯締め、薄桃色の肌襦袢と、髪、付け襟、そして帯の裏地の黒色とのコントラストが、画面を引き締める効果をもたらしています。
このように、上村松園は視覚的な効果を用いて、日本女性の日常の繊細さと美しさを際立たせ、観る者を作品の深い物語へと導いています。
松園は、この作品について、母との思い出を辿りながら制作したと述べています。
自身の幼少期に障子の繕いをする母の手伝いをした懐かしい記憶を元に描かれました。
尚、この作品は、昭和18年(1943年)に制作されました。
当時、日本は第二次世界大戦の中にあり、国内は戦時体制下にありました。
このような時代の中で、松園が日常の平和なひとときを描くことは、戦争とは対照的な、平穏なかつての日々への思い、日常生活への願いを表しているとも受け取れます。
また、1940年代、日本の女性像を描いた作品として、当時の社会や女性の立場、そして文化的な価値観に光を当てることもできます。
普段着の着物を着た女性が障子の繕いをするという日常的なシーンは、戦時中においても家庭生活の維持がいかに大切かを示唆しています。
制作された時代背景を考えるとさらに興味深い作品です。
アクセス
住 所:〒543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1−82
利用案内
【休館中】 大規模改修工事の為 〜2025年春(予定)まで
開館時間
午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日
月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日休館)
年末年始(12月28日~1月4日) ※年によって変更になる場合があります。詳しくはお問合せください。
展示替え期間
観覧料
特別展
*特別展・特別陳列などの料金は別途定めます。
*特別展併設時は特別展観覧料にてコレクション展もご覧いただけます。
※詳細はHPをご確認下さい。
兵庫県立美術館
兵庫県立美術館は、兵庫県神戸市「HAT神戸」にある美術館です。
安藤忠雄氏が設計したコンクリート造りの建物は、海に面した立地を生かした開放的な空間となっており、建築自体が芸術作品としても評価されています。
また、屋外には国内外のアーティストの作品が点在しており、散策しながら楽しめます。
コレクション
兵庫県立美術館は、前身である近代美術館時代から数多くの収集が行われました。
所蔵作品は約10,000点、近現代日本洋画や現代アートが充実しています。
兵庫県ゆかりの日本画家
兵庫県立美術館は、兵庫県ゆかりの日本画家の作品も数多く所蔵されています。
村上華岳(むらかみ かがく)
兵庫県立美術館 HPより
晩年、養家のある神戸・花隈にすんで、六甲山や仏様を描いた村上華岳はその代表格です。
兵庫県立美術館 HPより
水越松南(みずこし しょうなん)
紙本着彩 142.2×129.0cm 1917(大正6)年
全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」より
ハイカラな雰囲気の漂う作品を描かれます。
兵庫県立美術館 HPより
山下摩起(やました まき)
西宮市大谷記念美術館 HPより
兵庫県西宮市出身。
兵庫県立美術館 HPより
1890年、有馬温泉の旅館「下大坊」に生まれました。
国画創作協会が結成され、その公募展で実験的な作品を発表されました。
東山魁夷(ひがしやま かいい)
全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」より
心にしみ入る海、山の原風景を描かれた日本を代表する画家です。
3歳から東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学するまで、神戸で過ごしました。
兵庫県立美術館 HPより
東山魁夷の制作の原点が、ここにあります。
兵庫県立美術館には、魁夷の画業初期の頃の絹本着色で描かれた作品が複数所蔵されています。
