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「【絵画販売を成功するには?】展覧会舞台裏レポート〜NAC選抜グループ展」 を公開しました。ぜひご覧くださいませ。

【初心者でもできる!】日本画で美しい花を描く方法

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日本画は、その美しい色彩と繊細な表現が特徴の日本独自の絵画技法です。

特に花を描くことは、日本画の中でも人気のあるテーマの一つです。

美しい花に魅せられて、つい描きたくなりますよね。

本記事では、初心者でも簡単に取り組める日本画での美しい花の描き方についてご紹介します。

目次

日本画の花の描き方

日本画とは、和紙や絹に自然の顔料を用いて描く絵画です。
岩絵具や胡粉、墨を使って、和紙や絹に作品を描きます。

「日本画」という名称は、明治以降に西洋から入ってきた絵画「洋画」と区別するために付けられた名称です。

日本画の伝統は長く、平安時代から続くこの技法は、現代でも多くの画家に愛されています。

日本画の基本技法

日本画には様々な技法があり、それぞれが独自の表現を可能にします。
以下に、日本画でよく用いられる代表的な技法をご紹介します。

鉤勒(こうろく)

鉤勒法は、描く対象の形態を輪郭線で囲む描き方の事です。

この輪郭線の内側を彩色で満たす技法を「鉤勒填彩(こうろくてんさい)」と呼びます。

花鳥画において代表的な描法の一つです。

没骨(もっこつ)

没骨法は、対象を、輪郭線を用いず、墨や彩色の濃淡だけで描く技法です。
この技法は、花鳥画や風景画などにおいて広く知られており、また、様々な方法があります。

【垂らし込み】

垂らし込みは、画面に塗った絵具や墨がまだ濡れているうちに、別の絵具を垂らし加えて、絵具の比重の違いを利用して自然なにじみを得る技法です。

【付け立て】

付け立ては、下描きや輪郭線を用いず、筆のふくらみや勢いを活かして、墨や絵具の濃淡で対象を表現する技法です。

ぼかし

ぼかしは、塗った絵具に水を加えて濃淡を表現する技法で、グラデーション効果を得るために用います。

毛描き

毛描きは、人物の毛髪(特に生え際、鬢、眉、ひげなど)や鳥獣の毛などを極めて細い線で描く技法です。

淡墨から濃墨の線を重ねたり、対象に合わせた色彩の絵具を用いて細い筆で描きます。

柔らかさ、ふっくらとした質感を出すことができます。

霞や雲は、日本の湿潤な風土を表すとともに、画面の構成要素として重要な役割を果たします。

山水画では、雲霞を描くことで遠近感や山の高さを表現します。

また、場面の転換や時間の経過を暗示する為に、画面の合間に雲霞を描くという方法が用いられています。

墨流し(マーブリング)

墨流しは、水の表面に墨を数滴落とし、表面張力によって広がる墨の模様(=マーブル模様)を、和紙や布に写し取り染める技法です。

水彩絵具全般において、このような効果が得られます。


これらの技法を学び、実践することで、日本画の表現力をより豊かにすることができます。

当研究室が長年携わってきた在外日本美術品の里帰り修理事業で培われた知識を活かし、画家の立場と科学的研究成果を融合した観点から執筆、編集された他に類のない事典。日本の絵画の呼称、素材や道具の種類や加工法、模写技法、保存修復、科学分野の専門用語などを体系的にまとめた画期的内容。

日本画の彩色方法

日本画では、筆の使い方によって表現が大きく変化します。
ここでは、その筆の使い方と主な彩色方法についてご紹介します。

彫塗り(ほりぬり)

線描きした方法や輪郭を残し、その線にかからないように塗る方法です。

塗り埋め(ぬりうめ)

骨描きや淡墨の上にも絵具をのせて、線が見えなくなるように塗る方法です。

平塗り(ひらぬり)

平らに塗る方法です。

塗限り(ぬりかぎり)

絵具を塗ったままにし、隈取でぼかしたりしない方法です。

たらし込み

先に塗った絵具が乾かない内に、別の色の絵具または水をたらし込む方法です。

日本画は、筆の繊細な動きや色の重ね方を工夫することで、独特の深みや透明感を持った作品を仕上げることができます。
それぞれの技法や彩色方法を理解し、自分の作品に取り入れてみてください。

本画制作

本画とは、「作品」のことです。

絵は楽しみながら描くものですが、自由に表現するためには基本的な知識が必要です。
そこで、このガイドでは、制作のプロセスを簡単にまとめました。

写生を通じて、モチーフの本質や特徴を理解し、それを自分の感性で作品に反映させましょう。

本画制作の下準備

STEP
写生・スケッチ

観察した花を鉛筆でスケッチします。

花の形状や色、質感をじっくり「観察」することが重要です。

特徴を捉えることでリアルな表現が可能になります。

  • この時に、描きたい構図を考えて描くと、完成までのイメージが出来て尚良いです。
  • バランスや配置など、構図を意識することが大切です。

積極的に写生することが絵の上達の1番の秘訣です。

写生により、自然の仕組みや成り立ちなど掴めてきて、日々新たな発見発見や感動があります。

STEP
こしたず  (こしたえ)小下図(小下絵)
花暦ノ肖像 – Famiria Garden – 下絵《髙橋 友美》

構図や色を考えます。

写生をした時の情景や感動を思い出し、何をどう表現したいのか自問自答しながら考えていきます。
心に浮かんだ形や色などを小さな紙に描いてイメージを掴んでいきます。

描きたい絵に一番近いイメージの作品や資料を集めて、PCソフトで組み合わせてみたりします。

本画制作の下準備」については、写生・スケッチ・クロッキー」と小下図(小下絵)」どちらから始めても構いません。

本画制作に入る前までにやっておきたい事

完成イメージ図」「進行計画書工程表」の作成

本画制作の前に、完成イメージ工程をはっきりさせておきます。
(例)建築設計、料理レシピ 等

完成イメージ図」   :表現したい絵のイメージ図を作成
進行計画書工程表」:絵の大きさ、使う画材、絵の具を何層重ねるか、かかる時間など、出来れば額までおおよそ決めておく。

  • 日本画は、描いた後の修正が難しい為
  • 描いている内に、どう進めたらいいか分からなくなり、いつまでも仕上がらないという事を防ぐ為

(「迷子になる」とも表現されます。)

