2024年9月に開催された「NAC選抜グループ展」は、15人の現代アーティストが集い、クオリティの高い個性豊かなアート作品を披露する特別なイベントでした。
この展覧会は、展示だけでなく、絵画販売を目的としたものでもあり、どのような準備をして作品を売ることができたのか、その舞台裏をお伝えします。
初めて展覧会に参加する方や、美術の世界に興味をお持ちの方にとって、役立つ情報が満載です。
展覧会準備
展覧会を成功させるためには、作品の搬入と展示準備が非常に重要です。
告知はとても大事!
展覧会の成功には、事前の告知が重要です。
お客様へのご案内は、約1ヶ月〜2週間前には行うことをおすすめします。
- パンフレットや案内ハガキを送付する
- 実物の案内は特に効果的で、来場者の関心を引く手段です。
- メールを送付する
- お知らせメールは迅速に情報を届ける手段として活用できます。詳細をわかりやすく伝えましょう。
- SNSで告知する
- より広範な人々にリーチできるSNSを活用して、定期的に展覧会情報を発信します。
出品する作品の準備
今回のNAC選抜グループ展では、会場の「ホテルグランドニッコー東京台場 ギャラリー21円形ホール」に、15名のアーティストそれぞれの作品が並びました。
展覧会に出品する作品は、必ず額装が必要になります。
そして、今回の展覧会は、展示販売が目的なので、原則アクリルガラス付きの額縁で出品します。
購入を希望されるお客様にお渡し出来る状態を考慮して準備します。
検品
作品や額、額箱に、傷、ひび割れ、シミ、汚れ等、何か不具合がないか、チェックします。
見つけた場合は、補修および修理します。
【補修不可の場合】
作品は描き直しか、或いは別のものを出品するか、もしくは出品できないことになります。
額は、別の物に、或いは、間に合えば同じ物を買い換える事になります…。
作品の撮影
ここで、額装前の作品を撮影します。
画像と動画の両方を撮っておくと良いでしょう。
作品の全体像だけでなく、細部も記録用に残します。
この記録は、メディア告知用として使用できるだけでなく、将来的に複製画を作成することを考えている場合、高解像度の画像を持っておくことが特に重要です。
細部まで鮮明に記録できることで、質の高い複製が可能となります。
額装
共シール作成と貼付
作品の「共シール」zを作成します。
共シールとは何か?
「共シール」とは、主に日本画の為のものです。
作品と額に共通して貼り付けられます。
その作家が制作したという、作品の信頼性や真贋を証明するものです。
なぜ「共」という字が使われるのかというと、作品の裏側と、その作品が収められている額の裏側に同じものが添付されているためです。
一枚の作品につき二枚の「共シール」を作成し、その作品とともに納品します。
私の今回の出品作品には、箱と作品裏に英語のタイトルの物を追加で用意しました。
共シール用の和紙を、作品によって選び、サイズを決めて作成します。
日本画画材店で、「題戔(だいせん)」として販売されています。
共シール用の和紙に画題(=作品のタイトル)、署名(=サイン)の記載と落款をします。
作成したら、作品の裏、額の裏、箱の側面に貼り付けます。
共シールには、作家直筆で作品の題名、作家の署名(=サイン)、そして落款があるのが一般的です。
共シールの特徴
共シールの中でも特に重要なのが「落款」です。
- 「落款」とは、作家が作品や書類に押す印章のことで、印そのものを指します。
- 作家によっては、作品用の落款と共シール用の落款を分けて使用することがあります。
- また、作家が活動していた年代に応じて落款を変える場合もあります。
これにより、作品の年代や背景を理解する手がかりとなるのです。
なお、共シールには厳格なルールはなく、サイズやデザイン、縦書き・横書きのレイアウトも作家の個性やこだわりによって異なります。
こうした柔軟性が、作家それぞれのスタイルを反映したユニークな要素として共シールに現れています。
共シールの取り扱いについて
共シールは、作品の裏面だけでなく、額や箱にも添付される重要な証明書のような役割を果たします。
通常、作品の裏に添付される共シールは、糊で直接作品に貼られますが、額の裏に貼る場合には少し異なる方法が用いられます。
御茶の水美術専門学校 HP「芸術の秋 【共シールとは!??】」より
額の裏に共シールを添付する際は、アクリル板や「グリーンテープ」と呼ばれる額の裏の紙と同じ質感のテープで保護しながら固定します。
一度固定してしまうと、額の変更時にシールを取り外すのが難しくなるため、額を変更する場合には新たに共シールを作り直す必要がある場合があります。