東山魁夷先生の初期の絹本着色による作品は、目にする機会が少ないので、公開されていたら是非観に行きたいものです。
作品紹介
花と娘(対幅)《三谷十糸子(みたに としこ)》
三谷 十糸子
紙本着彩 190.1×82.5cm 1950(昭和25)年
三谷 十糸子
紙本着彩 190.1×82.5cm 1950(昭和25)年
兵庫県出身。生活感あふれる女性像で有名です。
兵庫県立美術館 HPより
「花と娘」(対幅)は、三谷十糸子による一対の作品で、柔らかく澄んだ色調の洗練されたスタイルで描かれています。
左側にモダンなドレスを着た二人の女性が、右側に優美な植物が描かれており、対をなしています。
日本画特有の詩情と自然への深い愛情を感じさせます。
画面全体には、穏やかで落ち着いた雰囲気が流れており、鑑賞者に穏やかな印象を与えます。
(左)娘
- 二人の女性の洗練されたファッションと表情からは、当時の女性のライフスタイルや文化的背景が垣間見えます。
- 色彩は淡く、人物の肌や衣服には透明感があります。
(右)花
- 柔らかい色調で描かれた赤やピンクの大きな花々、それは自然の美しさと生命力を表現しています。
- 色彩は淡く、背景と調和しつつも、花の形と色は視覚的に際立っています。
- 透明感のある色彩と柔らかな線で、花の繊細な美を捉えています。
描かれている花は「カンナ」ではないかと思われます。
この二つの作品は、「花」と「娘」の美をそれぞれ別々に、そして対幅として一緒に見ることで、より大きな芸術的なテーマについて考えさせられます。
また、柔らかい花の優美さと二人の女性のおしゃれでモダンな姿が相互に影響を与え合い、一つの作品としての調和とバランスを成立させています。
この作品は、洋の影響を受けつつも日本の伝統を重んじた、モダンで詩的な三谷十糸子の芸術性を色濃く表しています。
女性たちの穏やかな表情と花の優美な姿は、観る者に内面の豊かさと静謐な美を感じさせるでしょう。
優美な色使いと繊細なタッチは、フランスの画家、マリー・ローランサンの作品を思わせる雰囲気を持っています。
アクセス
住 所:〒651-0073 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目1−1
利用案内
開館時間
10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日
月曜日(祝休日の場合は翌日)
年末年始
メンテナンス休館
観覧料
料金は展覧会ごとに異なります。
※詳細はHPをご確認下さい。
奈良県立美術館
奈良県立美術館は、奈良市登大路町の奈良公園内にある美術館です。
日本や東洋の古美術品を中心に約4,100点(平成最後の時点)を所蔵しており、日本屈指の質の高さを誇っています。
建物自体も重要文化財に指定されている洋風建築で、昭和初期のモダニズム様式を代表するものです。
コレクション
風俗史研究家・日本画家の吉川観方氏、歴史哲学者の由良哲次氏から寄贈された近世日本画や浮世絵は見逃せません。
他、実業家・化学者の大橋嘉一氏が収集した前衛的な日本美術、奈良出身で近代陶芸の巨匠・富本憲吉の作品とと奈良ゆかりの近代・現代美術の作品を随時収集されています。
作品紹介
秋冬山水図屏風(しゅうとうさんすいずびょうぶ)《雪舟 伝》
紙本墨画淡彩 六曲一隻 151.9×340.2cm 室町時代(16世紀)
奈良県立美術館 HPより
向かって右から落雁(らくがん)、枯蘆(かれあし=冬枯れの蘆)、雪山等を配した秋冬山水図。
奈良県立美術館 HPより
左半部に構図の重心を置き、右半部を水景としていることから、もとは水景によって連続した一双画面の左隻であったと考えられる。
本図は、室町時代の禅僧画家雪舟(せっしゅう・1420~1506)の作として伝えられてきた。
確かに、本図の山や岩の短い線による皴(しゅん=山や石のひだを描き表す技法)や点描、樹木等の表現は、雪舟作と一般に認められている東京国立博物館蔵「秋冬山水図」(二幅)や「四季山水図」(四幅)の表現と類似している。