最初は、どうしたらいいか全く分からないかもしれませんが、
まずはイメージ図に近づける為、様々な方の日本画の描き方に関する本やブログ、動画、教わった方法などを参考に、できる範囲で良いので完成イメージや工程表を作成して進行スケジュールを決めておく方が良いです。
心理的にも楽に制作を進行させる事ができます。

本画制作のプロセス

STEP
下図・草稿
お客様からの依頼で修正_角度を変えて動から静のイメージへ

構図や色を考えます。

写生をした時の情景や感動を思い出し、何をどう表現したいのか自問自答しながら考えていきます。

心に浮かんだ形や色などを小さな紙に描いてイメージを掴んでいきます。

その結果、時には小下絵とは全く異なる作品が出来ることもありますが、日本画では修正が難しいため、この段階でじっくりと構図を練り上げておくことが必要です。

写生をそのまま絵にする場合でも、描きたいものが引き立つように配置や色彩に工夫を加えると良いでしょう。

STEP
下図写し 骨描き

下図を念紙(転写紙)などで、本紙に写し取り、墨で輪郭を描きます。

この「骨描き」と呼ばれる線は彩色の時の重要な手掛かり(ガイドライン)となるため、これは花、これは葉と確かめながら丁寧に描きましょう。

写す時も骨描きの時も、新たに描くような意識を持って描きます。

なお作品によっては骨描きを行わない場合もあります。

STEP
下塗り マチエール作り

和紙などの粗い目を詰め、整え、絵の具の発色を良くするために下塗りを行います。

下塗りの絵具は彩色にも影響を与えるため、濃い目の膠でしっかりと画面に定着させます。

よく使われる絵の具は、胡粉や黄土などですが、モチーフに合わせて選ぶ事が大切です。

さらに、背景の彩色やマチエール(絵肌)作りなども行い、全体の画面効果を高めます。

STEP②「下図写し 骨描き」とSTEP③「下塗り マチエール作り」については、自分のやりやすい方だったり表現したいものによりどちらが先でも構いません。

STEP
彩色 雰囲気作り

絵は、全体の雰囲気を大切に、特定の部分だけに集中するのではなく、バランスよく進めていきましょう。

また、最初から濃い色を使わず、薄い色を重ねて深みを出していくことが重要です。

モチーフの質感や量感(ボリューム)、生命感、さらにはそれを包む空気感を、自分の選んだ絵具と筆で丁寧に表現していきましょう。

STEP
仕上げ

描きたいものがしっかり表現できているかを確認しながら、全体のバランスを見て細部の色や形を整えていきます。

完成イメージにどのくらい表現できているか、ここで終えていいものか等、自問自答します。

林 功,箱崎 睦昌 (監修), 河北 倫明(総監修) 同朋舎出版

絵のモチーフをしっかり観察する事と同じ位、自分の描いている画面をよく見る事が大切です。

日本画の花を描く際の注意点

日本画の花を描く際には、以下の点に注意すると良いでしょう。

筆使いの練習
:繊細な筆使いが求められるため、日々の練習が重要です。特に細い線を描く技術は、花を描く際に大いに役立ちます。

色彩感覚の向上
:岩絵の具の特性を理解し、色の重ね方や配色を工夫することで、美しい仕上がりになります。

自然の観察
:花の自然な形や色を忠実に再現するために、実際の花を観察することを怠らないようにしましょう。

花を描く際には、以下のポイントを押さえて描くことで美しい作品に仕上がります。

花の絵の制作動画

こちらでは、実際の制作動画を後日公開します。
花の絵を描く際の参考にどうぞご覧下さい。

花のタイプ別:日本画での描き方ガイド

花には様々なタイプがあります。その特徴に合わせて、描き方を工夫します。

花の特徴を掴むには、花の成り立ちや仕組みを知ることがとても大切です。

これらを理解することにより、花を描く際に大きな助けとなり、更に楽しくそして正確に描くことができるようになります。

植物の分類表 理科バリーclub より
理科バリーclub
中1理科|植物の分類・生物のなかま分けを現役教員が分かりやすく解説!#被子 #裸子 #双子葉 #単子葉 #シダ... 中学1年生の理科で学習する植物について解説しています。生物分野の植物単元をまとめて学習したい方に必見です。この記事では、現役中学校教員が「満点が取れるまとめノー...
趣味の園芸 - NHK
趣味の園芸 日曜朝は「趣味の園芸」!季節を感じるすてきな花、心癒やされる室内グリーン、庭づくりのヒントなど、植物の育て方や楽しみ方を専門家が分かりやすくレクチャーします。
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その植物分類表に合わせて、次に日本画でよく描かれる花をいくつかご紹介します。

春を象徴する花

春を象徴する花には「ウメ(梅)」「モモ(桃)」「サクラ(桜)」があります。

これらの花々は、どれも春の訪れを告げる代表的な存在であり、植物分類学では「サクラ属」という同じグループに分類されています。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>バラ目>バラ科>(3亜科)

サクラ亜科(又はモモ亜科)

>サクラ属

>ウメ
>モモ
>サクラ

サクラ属の特徴

樹木に、5枚の花びらを持つ花を咲かせます。
花の付き方は様々な種類があります

  • ウメのように1つずつ咲くもの
  • サクラのように短い軸からいくつかの花が房のように咲くもの
  • ウワミズザクラのように小さな花が穂状に集まって咲くもの

桜(さくら)

桜の花は日本の象徴であり、春に咲くその繊細な花びらと淡い色合いが特徴です。
花びらの先端が少し割れています。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>バラ目>バラ科>サクラ亜科>サクラ属>サクラ

桜の花は短期間で満開になり、その後すぐに散ることから、儚さや美しさの象徴として日本文化に深く根付いています。
桜の花見は、古くから多くの人々に愛される風物詩であり、その美しさは詩歌や絵画にも数多く描かれています。

梅(うめ)

梅の花は、その小さな花びらと冬の時期に咲くことが特徴です。
枝に沿って花が咲きます。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>バラ目>バラ科>サクラ亜科>サクラ属>ウメ

