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【日本画画材「膠(にかわ)」とは?】種類と使い方 徹底解説!」公開しました。 日本画家の高橋友美-YumiTakahashi-です。 「描くことを軸に、心潤す暮らしを届けたい」という想いを込めて作品と制作にまつわるお役立ち情報を発信をしています。

【日本画画材「膠(にかわ)」とは?】種類と使い方 徹底解説!

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日本画を始めてみたいけれど、膠(にかわ)の扱いが難しそう…

本を読んでも、膠の溶かし方や濃度の加減がいまいち分からない

そもそも膠(にかわ)って何?

日本画に興味を持った時、多くの方が最初にぶつかる第一関門、
それが「膠(にかわ)」です。

チューブから出せばすぐに描ける洋画の画材とは異なり、
日本画では、接着剤」である膠を自分で用意し、絵具と練り合わせる必要があります。

それが日本画の敷居を高く感じさせる要因かもしれません。

しかし、膠は決して難しい画材ではありません。

膠の性質を理解すれば、
日本画特有の美しいマチエール(絵肌)を自在に操れるようになります。

なぜ必要なのか?」を理解すれば、誰でも扱うことができます。

今回は、日本画初心者が知っておくべき膠の種類から基礎知識、おすすめの選び方・扱い方までを詳しく解説します。

目次

「膠(にかわ)」とは?種類と選び方

日本橋高島屋「膠へのまなざし ―再考、そして応答」展より2026(令和8)年

日本画は、「岩絵具」という鉱石を砕いた”砂”のようなものを、画面に定着させる絵画です。

油絵具や水彩絵具には最初から接着成分(オイルやアラビアゴム)が含まれていますが、岩絵具には含まれていません。

そのままでは、どの基底材(紙、布、板など描く土台)に乗せてもサラサラと落ちてしまいます。

そこで、定着材(バインダー)・媒剤(メディウム)の役割を果たすのが「膠(にかわ)です。

単にくっつけるだけでなく、絵の仕上がりを左右する重要な要素です。

定着剤としての役割

「膠(にかわ)」は、動物の皮や骨から抽出されたコラーゲン(タンパク質)を抽出し、乾燥させて作られたものです。

魚や肉料理でできる煮こごり、スイーツのゼリーの材料であるゼラチンと同じものです。

膠は、強力な接着力を持ち、乾くと透明になる性質があります。

これにより、岩絵具本来の鮮やかな色彩や、光の屈折による美しい輝きを損なうことなく、画面に固定させることができるのです。

用途

膠は、最も原始的な接着剤で、古くからさまざまな国で共通して使われており、古代エジプトの壁画をはじめ、世界の古典絵画のほとんどが膠を使って描かれています。

  • 日本画・水墨画
  • 和紙の滲み止め(ドーサ引き)
  • 金箔・銀箔の貼り付け
  • 伝統的な木工や仏像修復
古代エジプト画
ナショナルジオグラフィックより

種類

膠(にかわ)」という名称はその製法から「煮皮」が語源だという説があります。

ここでは、原料や製法による分け方で代表的なものを挙げてみました。

原料による分類
  • 牛の皮や骨から作られる「牛膠(うしにかわ)」🐃
  • 鹿の皮や骨から作られる「鹿膠(しかかわ)」🦌
  • 豚の皮や骨から作られる「豚膠(ぶたにかわ)」🐖
  • 兎の皮や骨から作られる「兎膠(うさぎにかわ)」🐇
  • 魚の皮や骨から作られる「魚膠(さかなにかわ)」🐟

それぞれ接着力や粘りに違いがあります。

製法による分類

膠について少し詳しく調べると、「和膠(わにかわ)」や「洋膠(ようにかわ)」という言葉を目にすることがあります。
これは抽出や精製の方法による分類ですが、日本画を描く上で非常に重要な「性質の違い」を生み出します。

