こんにちは、日本画家の髙橋友美です。
今回は、日本画始めた頃に戸惑う岩絵具の扱い方について書きます。

岩絵具って憧れるんですが、いざ塗ってみると、粉っぽく、ムラになります…。



定着しません。何から直せばいいですか?



ひび割れを起こしました…
私自身も、そうでした。
「きれいな色なら、きれいに塗れるはず」と思っていたのに、いざ塗ると
- 粉っぽい
- ムラになる
- 思ったような色が出ない。



正直、「向いてないのかな」と感じたこともあります…
でも、あとから分かったのは、岩絵具は チューブ絵の具みたいに“溶けて混ざって一体化する絵の具”ではないということ。
- 石の粒”が紙の上に残るからこそ、光を反射して独特の奥行きや静けさが出ます。
ここが日本画らしさの源です。
そして結論から言うと、岩絵具がうまくいかない原因はだいたいこの3つです。
- 岩絵具は「石の粒」なので、扱い方が独特
- 番手(粒の大きさ)で見え方が大きく変わる
- 失敗の原因は多くの場合 「膠(にかわ)」と「水分量」
この記事では、この順番で「原因→対策」を整理して、初心者さんでも再現できる形にまとめてみました。
岩絵具ってなに?最初に知っておくこと


岩絵具は、鉱物などを砕いて作る、粒子状の日本画絵具です。
絵具そのものに接着力はなく、「膠液(にかわえき)」を混ぜて支持体に定着させます。
絵の具というより、最初は「色のついた砂」に近い感覚かもしれません。
水干絵の具や顔彩と比べると、岩絵具は 粒が重くて沈みやすいので、ムラが出やすいです。
その代わり、粒のきらめきや質感が武器になります。
岩絵具の特徴3点
- 岩絵具は石の粒(溶けない・沈む)
- 番手(粒の大きさ)で表情が変わる
- 定着は膠と水分量で決まる
岩絵具の種類


岩絵具は、時代とともに発展してきており、現在は、以下の種類があります。
天然岩絵具(本岩)
- 天然の鉱物を砕いた、自然な深み
不純物を含む天然物ならではの色調の深み・渋みが魅力です。 - 希少で色数が少なめ、価格が上がりやすい
産出や品質に左右されるため、色数に限りがあり高価になりやすい傾向があります。 - 焼成で色調を変える“焼き”ができる場合がある
焼いて色調を変えて暗色を作れる、という天然岩絵具ならではの特徴が紹介されています。
新岩絵具(新岩)
- 色ガラス(人工石)を作って砕くタイプ
ガラス原料に金属酸化物などを加え、高温で溶かして発色させ、岩石状にしてから砕いて作る、とメーカーが説明しています。 - 色数が豊富で、品質が安定しやすい
天然の不足色域を補う目的で登場し、色数が多く安定している点が特徴として挙げられます。 - 焼成で色を変えることは基本的にしない
天然の“焼き”とは違い、焼成による色変えはできない、という整理がされています。
合成岩絵具(ごうせい いわえのぐ)
- 水晶末・方解末などを“染料で特殊着色”して作る
- 合成岩絵具は、水晶末や方解末を染料で着色して作る、と説明されています。
- 明るい色/中間色/蛍光色など、現代的な色が得意
- 天然や新岩絵具に少ない明るい色調・中間色・蛍光色がある、という特徴が挙げられます。
- 染料が膠液に溶け出す・耐光性など、注意点もある
- 染料の膠液への溶解や耐光性の低さが課題になりうる、という指摘があります。
京上岩絵具(きょうじょう いわえのぐ)
- 鉛成分を含まない“安全性を重視した岩絵具”
- 京上岩絵具は、鉛成分を含まない岩絵具として開発され、製造する人・使う人の安全面に配慮された性能を発揮します。
- 大気汚染ガスの影響を受けにくく、環境面でもメリット
- 大気汚染ガスに対してほとんど影響を受けず、環境汚染の防止にもつながるとされています。
- 濃色化ができ、新色開発が可能/コスト面でも優れる
- 濃色化が可能なため、従来の岩絵具では難しかった新色の開発・生産ができるほか、コスト面でも優れた顔料になるとされています。
初心者向け:どれを選べばいい?
- 渋み・深み・“天然の力”を大事にしたい → 天然岩絵具
- 天然石由来の落ち着いた色味や、粒子が生む奥行きを大切にしたい人向き。少し繊細なので、膠と水分の理解が上達に直結します。
- 色数・安定・設計のしやすさを優先したい → 新岩絵具
- 色が揃えやすく、作品設計が立てやすいタイプ。まず「塗れるようになる」「失敗を減らす」練習段階に強い味方です。
- 明るい色・アクセント色・選択肢を増やしたい → 合成岩絵具
- 明るい色や中間色など、現代的な色の選択肢を増やしたいときに便利。作品のアクセントにも使いやすいです。
- 環境への優しさ×耐候性×混色しやすさ”を重視したい → 京上岩絵具
- 「混色は苦手…」となりがちな岩絵具の中で、混色のしやすさを選びたい方には、かなり相性が良い選択肢です。
番手(粒の大きさ)で何が変わる?深掘り解説