描き方のポイント
  • 花の丸い形状や花の大きさや枝の形状を観察し、枝に沿った花を描きます。
  • 花の密度と配置を考えます。
  • 白さを表現するために、胡粉を使います。(彫塗りなど)
  • 透明感や柔らかさを出すために、岩絵の具を薄く何度も、薄い色から順に花びら一枚一枚に色を重ねていきます。
  • 花の中心部分や雌しべや雄しべ、葉脈などの細部を、細い筆で丁寧に描き込みます。
  • 陰影をつけることで、花に奥行きが生まれます。
  • 花を引き立てるために、背景に薄く色を入れたりします。

梅の花は、気持ち大きめに描いた方が形が綺麗に描けます。

寒さの中で咲く梅の花は、早春の訪れを告げる象徴とされています。
古くから日本文化に深く根付いており、詩歌や絵画、茶道など多くの芸術に登場します。

梅の花は、清らかさや忍耐力を象徴し、その香り高い花は見る人々に新年の希望と喜びをもたらします。

花の王,花の宰相

花の中で、「花王」または「百花王」と呼ばれるのは「ボタン(牡丹)」です。
「花相(花の宰相)と呼ばれているのはまた「シャクヤク(芍薬)」です。

どちらも英語で「ピオニー(peony)」といい、植物分類学では「ボタン属」というグループに分類される、豪華で美しい花々です。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>ユキノシタ目>ボタン科>ボタン属
>ボタン
>シャクヤク

ボタン属の特徴
  • 落葉性の低木または多年草として成長します。
  • 高さは1~1.5メートルほどで、幹は直立して枝分かれし、太い枝を持っています。
  • 葉は柄があり、互い違いに生えています。
  • 葉は2~3回に分かれて羽のような形をしており、小さな葉は卵形から細長い形で、先が鋭く分かれています。
  • 根は太く、肉質で、先が細くなるか筒状になっています。

牡丹(ぼたん)

牡丹の花は、その豪華な形状と鮮やかな色合いが特徴です。
春から初夏にかけて咲きますが、冬に咲く品種もあります。
「富貴花」「百花王」とも呼ばれています。

木本(きほん)です。

冬牡丹:春に咲く牡丹を温度管理などにより、冬に咲かせたものです。
寒牡丹:春と冬に咲く品種です。

大きな花びらが幾重にも重なり合い、その存在感は非常に魅力的です。

花びらはしっかりとしており、先端が軽く波打つように広がっており、葉は緑色であまり光沢やツヤはなく、切れ込みがあってギザギザしています。

花は、枝分かれした横向きの枝に咲きます。

牡丹の花は、その豪華で壮麗な姿から「富貴花」「百花の王」と称されます。
日本文化において高貴さや富の象徴として、豪華な庭園や寺院の装飾に用いられ、その美しさは詩歌や絵画にも数多く描かれています。

また、牡丹の鑑賞は、古くから多くの人々に愛される風物詩であり、特に春から初夏にかけて開催される牡丹祭りは、多くの見物客を引き寄せます。

その豪華な花は、ただ咲き誇るだけでなく、時には冬の寒さにも耐え忍ぶ品種があり、その力強さと優雅さが人々の心を惹きつけます。

芍薬(しゃくやく)

芍薬の花は、その大きくて丸みを帯びた花びらと豊かな香りが特徴で、春から初夏にかけて咲きます。

別名では、「顔貌が佳い」という意味で「貌佳草(カオヨグサ)」とも呼ばれます。
また、「草牡丹」とも呼ばれる通り草本(そうほん)です。

芍薬の花は、すらりと伸びた茎の先に大きな花を咲かせ、その花びらは幾重にも重なり合い、ボリューム感があります。

芍薬の葉は、赤みを帯びた濃い緑色をしてツヤががある長楕円形で、花の美しさを引き立てる役割を果たしています。
葉は茎に対して対生し、全体のバランスを保っています。

芍薬の花は、一日中開いていることが多く、その開花の持続性も魅力の一つです。

描き方のポイント
  • 花の丸い形状や花の大きさや枝の形状を観察し、枝に沿った花を描きます。
  • 花の密度と配置を考えます。
  • 白さを表現するために、胡粉を使います。(彫塗りなど)
  • 透明感や柔らかさを出すために、岩絵の具を薄く何度も、薄い色から順に花びら一枚一枚に色を重ねていきます。
  • 花の中心部分や雌しべや雄しべ、葉脈などの細部を、細い筆で丁寧に描き込みます。
  • 陰影をつけることで、花に奥行きが生まれます。
  • 花を引き立てるために、背景に薄く色を入れたりします。

芍薬はその美しさと共に力強さも持ち合わせており、特に庭園や切り花として親しまれています。

「立てば芍薬」と言われるように、しっかりとした茎で立ち姿が美しく、その姿勢の良さも特徴の一つです。

芍薬はまたその名前が示すように薬草としても古くから利用されています。

水上に咲く花 – 蓮華(レンゲ)

蓮華(レンゲ)と呼ばれる水上に咲く花には、「ハス(蓮)」と「スイレン(睡蓮)」があります。
この2つの花はよく似ていますが、植物分類学では全く異なる種類の植物です。

蓮華(レンゲ)

蓮華(レンゲ)」は、蓮と睡蓮と合わせた総称です。

花の美しさと神秘的な雰囲気から、仏教絵画や寺院の装飾によく描かれています。
泥の中から両手を広げたような美しい姿の花は、仏教の象徴として、純粋さや精神的な目覚めを表し、その優雅な姿は多くの人々に愛されています。

蓮(はす)

「ハス」は、植物分類学で「ヤマモガシ目ハス科ハス属」というグループに分類されます。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類
>ヤマモガシ目>ハス科>ハス属>ハス

ハス属の特徴
  • 水生植物で、水底の土中に塊茎(かいけい)を作り、そこから葉と花茎を水面に伸ばします。
    〈※地下茎の一部が大きくなった物で、多量の貯蔵物質(でんぷん等)を蓄積し変形した茎の事〉
  • 塊茎はレンコンとして食用にされますが、食用に適した系統と花を楽しむ系統があります。
  • 花を楽しむ系統の塊茎は、あまり太らず食用には向きません。
  • 日当たりの良い場所を好みます。

蓮の花は、水面上に高く咲く大きな花と葉が特徴的です。

花びらはふっくらとした形です。
葉はつや感がなく、傘のように水を弾く性質を持っており、葉の上に丸い水滴が光っているのをよく見ます。
早朝からゆっくりと咲き始め、お昼頃には花を閉じてしまいます。