🔸和膠と洋膠 比較表(日本画の視点から)🔸

特徴和膠(わにかわ)洋膠(ようにかわ)
製法伝統的な手工業・手作業近代的な機械による精製
純度低い(脂肪分などの不純物を含む)高い(不純物が取り除かれている)
日本画での性質柔軟性があり、絵具のひび割れを防ぐ収縮力が強く、画面が突っ張りやすい
管理のしやすさ腐敗しやすく、温度管理が必要腐敗しにくく、臭いも少ない
適した主な用途日本画(岩絵具の定着)、伝統的な墨づくり木工、楽器製作、西洋絵画の修復など
知っておきたい「和膠(わにかわ)」と「洋膠(ようにかわ)」の違い
  • 和膠(わにかわ)

    牛や鹿の皮などを原料とし、日本古来の伝統的な手作業で作られる膠です。
    最大のポイントは「あえて純度を上げすぎない(不純物を残す)」こと。

    微量な脂肪分などの不純物が含まれるため腐りやすいという弱点はありますが、この不純物が天然の柔軟剤の役割を果たします。

    乾燥してもカチカチになりすぎず、適度な「しなやかさ」を持つため、絵具がパリパリと割れて剥がれるのを防いでくれるのです。
  • 洋膠(ようにかわ)

    近代的な機械や減圧濃縮を用いて、工業的に高度に精製された膠(ゼラチン)です。

    不純物が取り除かれているため、無色透明に近く、腐りにくいのが特徴です。

    しかし、純度が高い分「ゼリー強度(固まって収縮する力)」が非常に強くなります。

    そのため、楽器の接着や木工には最適ですが、日本画にそのまま使うと画面が強く突っ張り、絵具に亀裂が入る原因になりやすいという側面があります。

現在、画材店で手軽に買える粒膠などの多くは、扱いやすい洋膠(ゼラチン)をベースにしながらも、日本画向けに柔軟剤を加えるなどして「和膠の性質」に近づける工夫がされています。

さらに詳しく知りたい方は、PIGMENT TOKYOなどの画材専門店の解説なども参考にしてみると、膠の奥深い世界がより楽しめますよ。

PIGMENT TOKYO
PIGMENT TOKYOオリジナル和膠が生まれるまで 前編〜コラーゲン・ゼラチン産業の今〜 宏栄化成株式会社に膠についてインタビューをしました。PIGMENT TOKYOのWebコンテンツではクリエイターが持つ画材や素材への美意識に迫る記事を掲載しています。
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日本画画材としての膠(にかわ)の種類と特徴

画材店に行くと様々な形状の膠が売られていますが、原料や製法によって使い勝手が異なります。

ここでは、膠の種類と特徴を紹介します。

三千本膠(さんぜんぼんにかわ)

郷さくら美術館 画材紹介コーナー

日本画で最も古くから使われている、伝統的な棒状の乾燥膠です。

牛皮などを原料としています。

膠液にする前の乾燥した固形の状態で1本:約10g程度。腐敗しにくく、保存性にも優れていて安定しています

魚膠・鱗由来の「特三千本膠」という透明度の高いものもあり、金泥などの微粒子絵具の延びや発色に定評があります。

接着力が強く、しなやかさがあるのか特徴です。

使用方法

使いたい分量を測るため、または、作業しやすさのために、先にペンチで適当な長さに折って使います。

タオルで包んで作業すると怪我防止にもなります。

吸水・膨潤の時間は1〜3日程度。

時間と手間がかかりますが、一度に大量の膠液を作ることができます

そのため、本格的な日本画制作の現場で最もよく使われます。

なぜ「三千本」と呼ぶの?