御茶の水美術専門学校 芸術の秋 【共シールとは!??】より
https://senmon.ochabi.ac.jp/2016/11/9155/
額変更の可能性を考慮した対応
私の場合、額の裏や箱にも、作品と同じように「生麩糊」で共シールを貼り付けています。
この方法で、将来的に額や箱を変更したい場合に、共シールを剥がしやすくなり、柔軟に対応することが可能です。
- シールがしっかり固定されながらも、再度剥がして別の額に貼り付けることができます。
しかし、作品や額が頻繁に取り扱われる場合、
- 共シールが傷ついたり剥がれたりする可能性もあります。
そのため、取り扱いには注意が必要です。
額装
絵を額装します。
【額装の仕方】
※額板を閉じた時に、沈む場合は、紙や薄いパネルなどで調整します。
額の紐結び方につきましては、様々な動画がUPされております。
NAC 絵画をたしなむ 画家 黒沼大泰 様より
こちらのサイトでもいずれUPさせていただきます。しばらくお待ち下さいませ。
今回、箱額1点をNAC黒沼さんの紹介で、アールクリアン様に依頼しました。
メールで相談、ご提案いただいたりしながら、額縁を選びました。
額箱を差し箱に、また、黄袋を付けてもらいました。
そしてサービスで、作品を額装していただきました。
(発送料金は負担)
※作品の裏に共シールを貼り付けて、送付しました。
メールにて、実際の額は「艶感は無し、額は画像より少し地味目」ということをお知らせいただきました。
英語で記入した紙も貼りました。
むぎわらさびねこ -Straw Tortie –
2020(令和2)年 SM(227×158mm) 岩絵具 胡粉 箔 墨 膠
額装
額装後にまた、作品の撮影を行います。
梱包
額装した作品の裏に共シールを貼り付け、黄袋と付属の箱に入れます。
額入りの箱もお客様にお渡しする大切なものなので、緩衝材で箱を包み、配送用の箱に入れます。
特に、繊細な美術作品の場合、運搬中の振動や衝撃によるダメージを防ぐため、厚手の緩衝材を使います。
作品を丁寧に梱包し、傷や汚れがつかないように細心の注意を払います。
発送手配及び直接搬入
梱包が済んだら、宅配業者に集荷依頼して、発送するか、当日、自分で会場へ直接搬入します。
荷物の個数、重量、かかる日時や料金等を比較して、一番お得に搬入できる方法を選択します。
\ 宅配便・郵便の料金比較 /
展示及び設置方法
NACアートコミュニティ より
搬入が完了すると、次に展示レイアウトを決める段階に入ります。
展示レイアウトは、会場全体のバランスを考慮しつつ、各アーティストの作品が引き立つように配置します。
今回搬入に来た作家の他、NACの運営スタッフとして搬入を手伝える仲間も協力して、最適な配置を模索しました。
大変感謝しております。😊
この段階では、作品同士が競合せず、来場者が自然に作品を鑑賞できる流れを作ることが大切です。
展覧会期間中
会期中は、様々な美術愛好家や業界関係者などの方々が来場しました。
ギャラリー応対
NAC選抜グループ展の期間中、多くの方々が各アーティストの作品に足を止め、じっくりと鑑賞されている様子が印象的でした。
私も在廊中、直接来場者の方々とアートについてお話しする機会が多く、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
ギャラリー応対で大事な3つのこと
ギャラリーでの応対において、出品している画家として大事なことを3つ挙げるとすれば、以下の点が重要です。
- 誠実かつ丁寧なコミュニケーション
ギャラリーに来る方々は、作品を通じて画家の思いや感性を知りたいと考えています。
丁寧な言葉遣いや態度を心がけ、来場者がリラックスできるようにすることが大切です。
質問には誠実に答え、作品の背景や制作プロセスについて具体的に説明できると、より深い理解を促すことができます。 - 自己アピールと謙虚さのバランス
自身の作品をアピールする際は、作品の魅力を自信を持って伝えることが大事です。
ただし、過度な自己主張にならないよう、来場者の感想や意見にも耳を傾ける謙虚さが求められます。
相手が作品に対してどのような感想を持っているのかを聞くことで、会話が双方向になり、良い印象を与えることができます。 - プロフェッショナルな姿勢
ギャラリーでの応対は、単に作品を展示するだけでなく、自身のプロフェッショナルな姿勢を示す場でもあります。
時間厳守や礼儀を守るのはもちろん、作品の状態を常に確認し、適切なメンテナンスを行うなど、全体的な対応に細やかな気配りをすることで、画家としての信頼感を高めます。