夏の季節に涼しさを感じさせる花です。

睡蓮(すいれん)

「スイレン」は植物分類学で「スイレン目スイレン科スイレン属」というグループに分類されます。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類
>スイレン目>スイレン科>スイレン属>スイレン

スイレン属の特徴
  • 地下茎が発達しており、そこから長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべます。
  • 葉は円形から広楕円形で、中心付近に葉柄が付き、その部分に深い切れ込みがあります。
  • 気孔は一般的な葉とは異なり、葉の表側に分布しています。

睡蓮の花は、花が水面に浮かんでいるように咲き、葉に光沢と円形に切れ込みがある形が特徴です。
日中に花を咲かせて、午後に閉じます。

描き方のポイント
  • 花と葉の形状(+水面を描く場合は水面の反射)を観察して、大きさ、配置、密度に注意して描きます。
  • 花びら、葉の特徴を意識しましょう。
  • 中心から外側に向かって花びらを描きます。
  • 透明感や柔らかさを出すために、岩絵の具を薄く何度も、薄い色から順に花びら一枚一枚に色を重ねていきます。
  • 花びらの内側の陰影や外側の光の当たる部分を丁寧に描き分けます。
  • 花の中心部分を細かく描き込みます。
    (+水面の反射を光の反射を意識して、透明感を出します。)
  • 陰影をつけることで、立体感を表します。
  • 花を引き立てるために、背景に薄く色を入れたりします。

風に揺れる蔓(つる)性の花

蔓(ツル)植物は、自分の茎や幹で体を支えるのではなく、他の木や物に巻き付くことで茎を高く伸ばしていく植物です。
この性質を「つる性」と呼び、ツル植物は「蔓草(つるくさ、まんそう)」や「葛・蔓(かずら・かつら)」とも呼ばれます。

日本でよく親しまれている蔓(ツル)植物の花には、藤や萩があります。
これらの植物は、どちらも植物分類学上「マメ亜科」に属しており、美しい花を咲かせることで知られています。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>マメ目>マメ科>マメ亜科>
フジ連>フジ属>フジ
ヌスビトハギ連>ハギ亜連>ハギ属>ハギ

マメ亜科の特徴
  • 高木、低木、蔓(つる)植物、または多年草や一年草として育ちます。
  • 葉は、
    羽のように広がる「羽状複葉」、
    手のひらのように広がる「掌状複葉」が一般的です。
    • 3枚の葉が集まる「三出複葉」、単一の「単葉」も見られますが、2回に分かれて羽状になることはありません。
  • 「花序」(花の配列状態)は、
    「総状花序」柄のある小花が長い円錐形または円柱形に並び、付け根から咲いていく。
    「円錐花序」主軸の周りに「総状花序」が何度も分枝し、全体が円錐形になる。
    「頭状花序」柄のない多数の花が集まって、一つの円盤状の形を作る。
  • 花は左右相称(=対称)(稀に放射相称)です。
  • 花弁(花びら)は、瓦が重なったような形「瓦重ね状」(稀に敷石のような形「敷石状」)で、蝶の形に似ていることから「蝶形花(チョウケイカ)」と呼ばれます。
    • 花中央から先に飛び出る一枚の花弁「竜骨弁」
    • 側面の2枚は「翼弁」
    • 上部の真直ぐあるいは曲がっている1枚は「旗弁」
  • 萼(がく)は5枚の萼片が合わさって釣り鐘型または管状になります。
  • 雄しべは通常10本あり、普通は竜骨弁の中に隠れており、9本が合わさり1本が独立した「9+1」の構成になったり、完全に独立しています。
  • 胚珠は、通常「湾生」(種子の中で胚は湾曲)しています。

藤(ふじ)

「藤(フジ)」は植物分類学で「マメ亜科>フジ連>フジ属」というグループに分類され、春から初夏にかけて紫色や白の花房を垂れ下げるツル植物です。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>マメ目>マメ科>マメ亜科>
フジ連>フジ属>フジ

日本庭園や神社の藤棚でよく見られ、その美しい姿が多くの人々に親しまれています。

藤の花は、長い花房が特徴で、風に揺れる様子がとても優雅です。
紫や白の小さな花が房状に集まって形成されています。

藤の花を鑑賞するために作られた藤棚は、藤の性質を利用して設置されています。
藤の枝が棚全体に広がり、その下に長く垂れ下がる花房を楽しむことができます。
藤棚の下に立つと、まるで花のカーテンに包まれたような感覚を味わうことができます。

藤の香り高く、優雅に風に揺れるその姿は、古くから日本庭園や祭りで親しまれており、春の風物詩として多くの人々に愛されています。

萩(はぎ)

「萩(ハギ)」は植物分類学で「ヌスビトハギ連>ハギ亜連>ハギ属>」というグループに分類されます。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>マメ目>マメ科>マメ亜科>
ヌスビトハギ連>ハギ亜連>ハギ属>ハギ

萩は、秋を代表するツル植物で、小さなピンクや紫色の花を咲かせます。

萩は、古くから日本の詩歌や絵画に登場し、秋の風情を感じさせる植物として親しまれています。
特に「秋の七草」のひとつとしても有名です。

萩の花は、秋を代表する花の一つで、小さな花が集まって咲く姿が特徴です。
花の色はピンクや紫・白など、枝がしなやかに垂れ下がりながら、風に揺れる姿が風情を感 じさせます。
植物分類上は木本(樹木)に分類されますが、冬になると地上部が枯れるため草本とも言えます。

古くから詩や歌に詠まれ、日本の秋の風景に欠かせない植物として親しまれています。

描き方のポイント
  • 花房・枝の垂れ下がり、小さな花の連なりをよく観察して、花の色や形、全体のバランスを把握しましょう。
  • 垂れ下がる花房をイメージしながら、枝の曲線とそれに沿って垂れる花房、小さな花の集まりを描きます。
  • 花が密集している部分と、空間を意識して描くことがポイントです。
  • 花房の曲線や個々の小さな花びらを丁寧に描き、全体の形を整えます。
  • 花びらには淡い紫や白、ピンクを下塗りします。色の濃淡やグラデーションを考慮しながら、花房全体を塗り進めます。
  • 深みや透明感を出すために重ね塗りします。
  • 花房の密度感や、個々の花の形、花びらの先端、葉脈、枝の陰影を丁寧に描き込みます。
  • 花房垂れ下がる様子や枝の自然な流れを意識して描きます。
  • 花を引き立てるために、背景に薄く色を入れたりします。
植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>マメ目>マメ科>マメ亜科>
フジ連>フジ属>フジ
ヌスビトハギ連>ハギ亜連>ハギ属>ハギ