そうですね…
確認したところ、様々な諸説ありますね。

  • 1貫目の原料から膠が三千本製造できるため
    (1貫目=3.75kg 膠1本が1g程度…実際は膠1本10g余り、この説は少々怪しい?)
  • 俵1俵に三千本詰められる
    (米俵1俵=60kg 但し、俵は中に詰める原料によって重量が変わるので、こちらの説の方が近いかも…)
【コラム】一度は存続の危機に!三千本膠(にかわ)の行方

昔ながらの手作業で作られていた伝統的な三千本膠は、2010年代初頭に一度、市場から姿を消すという存続の危機に立たされました。

国内最後の製造元が、後継者不足により廃業を余儀なくされたためです。

文化財修復や古典的な日本画制作において不可欠な画材が失われるという事態に、当時の美術界には大きな衝撃が走りました。

しかしその後、大学の研究機関や国内のメーカーが立ち上がり、かつての膠の成分や物性を科学的に分析して復刻するプロジェクトがスタートしました。

多くの人の尽力により、現代の技術で見事に代替品が開発されました。

現在、私たちが画材店で手にできる三千本膠には、日本の大切な美術と伝統技術を守ろうとした人々の熱い思いが込められているのです。

三千本膠の存続危機についての詳細

  • 時期: 2010年末〜2011年頃
  • 製造終了した企業: 兵庫県姫路市にあった「清恵(きよえ)商店」
  • 当時の状況: 昔ながらの伝統的な手作業による製法で三千本膠を製造していた、国内最後のメーカーであった清恵商店が、後継者不足や需要の減少などを理由に廃業(製造終了)となりました。
    これにより、古典絵画や文化財修復、そして日本画制作において不可欠だった伝統的な三千本膠が市場から姿を消すという、まさに存続の危機に陥り、日本画界隈で大きなニュースになりました。

その後の展開(現在について)

この事態に、東京藝術大学をはじめとする美術界隈や文化財修復の現場は大きな危機感を抱きました。

その後、大学の研究機関と国内のゼラチン・膠メーカー(旭陽化学工業など)が共同研究を行い、清恵商店が作っていた三千本膠の成分や物性を科学的に分析して復刻・代替するプロジェクトが立ち上がりました。

現在、画材店で手に入る三千本膠(「飛鳥」などの製品名で販売されているもの)は、こうした危機を乗り越え、現代の技術とメーカーの協力によって、かつての伝統的な三千本膠の性質に極めて近い形で引き継がれて製造されているものです。

鹿膠(しかにかわ)

その名の通り、鹿などの皮を原料とした膠です。

約1センチ4方(1cm角)のサイコロ状で、三千本膠のように折る手間がありません

一つが大体1.5〜2gと計量しやすいです。

吸水・膨潤の時間は1〜2日程度。

  • 鹿膠は、腐りにくい上に絵の具の定着も良いです。
  • 但し、鹿膠自体の価格は安くないのでコストパフォーマンスは悪くなります。
  • 他の膠の腐敗を遅らせるために混ぜて使ったりします。

また、鹿膠を季節によって種類を使い分けることで膠の定着の具合をコントロールすることもできます

乾燥鹿膠
(かんそうしかにかわ)

梅雨時など湿度の高い時期に使用すると良いです。

軟靭鹿膠に比べると硬い感じです。

軟靭鹿膠
(なんじんしかにかわ)

「乾燥鹿膠」の改良型として開発されたのがこちらです。
接着力をしっかりキープしたまま、ひび割れのリスクを最小限に抑えてくれる優れものです。

保水性が高く、乾燥が緩やかで、絵具のぼかし表現などに適しています
そのため、軸物や巻物、大作の出品画などを制作する際によく選ばれています。

私は、絵を描く時間を毎日定期的に取れない時は、
保存が効いてなおかつ透明度の高い「鹿膠」を愛用しています。

粒膠(つぶにかわ)

小さな粒状(パール状)になった膠です。

事前に砕く手間が不要で、パール状(小さな粒)になっているためそのまま水に漬けられます。
吸水・膨潤の時間は2〜3時間程度です。

  • 計量しやすく、水に溶けやすいので膨潤が短時間で済むのがメリットです。
  • 牛皮を原料としたものが多く、透明度が高いです。
  • 兎の皮を原料とした「兎膠」は、高い接着力があり、粗い番手の岩絵具を画面に定着させる力があります。