番手とは、粒の大きさのこと
1〜15番まであり、数字が大きいほど細かい粒になります。
現在のお店でよく見かけるのが5〜13、さらに白(びゃく)と呼ばれる粉状のものです。
どの種類の岩絵具でも、「番手」で表情が大きく変わります。
岩絵具は、粒子の粗さ(番手)で見え方と扱いやすさが変わります。
粒子が粗いほど砂のような粒状、細かいほど粉状になります。
見た目のイメージ
- 粗い:鮮やかな色・ビビットカラー、濃い・深い色・はっきりした色味/粒が立つ/きらめきや質感が出る/沈みやすい
- 明度:低い/彩度:高い
- 細かい:淡い色・パステルカラー、優しい・ソフトな色味/色面が整いやすい/ムラが出にくい/形が作りやすい
- 明度:高い/彩度:低い
どの色相にも共通している点を挙げてみました。
同じ原料でも粒度によって色の見え方(とくに明彩度)が変わります。
「番手違いの重ね」で画面が映える
おすすめは、
細目で土台を整える → 最後に粗目を“置く”
この順にすると、「奥の色」+「手前の粒」が共存して、日本画らしい奥行きが出やすくなります。
いきなり粗い番手で“面”を作らないこと。下の画面が見えることと意図しない凸凹がつきやすいからです。
初心者が使いやすい番手は?
最初から番手を大量に揃える必要はありません。
初心者では、よく使う色を基準として 細目+中目(または中目+粗目)で2種類持つだけで、表現の幅が一気に増えます。
練る → のばす → 沈ませる → 上澄みで調整



私は、12番からと教わり使い始めました。
膠(にかわ)の基本:濃さ・温度・保存


膠は、岩絵具を支持体に定着させる接着剤です。薄すぎると粉落ち・剥落しやすく、濃すぎるとテカりやヒビの原因になりえます。だから膠は「強ければ良い」ではなく、ちょうどよさが必要です。
・温度管理(冬場の現実的な対策)
膠は湯煎で溶かす際、60〜70℃くらいを目安にし、沸騰させないよう注意する、という案内がよく見られます。
高温や長時間の加熱で接着力が弱まる注意もあります。
冬場は制作中に固まりやすいので、低温で保温できる道具(湯煎・保温ジャー等)があると安心です。
膠を溶かす際に使う電熱器は、保温機能がありません。
また付けっぱなしにしてると、温度が上がり過ぎてしまいます。



冬場の制作において、低温で保温できるものが必要だと痛感しました。
但し、土鍋は使えないものが多いので、ホーロー容器、ガラス瓶に移し替えて使っています。





乾燥を防ぐために蓋をしています。
注意!保存の目安
冷蔵保存しても、においの変化/濁り/糸を引くなど違和感が出たら無理に使わないこと。
定着不良やカビのリスクになります。
岩絵具の溶き方


溶き方は、慣れると感覚で覚えられます。最初は「型」で覚えるのが近道。
溶き方の基本
- 皿に岩絵具を出す
- 少量の水でよく練る(粒全体を均一に湿らせる)
- 水分を足して動かしやすくする
- 少し置いて沈み方を見る(沈みが強いほどムラが出やすい)
- 沈みが強いときは、上澄み寄りで筆を走らせるとムラが減る
仕上がりを決める「試し塗り」
支持体の端で試し塗り → 乾燥後に 指で軽くこする。
- 粉が取れる:膠が薄い/水分が多すぎる可能性
- テカる:膠が濃い可能性
- ムラが出る:溶きムラ/筆圧/乾燥待ち不足の可能性
「原因が分からない…」が一気に減ります。
よくある失敗と対策


剥がれる(剥落)
原因は大きく3つ。
- 膠が薄い
- 支持体の吸い込みや下地が不安定
- 下の層が乾く前に触った(重ねるのが早い)
対策の順番:膠の見直し → 下地の確認 → 乾燥待ち
この順で潰すと早いです。
ムラになる