冬映えの花

冬の寒さの中でひときわ美しく咲く花たち、それが「椿(つばき)」と「山茶花(さざんか)」です。

厳しい季節にも関わらず、鮮やかな色彩を見せるこれらの花々は、日本画においてもよく描かれ、その美しさが多くの人々に愛されています。
冬のモノトーンの景色に彩りを添えるこれらの花は、静けさの中に華やかさと力強さを兼ね備えています。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>ツツジ目>

ツバキ科>ツバキ属

椿(つばき)

椿は、植物分類学上、「ツバキ科>ツバキ属」に属しており、椿の花は、冬から春にかけて咲く艶やかな花です。

ツバキは、花弁が筒状のおしべの束と基部で合着しているため、一見合弁花類のように見えますが、離弁花類に属します。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>ツツジ目>ツバキ科>ツバキ属>ツバキ

赤、白、ピンクなどの色合いがあり、肉厚でしっかりとした花びらが特徴です。
椿の葉は厚く、光沢のある濃い緑色をしており、花の鮮やかな色を引き立てます。
花の中心には黄色の雄しべが集まり、花全体に華やかな印象を与えます。

椿は庭園や神社などで親しまれ、長寿の木としても知られています。
花は一輪ずつ落ちることが多く、その潔さが日本文化で儚さや美しさの象徴とされています。

山茶花・茶梅(さざんか)

山茶花(さざんか)は、植物分類学上、「ツバキ科>ツバキ属」に属しており、花は、晩秋から冬にかけて咲く可憐で清楚な花です。

山茶花は、一見合弁花類のように見えますが、花弁は基部で合着していないので、離弁花類に属します。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>離弁花類>ツツジ目>ツバキ科>ツバキ属>サザンカ

白やピンク、赤の花びらは薄く柔らかです。

椿と似ていますが、さざんかは花びらが一枚一枚散るのが特徴です。
花びらは細長く,まれに小さい切れこみがあります。
葉は小さく、濃い緑色で光沢があり、縁には細かいギザギザがあります。

さざんかは、庭木や生垣として利用され、冬の庭を彩ります。
その静かに咲いて散る姿は、冬の風情を感じさせ、多くの人々に愛される花です。

描き方のポイント
  • 花の形状、花びらの配置、葉の形状や光沢、花びらの厚みや光の反射具合などポイントを観察します。
  • 花の中心から外側に向かって、花びらの形をスケッチします。
  • 花びらが重なる様子や、葉の配置を意識して描きます。
  • 花びらや葉の輪郭を丁寧に描きながら、各パーツの境界を明確にします。
  • 透明感や柔らかさを出すために、岩絵の具を薄く何度も、薄い色から順に花びら一枚一枚に色を重ねていきます。
  • 色の濃淡や陰影を考慮しながら塗ります。
  • 花の中心部分や葉脈、光の反射部分など、細かい部分を描き込みます。
  • 特に、花びらの先端や葉の縁など、細部に注意して描きます。
  • 陰影をつけることで、立体感を出します。
  • 花を引き立てるために、背景に薄く色を入れたりします。

キク科の花 – 小花の集まりで一つに:進化と多様性の象徴

植物の中で、最も進化し、最も分化しているのが、キク科の植物です。
キク科の植物は、草本や木本として育ちます。

キク科は、小さな花がたくさん集まって、一つの大きな花のように見える「キク亜科」、舌状花(舌の形のような花)のみからなり茎葉に乳液を含む「タンポポ亜科」等、12の亜科(サブグループ)とに分類されます。
しかし、その12の亜科のうち、たった4つの亜科にキク科植物のほぼ全て(約99%)の種が含まれています。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>合弁花類>キク目>(全11科)

キク科

>ムティシア亜科>ムティシア連>ムティシア属
>ガーベラ属など
1連
>アザミ亜科>アザミ連>アザミ属など
3連
>タンポポ亜科>タンポポ連>タンポポ属など
9連と連未定3属


>キク亜科>キク連>キク属
>シオン連>シオン属
>キンセンカ連>キンセンカ属

>ハルシャギク連>コスモス属
>ハルシャギク属
>ダリア属
>ヒマワリ連>ヒマワリ属
>ヒャクニチソウ属

など
21連

キキョウ科

>キキョウ亜科>キキョウ属
>ホタルブクロ属
など
約80属

キク亜科の特徴
  • キクやタンポポのように、小さな花がたくさん集まって、一つの大きな花のように見えることが大きな特徴の花の形を「頭状花序(とうじょうかじょ)」と呼び、その基部にある萼(がく)のように見える部分を「総苞片(そうほうへん)」と言います。
  • 頭状花序を作る小さな花には、筒状花(管状花)と舌状花の2種類があります。
    • 例えば、ハハコグサは筒状花だけでできており、タンポポは舌状花のみで構成されています。
    • ヒマワリの場合、周囲を舌状花が囲み、中央部分に筒状花が集まっています。
  • キク科には世界でおよそ950属2万種、日本では約70属360種の植物があり、ほとんどの地域で生育できます。
  • 多くの栽培植物や帰化植物も含まれており、その中には抗変異原性(こうへんいげんせい)を持つものも多くあります。
    • 「抗変異原性」とは
       突然変異誘発物質による突然変異を抑える作用です。
       ガン予防効果が期待されています。

菊(きく)

菊は、植物分類学上「キク亜科」に属しており、その複雑な形状と豊かな色合いが特徴で、秋を象徴する花です。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>合弁花類>キク目>キク科>キク亜科>キク連>キク属>キク

菊の種類は200品種以上ともいわれ、種類によって花色や花の大きさなどそれぞれに特徴があります。

  • 和菊は「古典菊」とも呼ばれ、「江戸菊」など地名がつく種類も多いです。
  • 洋菊は「ポンポンマム」や「スプレーマム」など種類が多いです。

菊は古くから日本文化に深く根付いており、皇室の紋章にも用いられるなど、高貴な花として愛されています。
菊は長寿や再生の象徴とされ、祭りや行事にも多く登場します。
様々な色と形の菊が庭園や花壇を彩り、秋の風景を美しく演出します。