粉末膠(ふんまつにかわ)

粉末膠
得応軒HPより

粉末状のため、表面積が大きく、粒膠よりもさらに短い時間(約15〜30分程度)で吸水・膨潤します。

  • すぐに膠液を作りたい場合に便利です。
  • 素早い作業が必要な場合や、細かい微調整をしたい場合に適しています。

粉が細かいため、計量時や水を入れる際に舞いやすいので注意してください。

膠液(にかわえき)

すでに液体状になってボトルに入っている膠です。

防腐剤が含まれているため、未開封であれば常温でも保存が可能で、腐敗の心配が少ないのが最大のメリットです。

⚪︎ 蓋を開けて2〜3倍の水で薄めるだけですぐに使えます

開封後はすぐに使い切ること!冷蔵庫に入れても保存期間は数日間です。

コスパを考えると、数日以内に制作に使用する容量を把握しておく必要がありますね…

\透膠液(すきにかわえき)の詳しい使い方はこちらから/

板膠(いたにかわ)

板状の膠で、薄く伸ばしてあるのが特徴です。

老舗日本画画材店の店頭で初めて見た時、綺麗な姿に惹かれました💖

  • 棒状に比べて安価で、大容量の和膠です。
  • 大作や数多くの作品を一度に制作する場合に適しています。
  • その分、吸水・膨潤の時間はかかります
  • 空気に触れる面が少ないので、品質を長く保つことが出来ます。

乾燥膠でも、生き物であることに変わりなく、古い膠は乾燥が進んで硬くなり豊潤しにくくなります
板膠は、未使用の状態であれば一定の品質を保ちながら長期保存が可能です。


こんなに様々な種類の膠があるんですね。

膠液(膠水)の基本的な作り方

膠の濃度(濃さ)は、作品の完成度や耐久性に直結します。

  • 膠が薄すぎると、絵具が画面から剥落(はくらく)してしまいます。
  • 逆に濃すぎると、乾燥した際に強い収縮力が働き、画面に亀裂が入ったり(亀裂)、絵具の色が暗く沈んだりしてしまいます。

適切な濃度の「膠水(にかわすい)」を作ることが、日本画の第一歩です。

ここからは、実際に固形の膠を使って、絵を描くための「膠液(膠水)」を作る手順を解説します。

膠液(膠水)までの手順

それでは、膠液を自分で作る手順をご紹介します。

分量

膠の濃さは、描く対象や使う絵具によって調整します。
基本となる分量の目安は以下の通りです。

【用途別】膠と水の分量目安表
用途膠の量水の目安量備考・ポイント
絵の具を溶く 10g
100〜200cc原液が濃すぎると絵の具が割れる原因になるため、まずは薄め(水多め)から試すのがおすすめです。
胡粉(ごふん)を溶く 10g約150cc白い絵具である胡粉は膠を非常に多く吸うため、通常の絵の具より濃い目の液を使用します。
ドーサ液(にじみ止め) 10g約800cc和紙の滲み止めに使う際はかなり薄めます。この薄めの膠液に生明礬を溶かして使用します。

🔸膠10gの目安

  • 三千本膠:1本
  • 鹿膠  :5個
  • 粒膠  :小さじ(膠匙)2杯

使用する道具

膠液作り道具類
膠鍋(にかわなべ)

主に土鍋になります。
画材店では、サイズや種類が様々あります。使う量や好みに合わせて揃えると良いです。

膠匙(にかわさじ)

主な素材は真鍮製のものです。膠を混ぜたり掬ったりするのに使います。

計量器具

膠や水の分量を計るのに欠かせません。

電熱器、保温器類

膠を溶解させる為に使います。

また、冬など寒い時期は、制作中に膠が固まってくるので、それを防ぐ為に常に人肌程度に保温しておく必要があります。

保温トレイ、湯煎セットなどお取り扱いされている老舗日本画画材店もあります。

「日本の材料」喜屋 2016年カタログより
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※低温保温ができるIHクッキングヒーターなども使えます。
 但し、土鍋は使えないなど、ヒーターに乗せる素材と表面積に制限が有る場合があります。