しかし、これらの作品に見られる力強い筆致、安定した構図は本図の特徴となっていない。
本図は繊細な筆致を用い、種々の要素を突出させることなく一つにまとめた、静謐(せいひつ)な趣を持つ山水画である。
https://www.pref.nara.jp/dd.aspx?menuid=16579
この作品は、日本の伝統的な屏風絵です。
秋から冬への季節の移り変わりを表現しており、古典的な日本の山水画の美しさと詩情を捉えています。
「屏風」は、元来、室内の仕切りや装飾として使われるとともに、特定の場や季節の雰囲気を演出する役割を持ちます。
「秋冬山水図屏風」は、その名の通り、秋冬の季節感を墨と筆触で見事に描き出しています。
画面には、落雁、枯蘆、雪山等が描かれており、観る者を自然の中の静寂と広がりへと誘います。
この絵の特徴は、豊かな自然を表現するために使われる墨の濃淡と、緻密な筆使いで、季節の変化を繊細に表現しています。
また、空間の奥行き感と広がりは、画面を通して時間の流れを感じさせる効果を生んでいます。
この「秋冬山水図屏風」は、自然の瞬間的な美しさを捉える日本の画家たちの卓越した技術を示すとともに、自然と人間との古来からの深い結びつきを象徴しています。
それは、自然の中に見いだされる精神的な平和と静謐さへの敬愛を、視覚的な形で表現したものと言えるでしょう。
卓越した技術の力強さと繊細さで描かれた作品です。
静謐な画面に引き込まれます。
アクセス
住 所:〒630-8213 奈良県奈良市登大路町10−6
利用案内
開館時間
午前9時~午後5時 入館は4時30分まで
休館日
月曜日(祝日の場合は翌平日)
年末年始
展示替期間中
観覧料
※詳細はHPをご確認下さい。
滋賀県立美術館
2021年6月に「滋賀県立近代美術館」から「滋賀県立美術館」と名称も新たにリニューアルオープンしました。
滋賀県立美術館は、滋賀県大津市のびわこ文化公園内にある美術館です。
近代日本画、郷土ゆかりの美術、戦後アメリカの現代美術、アール・ブリュットを中心として展示しています。
中庭には、アレキサンダー・カルダーがシカゴ市内に設置したパブリックアート「フラミンゴ」の大型の試作品(マケット)が展示されています。
滋賀県立美術館 公式Instagramより
美術コレクション
滋賀県立美術館は、美術コレクションのご紹介です。
滋賀県立美術館の美術コレクションは、主に以下の特色があります。
滋賀県ゆかりの日本画家
滋賀県立美術館は、滋賀県ゆかりの日本画家の作品も数多く所蔵されています。
小倉遊亀(おぐら ゆき)
紙本着色 91.4× 69.2cm 1962
滋賀県立美術館 HPより
紙本著色 1970(昭和45年)
118.0×141.0cm
滋賀県立美術館 HPより
滋賀県立美術館 HPより
滋賀県大津市に生まれ。
安田靫彦に師事し、日本美術院で活躍、女性として初の日本美術院理事長になるなど、まさに女性画家として第一線を走り続けました。
また105歳の没年まで絵筆を執り続けたその生き方は、多くの人々に感銘を与えました。漂う作品を描かれます。小倉遊亀の作品は、身近にあるものに題材をとった人物画や静物画が多くをしめています。
滋賀県立美術館 HPより
澄んだ色彩と骨太な線描、そこから生まれてくる明快な造形には、東洋的な精神性を重んじながら、豊かな日常感覚に支えられた近代的な表現が明確に打ち出されています。
岸竹堂(きし ちくどう)
岸竹堂は、1872年彦根藩士の家に生まれました。
若くして京都の絵師・岸連山に入門し、その才能が認められます。
やがて岸派の四代目総帥を継いだ竹堂は、幕末・明治期の京都画壇で活躍しました。動物画をお家芸とした岸派のなかで特に虎を得意とし、実際に日本に生きた虎がやって来るようになる明治20年代以降は、旧来の伝統的な虎ではなく、本作のように写実的な虎を描くようになります。
まるで本物のような迫力で、眼光鋭く、堂々とした体躯に細かな毛並みまで表現された虎の姿は、当時の人々に驚きをもって迎え入れられました。
滋賀県立美術館 HPより
山元春挙(やまもと しゅんきょ)