向日葵(ひまわり)

向日葵(ひまわり)の花は、植物分類学上「キク亜科>ヒマワリ連」に属しており、その大きくて明るい黄色の花びらと中央の種子部分が特徴的で、夏の季節を象徴する花です。

植物の分類

種子植物>被子植物>双子葉類>合弁花類>キク目>キク科>キク亜科>ヒマワリ連>ヒマワリ属>ヒマワリ

太陽に向かって咲く姿から、元気や希望の象徴として広く知られています。
その華やかで明るい色合いは、見る人々に活力を与え、元気づける効果があります。

ひまわりは、農作物としても重要で、特に種子から採れる油は広く利用されています。
また、その成長過程で太陽を追いかけるように花が回る「向日性(こうじつせい)」もユニークで、多くの人々に親しまれています。

描き方のポイント
  • 花びらの重なりや中心部分の形、茎や葉の形状を細かく観察し、花びらが重なる様子、中央部分を意識して描きます。
  • 花の大きさ、配置、密度に注意して全体のバランスを把握します。
  • 中心から外に向かって描くことでバランスが取りやすいです。
  • 透明感や柔らかさを出すために、岩絵の具を薄く何度も、薄い色から順に花びら一枚一枚に色を重ねていきます。
  • 中心部分の細かい花びらや種子、葉脈などを描き込みます。
  • 花びらの重なり具合や中央部分の質感に注意して描きます。
  • 陰影をつけることで、立体感を出します。
  • 花を引き立てるために、背景に薄く色を入れたりします。

アヤメの花

アヤメの花は、優雅な形と美しい色彩が特徴で、日本文化においても古くから愛されてきました。

アヤメの花は、花びらが放射状に広がる形や左右対称の形をしており、外側と内側にそれぞれ3枚ずつの花びら(外花被と内花被)があります。
おしべは3本あり、バランスの取れた美しい構造です。
また、アヤメ科の花には、スラリと伸びた剣状の葉が特徴で、花の美しさを際立たせています。

植物の分類

種子植物>被子植物>単子葉類>キジカクシ目>アヤメ科>

クロッカス亜科>サフラン属
>フリージア属
>トウショウブ属

など
12属

アヤメ亜科>アヤメ属
>ハーベルティア属
>ニワゼキショウ属

など
8属

アヤメ科に属するこの花には、「あやめ」「花菖蒲」「杜若(かきつばた)」といった種類があり、それぞれが季節とに異なる風情を見せます。
これらの花々は、日本画や和歌などでも頻繁に描かれてきたように、独自の魅力を持っています。

この記事では、アヤメ科の代表的な花々について、その特徴や違いを紹介します。

あやめ(綾目・文目)

あやめ(綾目・文目)の花は、その鮮やかな紫色の花びらと独特の網目模様が特徴です。

植物の分類

種子植物>被子植物>単子葉類>キジカクシ目>アヤメ科>アヤメ亜科>アヤメ属>アヤメ


水辺や湿地帯ではなく、やや乾燥した草原や山地に自生します。

日本の春を彩る代表的な花の一つで、古くから多くの詩歌や絵画に描かれてきました。

  • 花の特徴:外側の花びらの付け根に黄色が入り、その周りに網目模様が見られます。
  • 花の色:紫、まれに白色があります。
  • 葉の特徴:主脈が不明瞭です。
  • 生育環境:あやめは乾燥した所に育ちます。
  • 開花時期:5月上旬から中旬

花菖蒲(はなしょうぶ)

花菖蒲の花は、その大きな花と鮮やかな色合いが特徴です。

「ショウブ」と呼称される例もあるが、「ショウブ」単体は、「ショウブ目>ショウブ科」に属する別種の植物を指します。

植物の分類

種子植物>被子植物>単子葉類>キジカクシ目>アヤメ科>アヤメ亜科>アヤメ属>ハナショウブ


主に梅雨の季節に咲き、日本の庭園や水辺に美しい彩りを添えます。

花菖蒲は、江戸時代から品種改良が進み、現在では多様な品種が存在します。

  • 花の形状:花は大きく、花びらが幅広で波打つような形状をしています。
  • 花の特徴:花びらの中央に黄色の筋があり、模様は少ないか、あっても控えめです。
  • 花の色 :白、桃、紫、青、黄など様々あります。絞りや覆輪などとの組合せを含めると5,000種類あるといわれています。
  • 葉の特徴:主脈は太いです。
  • 生育環境:湿地に育ちます。
  • 開花時期:6月上旬から下旬

杜若・燕子花(かきつばた)

かきつばた(杜若・燕子花)の花は、その鮮やかな青紫色の花とシンプルな形が特徴です。

植物の分類

種子植物>被子植物>単子葉類>キジカクシ目>アヤメ科>アヤメ亜科>アヤメ属>カキツバタ

花色は他に、白・黄・青と原色に近い鮮やかな色です。

水辺や湿地に自生し、特に水上で美しく咲きます。

  • 花の形状:花は比較的大きく、花びらはあやめ、花菖蒲に比べると細めで滑らかな形をしています。
  • 花の特徴:花びらの中央は白色の筋があります。
  • 花の色 :鮮やかな青紫、紫、白色です。紋が見られるか或いは模様は殆どありません。
  • 葉の特徴:主脈は細小です。
  • 生育環境:水中や湿地に育ちます。
  • 開花時期:5月中旬から下旬

花に由来するあざやかな紫みの青色「杜若(かきつばた)色」は、杜若の花を染料とした色で、染めると上品な落ち着いた青紫色になります。

描き方のポイント
  • 花びらや葉の形状、配置や角度を観察して、中心から外側に向かって描きます。
  • 大きさ、配置、密度に注意して全体のバランスをとります。
  • 花の特徴を把握して描きます。
  • 透明感を出すために、岩絵の具を薄く何度も、薄い色から順に花びら一枚一枚に色を重ねていきます。
  • 花の中心部分や花びら、葉脈などを細かく描き込みます。
  • 陰影をつけることで、立体感を出します。
  • 花を引き立てるために、背景に薄く色を入れたりします。