ボール パット 濾し布(ガーゼ、ストッキングなど) 保存容器

膠水から不純物を取り除くための作業時に使います。

また、作業がしやすいように使う物も用意しておきます。

STEP
分量を測る
乾燥鹿膠 5個(約10g)

基本の比率は「膠 10g : 水 100cc」(約10%溶液)です。
計量:膠と水を一定の比率(例:膠10gに対し水100ccなど)で用意します。

STEP
ふやかす(膨潤)
膠を豊潤するために被るくらいの水を加える
  1. 膠全体が水を被るくらいの容器(ボールまたは瓶(三千本膠を折らずに使う場合))に入れます。
  2. そこに分量の水を注ぎ、数時間〜3日(膠の種類による)置いてふやかします。
  3. 膠が水を吸ってゼリー状になります。

膨潤:容器に入れ、夏場は数時間、冬場は一晩ほど置いて水を吸わせます。
芯まで柔らかくなっているか確認しましょう。

🌟この段階で既に液体であれば、STEP4:膠を濾す作業でOKです🙆‍♀️
※夏など暑い時期はゲル化しないことがあります。

STEP
熱を加えて膠液にする(溶解)
固まっていたら、温めて液体になるよう溶解させる
  • 膠鍋を電熱器にかけます。
    • 大きさにもよりますが、火力は「弱」で、溶解するまで(約3分程)火にかけます。
  • 60度〜70度程度でゆっくり溶かします。

注意点絶対に沸騰させないでください。
60℃〜70℃が適温です。
煮立たせるとコラーゲンの繊維が壊れ、タンパク質が変質し、接着力(粘着力)が接着力が著しく低下します。

STEP
不純物を取るために濾す(こす)
不純物を取るために膠を濾す

不純物を取り除くため、ガーゼなどの布で濾過すれば、綺麗な膠液の完成です。

私は、湯引きした絹本の端布を使います。
微細な繊維が落ちずに、綺麗に越せるそうです
(画材店さんからのアドバイスです。)

ここで新しい膠の粘度を指の感覚で覚えておくと良いですね

STEP
用途に合わせて濃度調整する

用途に合わせて適量の水を加えて濃度を調整します。

ドーサ液を作る場合など、最初から濃度を調整して作る場合もあります。

作ってすぐ使用しない場合は、保存容器に入れて冷蔵庫などに保管します。
⭐️ガラス瓶が推奨されます。

ゼリーみたいですね🩷

膠液作りで最も大切なのは「温度管理」です。

【実践編】膠の接着力と「使いやすい濃度」の真実

学校や教室、あるいは専門書などでは、基本的に「膠10g:水100〜200cc」と教わることが多いです。

しかし、実際の制作現場においては、個人の経験や描き方(厚塗りをするか、薄塗りを重ねるかなど)によって最適な「使いやすい濃度」は異なります。

つまり、明確な一つの正解はないと言えます。

また、膠の種類によっても接着力には以下のような感覚的な違いがあります。

接着力の強さの目安: 鹿膠 >三千本膠 > 粒膠

これを踏まえ、ご自身の制作ペースに合わせた実践的な膠液の作り方をご紹介します。

制作ペースに合わせた水分の調整法

膠液作りで最も悩ましいのが「腐敗」です。

水分が多いほど腐りやすくなるため、どれくらいの期間で使い切るかによって、最初に作る原液の濃度を変えるのがプロの裏技です。
(※どんなに濃く作る場合でも、膠10gに対して水50cc程度が限界です)