ムラはだいたいこの3点セット。
- 水分量
- 筆圧(押しすぎ・往復しすぎ)
- 乾燥待ち不足
岩絵具は“擦り込む”より “置く”意識にすると安定します。
粉っぽい/色が弱い
- 粗い番手でいきなり面を作ろうとすると粉っぽく色がついていないように見えます。
- 水干絵具や細目で土台→粗目を最後に置くで、質感がきれいに残る
- 「色が弱い」は“下の色が透けている”ことも多いので、色を重ねることにより効果的な発色が得られます。
初めての岩絵具
最初は色数より 再現性が大事です。
対パで揃える(無駄買い防止)
- 白(胡粉系)
- よく使う有彩色を数色(迷ったら自分のモチーフで頻出色)
- 番手は 2段階(例:細目+中目、または中目+粗目)
4つの練習でOK
- グラデーション
- 重ね(乾いてから上に)
- にじみ境界のコントロール
- 点描・置き塗り(粒を活かす)
上達が早い人がやっている「記録」
次の4つをメモするだけで、再現性が上がります。
- 膠の体感(薄め/ふつう/濃いめ)
- 水分量(サラサラ/ふつう/ねっとり)
- 番手(細/中/粗)
- 支持体(色紙・麻紙・和紙など)
岩絵具の揃え方(私の体験談)
私は、日本画を習い初めの頃、セットで基本色を揃えました。
買いやすく、まず始めるには十分だったからです。
そこから、様々な日本画画材店から少しずつ買い足していきました。






それから、師匠にあたる先生から紹介されたのが 、京都の老舗日本画画材店「放光堂」です。


店主の石田さんから、上村松園先生や、東山魁夷先生はじめ日本画の先生方のための絵具が製作されたとお聞きしました。


使ってみると、溶きやすさや筆運びが良くて扱いやすく、何より発色が美しい…✨😍
一念発起して、京都のお店まで買いに行くほど“美しさ”に惚れ込みました。




アクセス
所在地:〒604-0847 京都府京都市中京区烏丸通二条下る秋野々町525 二条下ル
TEL:075-231-0817
FAX:075-252-1060
営業時間
営業時間:13:00~18:00
定休日:日曜、祝日
夏季お盆休み、年末年始
※店舗情報は変わる場合があるので、訪問前に「放光堂 京都」で検索して最新情報を確認してください。
絵具は、メーカーやお店で色の出方・粒子の感触が微妙に違うので、「自分に合うところ」を見つけると制作が一段とラクに楽しくなります。
「日本画の画材:岩絵具の選び方と使い方|よくある失敗と解決策3選」のまとめ
。
岩絵具ってなに?最初に知っておくこと
絵具は石の粒子が画面に残る日本画の絵の具で、溶けて一体化しない性質と「膠・水分量」が仕上がりを左右することをまず押さえます。
番手(粒の大きさ)で何が変わる?深掘り解説
番手によってきらめき・質感・ムラの出やすさが変わり、細目で土台を作って粗目を“置く”重ね方で奥行きが生まれます。
岩絵具の溶き方
練る→のばす→沈ませる→上澄みで調整を基本に、試し塗りと擦ってみて、膠と水分の適正を確認します。
よくある失敗と対策
剥落・ムラ・粉っぽさ・ひび割れは膠の濃度や水分、筆圧、乾燥待ちの見直しで原因を切り分け、順番に直すのが近道です。
初めての岩絵具
最初は基本色と番手2段階の最小セットで始め、メーカーや絵具の種類(天然・新・合成・京上)の特性を知りながら少しずつ買い足していくと失敗なく上達できます。
岩絵具は難しく見えますが、才能より 画材の理解が伸びを決めます。
特に、種類(天然・新・合成)と、番手、そして 膠と水分量が分かるだけで、発色も失敗率も大きく変わります。
最初は「きれいに塗る」より、
“定着する条件を作る”→“番手で表情を足す”の順で進めると、岩絵具がぐっと味方になります。



膠と水分量を見直して“置く”意識で描いたら、粉っぽさとムラが一気に消えて感動しました!



試し塗りで原膠を調整したら、定着するようになって岩絵具が怖くなくなりました!



膠を濃くしすぎない&薄塗りで重ねるに変えたら、ひび割れが出なくなって安心して描けるようになりました!



岩絵の具の番手と膠の扱いメーカーが分かるだけで、発色も失敗率も大きく変わります。まずは基本色+番手違い、そして試し塗りの習慣。ここから一緒に積み上げていきましょう。







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