新しい年を迎えるにあたり、年賀状は感謝や祈りを伝える大切な文化です。
2025(令和7)年は巳年(みどし)。
干支の「巳」を象徴する蛇(へび)は、古来より知恵や繁栄、再生のシンボルとして親しまれてきました。
この記事では、日本画の技法を活かして、色紙などに簡単に描ける「吉祥画」をテーマにした年賀状制作方法をご紹介します。
幸運を呼ぶ「吉祥画」とは?
吉祥画(きっしょうが)は、幸福や繁栄、長寿などを願う縁起の良い絵画のことです。
年賀状に取り入れることで、新年の挨拶に特別な意味を込めることができます。
代表的な吉祥モチーフ
巳年の象徴である蛇は、脱皮を繰り返すことから「再生」や「成長」を意味します。
こちらでは、吉祥画として代表的なモチーフをご紹介します。
松
松は不老長寿のシンボルで、新年の縁起物に最適です。
竹
竹は真っ直ぐ成長し、繁栄や長寿を表します。
梅
梅は冬の厳しさに耐え、春の訪れを告げる花。再生や生命力を象徴します。
吉祥文様とその意味
吉祥画には文様を取り入れるとさらに縁起の良いデザインになります。
例
七宝文様:
円形が重なり合う模様で「調和」や「円満」を象徴。
亀甲文様:
亀の甲羅を模したデザインで「長寿」の象徴。
唐草文様:
植物が絡み合う模様で「繁栄」や「成長」を意味します。
日本画で吉祥画を描く魅力
日本画の特徴である繊細な線や豊かな色彩は、吉祥画の縁起物の美しさを最大限に引き立てます。
また、和紙や岩絵具など伝統的な画材を使うことで、温かみのある作品に仕上がります。
吉祥画の名作
日出処日本(ひいづるところにほん)《横山大観》
1940(昭和15)年
約230×450(cm) 1面 紙本着色
皇居三の丸尚蔵館蔵
朝日 富士山
丹頂《上村松篁》
1980(昭和55)年
一対(各227.8×157.0㎝) 紙本彩色
松伯美術館蔵
鶴 竹
唐獅子図屏風
右隻:狩野永徳 桃山時代(16世紀)
左隻:狩野常信 江戸時代(17世紀)
六曲一双 紙本金地着色
右隻:223.6×451.8 左隻:224.0×453.5 ㎝
皇居三の丸尚蔵館蔵
獅子 亀甲文様
巳年の縁起担ぎ:白蛇を祀る神社にお参り
白蛇は日本において、神聖で縁起の良い存在とされています。
その白い姿は清らかさや神秘を象徴し、金運や繁栄、厄除けのご利益があると信じられています。
このため、全国各地に白蛇を祀る神社が存在して、御利益を授かるために多くの人が訪れています。
白蛇を祀る神社を訪れる事で、心が清められ、新しい年に向けた幸運や繁栄を祈る良い機会となるでしょう。
ぜひ、近隣の白蛇神社を訪れて、その神秘的な雰囲気を体感してみてはいかがでしょうか。
巳年に観たい名画紹介:若竹ニ蛇図《百々広年》
百々広年による「若竹ニ蛇図」は、日本文化における蛇の象徴的な意味を巧みに描いた作品です。
西洋画では蛇が邪悪や堕落の象徴として描かれることが多いのに対し、日本では蛇は富や水の象徴とされ、縁起の良い存在と考えられています。
- 本作では、画面の中心に力強く伸びる若竹と、しなやかで動きのある蛇が描かれています。
- 若竹は素直さや成長を象徴し、蛇と共に画面に清々しい生命力を感じさせます。
- 蛇の描写には緻密な筆致が光り、滑らかな曲線が竹林の中で生き生きとした躍動感を生み出しています。
- 背景の柔らかな余白が、全体の品格と静けさを際立たせ、百々広年の技術と繊細な美意識を感じさせる一作となっています。
この作品は、自然と調和した吉祥的な世界観を表現し、四条派の画風が見事に反映されています。
蛇は苦手ですが、この絵に描かれているものは生命と自然の美しさを見事に表していると思いました。