これらのポイントを意識することで、より良いギャラリー応対ができ、作品への評価や信頼感も高まるでしょう。
これらの点を踏まえた上で、プロモーション活動を行うことで、より良い印象で広く認知されていくことでしょう。
作品についてのフィードバックや感想をいただけることは、アーティストとして大変貴重です。
多くの方々に「新しい視点でアートを楽しめた」という声をいただき、展示に対する手応えを感じました。
アーティスト同士の交流
また、他のアーティストとも交流する機会があり、お互いの作品に対しての意見やアドバイスを交換しました。
このような展示会は、アーティスト同士の刺激や成長の場としても非常に重要です。
在廊当番ではないが、来場してギャラリー対応を行ったアーティストさん、自主的にワークショップを開催されていたアーティストさんなど、作品にかける想いを聞き、熱意を感じることができた大変有意義な期間でした。
作品が売れた場合の対応
作品を購入していただいた時の対応について、ご説明致します。
お会計
支払方法を提示して、代金を支払っていただきます。
現金かクレジットカード決済システムへ案内致します。
写真撮影
作品が展示されている内に、その作品とお客様と、作家が在廊している場合は作家も一緒に、写真撮影を行いたいですね。
お客様にも大変喜ばれます。
梱包
それから購入された作品の箱に入れてお渡しします。
スタッフが複数人いる場合には、お会計の間に行います。
発送手配
ご配送を依頼された場合は、住所お名前連絡先希望日時をいただいて発送手配します。
今回のエピソード
- SNSの告知を見て、ホテルに宿泊されていた外国人の方が初日開場待ちして、桜の絵を購入されました。
- 初日、同じホテル宿泊客の外国人のお客様がご購入されました。
- 企業の経営者の方がご来場されて、その日在廊当番のアーティストの作品と制作にかける想いを気に入り、新社屋の玄関フロアに展示するのに相応しいという事で購入されました。
- 最終日搬出作業時に通りかかったお客様が購入されました。
その作品のアーティストもいたので、大変感激する場面に遭遇しました。
私、高橋友美のエピソードについて、
- 数年来の元同僚である友人が観に来て下さり、新たな作品についての感想や積もる話に花を咲かせました。
- 読売新聞オンライン「猫学(にゃんこロジー)_ねこ路地さんぽ」に掲載させていただくことになったご縁で、ライターの森田奈央さんが観に来て下さいました。
展覧会終了後
最終日を迎えると、いよいよ作品の搬出です。
撤収作業の流れ
搬出も搬入と同じく、作品にダメージがないよう慎重に行います。
梱包材や道具を事前に準備し、効率よく作業を進めることがポイントです。
各発送手配及び直接搬出
今回搬出に来た参加アーティストの他、搬出の手伝いにきた仲間も協力して、スムーズに搬出作業が行われました。
搬出作業は、夜までかかりましたので、その後食事会兼打ち上げがありました。
今後の課題と展開
展覧会が終わると、少し寂しさも感じますが、多くの人々に自分の作品を見てもらえたことに感謝の気持ちが湧いてきます。今回のNAC選抜グループ展も、無事に終えることができ、非常に充実した経験となりました。
会期中や展覧会を終えて、今回新たな展開を思わせる出会いや今後の課題を共有し合いました。
個人的な課題としては、一作品を制作するのにとても時間がかかる事です。
しかし、小作品で良いので常に新作を用意しておくことで、
自身の成長の軌跡と、お客様にも見てもらえて、もっと楽しく展示会を過ごすことが出来ると思いました。
「【絵画販売を成功するには?】展覧会舞台裏レポート〜NAC選抜グループ展」まとめ
「NAC選抜グループ展」は、15人のアーティストが一堂に会し、それぞれの作品が来場者に新しい視点を提供する場でした。。
展覧会準備
展覧会の成功には、作品の搬入や展示レイアウトの計画など、準備段階での綿密な計画が欠かせません。
展覧会会期中
会期中は、来場者との交流や作品の魅力を伝えることで、アート作品が多くの方々に楽しんでいただけるよう努めました。
展覧会終了後
終了後は、作品の搬出や関係者への感謝を伝え、次の展示会に向けた振り返りと準備を行います。
準備や会期中、そして搬出まで、全ての工程が一つのアート作品を展示するために重要な要素であることを改めて実感しました。
今後もこのような展示会に積極的に参加し、自分のアートをより多くの方に届けていきたいと思います。
お越しいただいて、誠にありがとうございました。
次回、またお会いできるのを楽しみにしています。
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