あやめ・花菖蒲・杜若は、平安時代から庭園の装飾に用いられました。
「いずれがあやめかかきつばた」という言葉が示すように、混同もよくあります。

植物の分類

種子植物>被子植物>単子葉類>

キジカクシ目>アヤメ科>アヤメ属
>アヤメ
>ハナショウブ
>カキツバタ

ユリ科の花 – 球根草:地下から育つ美と形

ユリ科の花には、ユリやチューリップなど、地下に鱗茎や球根が発達する植物が多いです。

花は通常、6枚の花びらのように見える花被片(外側と内側がそれぞれ3枚ずつ)を持ち、6本の雄しべが特徴的です。
また、子房は花の上に位置する「子房上位」という構造をしています。
これらの特徴は、ユリ科の植物に共通する基本的な形態です。

植物の分類

種子植物>被子植物>単子葉類>ユリ目(10科約70属1600種)

>ユリ科
(19属610種)

>ユリ属(原種:100種以上、品種:約130品種)
>ユリ

百合(ゆり)

百合の花は、その優雅な形状と芳醇な香りが特徴で、本来は夏を象徴する花ですが、現在では一年中楽しむことができます。

百合は純潔や再生の象徴とされ、結婚式や宗教行事にも多く登場します。
多様な色と形の百合が庭園や花壇を彩り、風景を美しく演出します。

描き方のポイント
  • 花びらの放射状の配置や角度を観察して、中心から放射状に花びらを描きます。
  • 色を徐々に濃くすることで立体感を出します。
  • 透明感や柔らかさを出すために、岩絵の具を薄い色から始めて何度も重ね塗りを行います。
  • 花の中心部分のしべや花びらの模様、縁を細かく描き込みます。
  • 影をつけることで、花の立体感を強調します。

「ゆりの花」は、どの美術大学でも最初の課題として描く花で、基本描法を会得していきます。

「日本画画材と技法の秘伝集 より」

植物の分類

種子植物>被子植物>単子葉類>ユリ目>ユリ科>ユリ属>ユリ

日本画の花の名画3選

日本画には、花をモチーフにした数多くの名作があります。

その中から3つの名画をご紹介します。
これらの作品は、日本の自然の美しさを巧みに捉え、繊細で豊かな表現が光るものばかりです。

それぞれの作品を通じて、日本画における花の美しさを堪能し、作品制作の参考にしてください。

四季花鳥《荒木 十畝

この作品は、四季それぞれの美しさを鳥や花を通して見事に表現しており、日本の自然の豊かさを感じさせます。

「四季花鳥(しきかちょう)《荒木 十畝(あらき じっぽ)》」この4幅対の作品には、それぞれにタイトルが付けられています。
これらのタイトルは、各季節の特徴を詩的に表現したものであり、作品の持つ雰囲気や情景を端的に伝える役割を果たしています。

春「華陰鳥語」
「はる(かいんちょうご)」
夏「玉樹芳艸」
 「 なつ(ぎょくじゅほうそう)」
秋「林梢文錦」
「あき(りんしょうぶんきん)」
冬「山澗雪霽」
ふゆ(さんかんせっせい)
春の光と鳥のさえずりを感じさせ、自然の中で生命が芽吹く様子を象徴しています。

春の訪れを祝うかのように、花々が咲き誇り、鳥たちがさえずる美しい風景を描いています。

白い木蓮の花と赤い椿の花の対比が鮮やかで、その背景には、小さな黄色のレンギョウの花が一面に咲き、景色に優雅さと明るさを添えています。

木の枝には、可愛らしいシジュウカラやウソがとまり、春の歌を奏でています。また、水辺に佇むキジが、春の豊かな生命力と自然の美しさを一層引き立てています。
夏の木々と芳しい草花の香りを描写し、豊かな季節の彩りを表現しています。

夏の豊かな季節を描いたこの作品では、青い桐の花が木々を覆い、白い立葵や橙色の姫百合の花が彩りを添えています。

立葵の花の先で、木の上で互いに見つめ合う2羽のオナガが、閉じた長い尾の先をそっと触れ合わせ、優しく寄り添っています。

さらに、その様子を見守るように佇むモズが、夏の穏やかなひとときを静かに伝えています。
秋の木々の美しい紅葉を織物に見立てて描き、豊かな実りの季節を象徴しています。

赤い紅葉と金色の葉、地面に咲く青い竜胆の花が、秋の深まりを感じさせます。

木の上には、鮮やかな青い羽を持つカケスがとまり、地面には、長い嘴を持つヤマシギが描かれており、鳥や小動物たちが森の中で穏やかに過ごす様子が美しく表現されています。
冬の静寂な風景が、雪に覆われた木々と岩、そして澄んだ青い水面によって表現されています。

白梅の花が冬の冷たさの中に柔らかな美しさをもたらし、背景に描かれたアオキの赤い実が、静かな景色に鮮やかな彩りを添えています。

水辺の岩の上に佇むオシドリが冬の冷たさの中でも鮮やかな彩りを見せ、枝に留まるカササギやスズメたちが、厳しい季節に静かな動きを加えています。

また、飛んでいるウグイスが、春を待つかのように、冬の中にも希望の兆しを感じさせる役割を果たしています。

これらの作品は、四季折々の風景と共に、日本の自然の美しさを巧みに描き出しています。

それぞれのタイトルが示すように、絵画には季節感と共に情感が込められており、四季の移ろいを深く感じさせます。

「花・flower・華2024」展(山種美術館)で、この作品を観ることができました。
この作品の前に立つと、まるで季節の花々を見ながら庭園を散策しているかのような気分になり、四季の移ろいを肌で感じることができました。
繊細で色彩豊かな描写が、穏やかなひとときを与えてくれる素晴らしい作品でした。

荒木 十畝(あらき じっぽ)について

1872年10月5日(明治5年9月3日) – 1944(昭和19)年9月11日
長崎県大村出身。
旧大村藩士の家に生まれる。本名:朝長悌二郎

1892(明治25)年に上京し、荒木寛畝に師事。
翌年養子となり、画号を十畝に改めます。
1908(明治41)年、第二回文展で審査員となり、以後官展で活躍します。

花鳥画を得意とし、同時期に活躍した横山大観らと並び称されます。
いわゆる旧派の代表的人物と目されるが、制作面では伝統的な画法に立ちながら、新たな表現を模索し続けた画家でありました。