繊細な描写と若竹との調和が素晴らしく、苦手意識を忘れてしまいます。
百々 広年(どど ひろとし)
不詳-1856(安政3)年
京都生
江戸後期の画家で、字は「永夫」、別号は「菱華」といいます。
四条派の画家である山脇東暉(紀広成)に学び、浅井柳塘などの門下生を輩出しました。
確認できる作品は多くありませんが、山水画や花鳥画が残されています。
また、狂歌本や薬学書の挿絵も手掛けています。
著名な人物名鑑「皇都書画人名録」に掲載されていることから、当時は名声を持つ画家であったと考えられます。
色紙に描く吉祥画の描き方
ここでは、初心者でも挑戦しやすい色紙を使った簡単な年賀状制作方法をご紹介します。
吉祥をもたらすといわれる白蛇と、感銘を受けた名画「若竹ニ蛇図《百々広年》」からインスピレーションを得て描きました。
準備する画材と道具
- 色紙またはハガキサイズの画用紙
- 水彩絵具(日本画風にするなら顔彩や鉄鉢がおすすめ)
- 筆(細筆、中筆)
- 墨または墨汁
- パレット、絵皿と筆洗器
- 金箔または金粉(仕上げ用に)
吉祥画の構図を考えるコツ
主役を決める
巳年の場合、蛇を主役にしますが、他の吉祥モチーフ(梅、竹、松)を組み合わせることで華やかさを演出します。
余白を活かす
日本画では余白が重要な役割を果たします。全体を埋め尽くさず、余白をあえて残すことで作品に品格が生まれます。
視線の流れを意識
蛇の体の曲線を活かして、絵を見る人の視線が自然と動くように工夫しましょう。
家族も使用するこの作品の年賀状は、当初「若竹ニ蛇図」のような大きさの白蛇を描いていました。
しかし、「大きな蛇は怖い」という家族の要望を受け、子供のような可愛らしいサイズへと調整しました。
描き方の手順
鉛筆で軽く構図を決め、蛇や梅の位置をスケッチします。
筆を使って蛇の輪郭を墨で描き、梅の花や竹の葉を加えます。
蛇は金色や緑、背景には淡い青や紫を用いると、縁起物らしい華やかさが出ます。
金箔や金粉をアクセントとして加えることで、新年らしい輝きを演出します。
年賀状の作り方
作成した絵を年賀状にします。
PCによるレイアウトデザイン、出力、アレンジアイディアなどをご紹介します。
- 作品を撮影して画像にする
- 縦か横を決める
- サイズを設定する
- 画像リンクを貼る
- サイズを決める
- 文字を配置する
- 宛名を入れる
- 出力する 試しは必須
年賀状制作にあまり時間をかけられない場合でも、以下の方法で簡単にオリジナル作品を作れます。
スタンプを活用
蛇や吉祥文様のスタンプを使えば、手軽に模様を追加できます。背景を和紙の風合いで仕上げると、日本画らしさが引き立ちます。
シールやマスキングテープ
市販の吉祥モチーフのシールやマスキングテープを使い、簡単に華やかさをプラスできます。
蛇モチーフの形だけを手描きで加えると手作り感もアップします。
水彩ペンを活用
絵具が手に入らない場合は、水彩ペンでも日本画風の表現が可能です。
濃淡を工夫することで、奥行きのあるデザインを作り出せます。
「【巳年の年賀状】日本画で幸運を呼ぶ「吉祥画」を描く方法」まとめ
この記事では、巳年ならではの吉祥モチーフや日本画の技法を活かした年賀状制作のアイデアをお届けしました。日本画の特長である繊細な表現と縁起物を組み合わせることで、特別な一枚を作ることができます。。
初心者でも簡単に挑戦できる方法やアレンジもご紹介しました。
ぜひ今年の年賀状制作に役立ててください。
心を込めて作った年賀状は、受け取る人にとっても大切な新年の贈り物となることでしょう。
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