1872年に大津県膳所中ノ庄村(現、滋賀県大津市)に生まれ。
近代京都画壇を代表する画家のひとりです。
円山四条派の伝統を踏まえながらも力強く壮大な画風を創始し、明治、大正、昭和の画壇で華々しく活躍しました。
特に、当時としては珍しい、カメラを活用した取材から生み出された風景表現は、春挙芸術の真髄と言えるでしょう。青く澄んだ水と切り立った岩。画面の奥は雨でけぶっており、遠くの木々の影がぼんやりと浮かび上がっています。
滋賀県立美術館 HPより
手前の岩場にはキセキレイと思われるお腹の黄色い小鳥が描かれています。
大きな画面の中に鳥や動物、人物などの点景を小さく描き込むのは、作者である山元春挙が好んで使った手法です。
作品紹介
飛鳥の春の額田王《安田靫彦(やすだ ゆきひこ)》
紙本著色 131.1×80.2cm
1964年(昭和39年)
中央に描かれる人物は、飛鳥時代の歌人であった額田王(ぬかだのおおきみ)。
奥には畝傍山(うねびやま)、香久山、耳成山の大和三山、手前左には川原寺、本薬師寺、藤原宮、右には板葺宮、飛鳥寺、山田寺と、額田王が生きた時代の奈良の様子が描かれています。実際の地理関係とは異なっていますが、ここでは画面構成が優先されています。
画面左下には梅の花が描かれており、季節は春だとわかります。安田靫彦は19歳の時に飛鳥を訪れ感銘を受けており、約60年後に制作された本作にその思いを結実させました。
歴史画の名手であった靫彦の、晩年を代表する作品の一つです。
滋賀県立美術館 HPより
安田靫彦(1884-1978)は、大正から昭和にかけて活躍した日本の画家で、西洋画法の技術を取り入れつつ、日本の伝統的なテーマや題材を描き続けたことで知られています。
作品では、彼女が春の飛鳥の風景を背にして優雅に立つ姿を描いており、彼女の貴族的な風貌と古代の風景が調和しています。
画面では、全体的に淡いソフトな緑系統の色に、衣装の鮮やかな赤をはじめ、建物の柱や桟が赤い線で描かれていて、補色同士の対比が印象的です。
色彩と繊細な描写が際立ち、日本画の伝統的な技法と西洋画の影響が融合されていることが見て取れます。
額田王の衣装は色鮮やかでありながらも、飛鳥時代の衣服のスタイルを忠実に再現しており、当時の文化と美意識を反映しています。
背景には、飛鳥の風光明媚な春の景色が描かれており、古代日本の自然と人々の生活が調和している様子を表現しています。
靫彦は、この作品を通じて、美しい自然と歴史的な人物を繊細に結びつけ、日本の古典的な美を現代に伝えています。
額田王の表情には、静寂と内省の様子が感じられ、彼女の詩的な感性と、飛鳥時代の精神性が反映されているとも解釈できます。
この絵画は、視覚的な美しさだけでなく、日本の歴史と文化への深い敬意と理解を感じさせる作品です。
また、人物の凛とした表情は、安田靫彦の描く人物像の魅力の一つです。
アクセス
住 所:〒520-2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740−1
利用案内
【休館中】改修工事の為 〜2024年 春4/19(金)まで
改修工事に伴い、2023年12月21日(木)から2024年4月19日(金)まで休館します。
※詳細はHPをご確認下さい。
「日本画の魅力を深堀り: 関西の美術館巡り」のまとめ
この記事では、関西地区の美術館での日本画鑑賞に焦点を当て、読者が日本画の奥深い世界を探求する手助けをする内容にしました。
さらに、日本画の基本的な知識や鑑賞のポイントに関する情報を提供することで、読者が美術館を訪れた際の体験をより豊かにすることを目指しています。
また、関西地区の美術館に関する具体的な情報や、それぞれの美術館で見られる作品に関する情報を提供することで、読者が日本画と関西地区の美術館の魅力を深く理解できるよう心掛けました。
関西地方には、訪ねてみたい多くの素晴らしい美術館がありますね。
ぜひ、足を運んでみてください。
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