百花《田能村 直入》

百花(ひゃっか) 田能村 直入(たのむら ちょくにゅう )》この作品は、巻子形式の大作であり、その全長は375cmにも及びます。

この作品は、日本の豊かな自然を象徴する様々な花々を繊細かつ華麗に描き上げたものです。
タイトルの通り、「百花」には季節を問わず、あらゆる種類の花が一堂に会するように描かれ、それぞれがその美しさを競い合っています。

  • 椿、桜、菊、芍薬、藤など、日本の四季折々を代表する花々が細部に至るまで丁寧に表現されており、その色彩は鮮やかに映え、魅了します。
  • 単に美しい花を描くだけでなく、花々の生命力や自然の力強さをも表現しており、四季の移ろいを感じさせる作品となっています。
  • 画面全体に広がる花々の配置や色のバランスは、優雅さと調和をもたらし、作品全体に一貫した美しさを与えています。

直入は、この作品を通じて、日本の花々の美を余すことなく表現しようとしたことが感じられます。

それぞれの花の特徴を捉えた細やかな描写と、鮮やかに映える色彩によって、まるで生きた花々を目の前にしているかのような錯覚に陥ります。

「百花」は、日本画の伝統的な技法と、田能村直入の高度な技術が結びついた傑作であり、その魅力は時代を超えて多くの人々に感動を与え続けています。

「花・flower・華2024」展(山種美術館)で、この作品を観ることができました。
美しい花々が織りなす一瞬を紡いで、まるで豪華な花のパレードを目の前で鑑賞しているかのように楽しく贅沢なひと時を感じました。

田能村 直入(たのむら ちょくにゅう )について

文化11年2月10日(1814年3月31日) – 明治40年(1907年)1月21日)
豊後直入郡竹田町(現在の大分県竹田市)生まれ

幕末から明治時代にかけて活躍した日本画家
日本最後期の文人画家として知られます。
明治期の南画家の中心的な人物です。

幼少期から高く評価され、初めは小虎と号しました。
田能村竹田に画を学び、その才能を認められて養子となりました。

幕末期には豊後から大坂に出て、大塩平八郎に陽明学を学び、儒学者たちと深い交友を持ちました。
1880(明治13)年には京都府画学校の初代校長に就任し、その後は自ら南宗画学校を開き、後進の育成にも力を注ぎました。

四季花鳥図《鈴木 其一》

四季花鳥図(しきかちょうず)《鈴木 其一( すずき きいつ )》この作品は、四季を象徴する花鳥を描いた2曲1双の屏風で、左右に配置された一対の屏風が四季の移り変わりを繊細かつ華麗に表現しています。

左隻右隻_
秋を表す花鳥画です。

落ち着いた色調の秋の七草(萩、芒、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗)とともに、オシドリのつがいが描かれています。

オシドリは、静かに佇む姿が秋の澄んだ空気を感じさせ、秋の草花が季節の移ろいを表現しています。

画面全体に広がる落ち着いた色調が、秋の情景を美しく際立たせています。
夏を表す花鳥画です。

夏を象徴する花々(ひまわり、立葵、杜若、朝顔、たんぽぽ)雄鶏と雌鶏、そして5羽の雛が描かれています。

雄鶏の堂々とした姿とひまわりをはじめとする夏の花々が、力強い生命力を感じさせます。

夏の花々と、元気に走り回る雛たちが、季節の躍動感を伝えています。

背景の金地が、これらの花鳥を一層引き立て、その美しさと華やかさを強調しています。

この作品は、其一の優れた画技と色彩感覚を余すところなく発揮したものであり、四季の移ろいを一対の屏風を通じて見事に表現しています。
紙本金地の背景が花鳥を引き立て、豪華さとともに季節感を際立たせる効果をもたらしています。

この「四季花鳥図」は、江戸時代の日本画の伝統と美の粋を体現した傑作です。

鈴木 其一 (すずき きいつ)について

1795(寛政7)年 – 安政5年9月10日(1858年10月16日))
近江出身

江戸時代後期の絵師
江戸琳派の祖・酒井抱一の弟子として知られ、その最も著名な後継者とされています。

幼少期から酒井抱一に弟子入りし、絵画だけでなく茶道や俳諧も学びました。
抱一の代筆を務めるなどしながら実力を高め、後に独自の画風を確立しました。
其一は、江戸琳派の存続に貢献し、多くの弟子を育成しました。

彼の作品は都会的な洗練と理知的な装飾性が際立ち、近代日本画の先駆者として高く評価されています。

自然の中で共存しながら華やかに咲く花々の景色に、美しさとともに心が癒されます。

「【初心者でもできる!】日本画で美しい花を描く方法」のまとめ

日本画の花の描き方

日本画は、日本の伝統的な絵画技法で、独自の美しい色彩や繊細な表現が特徴です。
日本画で花を描く際には、観察力と描写力が重要です。
下絵を描いた後、薄く色を重ねていくことで、花びらの透明感や立体感を表現します。
花びらや葉の細部に注意しながら、色の濃淡や陰影を丁寧に描くことがポイントです。

花のタイプ別:日本画での描き方ガイド

花のタイプによって描き方が異なります。
それぞれの特徴に合わせた描き方があります。
花の形状や分類を理解し、適切な技法を使うことで、より美しい日本画を完成させることができます。

日本画の花の名画3選

四季折々の花々を題材にした日本画の名作の中から、特に秀逸な3作品を紹介する記事です。

  • 四季花鳥《荒木 十畝》
  • 百花《田能村 直入》
  • 四季花鳥図《鈴木 其一》

これらの作品は、繊細で豊かな色彩表現を通じて、日本の花々の自然の美しさを見事に捉えており、それぞれが異なる季節や風情を映し出しています。

日本画の花を描くことは、その繊細さと美しさを表現するために、多くの技術と時間が必要です。
しかし、その過程で得られる達成感は非常に大きく、自身のスキル向上にも繋がります。

花の描き方のポイントを押さえることで、さまざまな花を美しく描くことができます。
花の特徴をしっかりと観察し、適切な技法を用いて描くことで、よりリアルで美しい日本画の花を完成させましょう。

日本画の伝統を学びながら、ぜひ美しい花を描いてみてください。

髙橋 友美 Yumi Takahashi
日本画家 Nihonga Artist
日本画情景 - Scenes Art -
この言葉に相応しい絵を描くことをテーマにしています。

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