  • すぐに使い切る場合(数日以内)
    • 【膠10g : 水100〜200cc】
    • 作ってそのまま使いやすい標準的な濃度です。

習っていた時は、ほぼこの濃度。
鹿膠をよく使うので、「膠1:水20」の割合で使用していました。

  • 1ヶ月程度かけてゆっくり使う場合(おすすめ!)
    • 【膠10g : 水50cc】
    • かなり濃い状態(水分が少ない状態)で作って冷蔵庫で保存します。
    • 使う時だけ必要な分を別の絵皿や容器に取り出し、その都度水を入れて適度な濃度に薄めて使用します。
    • 水分が少ない分、腐敗を遅らせることができます。
  • 未定/迷ったらコレ!バランス型
    • 【膠10g : 水100cc】
    • 扱いやすく、かつ腐りにくい、一番おすすめの基準となる濃度です。

失敗しない!上手に膠液を作る基本のポイント

ご自身のペースに合わせた分量が決まったら、以下の基本ルールを守って溶かしていきましょう。

  • 直火はNG!必ず「湯煎」
    • 鍋に直接火をかけると膠の接着力が失われるため、必ず湯煎でゆっくり溶かします。
  • 沸騰させない(60℃前後)
    • 煮立たせると成分が壊れてしまいます。(83℃くらいが限度と言われています。)
      触れるくらいの温度を保ちながら、均一になるように混ぜ合わせます。

日本画制作への使い方

最重要!岩絵具と混ぜる時の「濃度」と指の感覚

作った膠液をそのまま絵具に混ぜるわけではありません。

絵具の種類や描く段階によって、水で薄めて使います。

この濃度の見極めが日本画で最も難しいポイントです。

岩絵具を皿に出し、少量の膠液を加えて、中指の腹でしっかりと練り合わせます。
この時の膠が絵の具をしっかり包んだことを知るための艶感指の感触が重要です。

岩絵具を溶く

適正な状態: 指を離した時、軽く音がして、少し抵抗を感じる程度。

膠が多すぎる: 強力にくっつく。→ 絵具がひび割れたり、画面が突っ張る原因になります。
膠が少なすぎる: サラサラとしている。→ 乾燥後に「粉落ち(絵具が剥がれ落ちる)」します。

水で薄めるタイミングは?絵具が剥がれないコツ

指で練り合わせた後、最後に水を数滴加えて、筆で塗りやすい固さに伸ばします。

最初から膠と水を合わせておくことは可能でしょうか?
少し面倒に感じてしまいます…。

最初に膠だけで練ることが重要です。

最初から水と膠が混ざった薄い液で溶くと、
絵具の粒子一つ一つに膠がコーティングされず、定着力が弱まってしまうからです。

  1. 絵具と膠液だけでしっかり練る(粒子を膠で包むイメージ)。
  2. その後に水で塗りやすい濃度に緩める。

この手順を守るだけで、絵具の定着トラブルは激減します。

受け継がれてきた技法には、ちゃんと理由があるんですね。

膠を扱う際の注意点と保存方法

膠は化学薬品ではなく、自然由来のタンパク質です。
つまり、食品と同じように日が経つにつれて鮮度が落ちていき、「腐る」ものなので、正しい管理方法を知っておきましょう。

膠は「生もの」!腐敗を防ぐ冷蔵保存と使用期限

せっかく作った膠液をムダにしたくないです…

溶かした膠液は、栄養満点のスープのようなものです。
動物性タンパク質であるため、非常に腐りやすいのが欠点です。

  • 常温で放置すると、特に梅雨や夏場は一晩で腐敗し、強烈な悪臭を放ちます。
  • 腐った膠は接着力がなく、絵具が変色したり剥落の原因になるため使用してはいけません。
  • 保存場所: 必ず冷蔵庫で保存してください。
  • 使用期限: 冷蔵していても、夏場は3〜4日、冬場でも1週間程度を目安に使い切りましょう。
  • 防腐剤入りのものであっても、使用後は必ず冷蔵庫に入れる
  • 更に、防腐剤が入っていないものは、数日以内に使い切る

古くなった膠は、思い切って捨てて新しく作り直すのが作品のためです。

膠の温度管理

膠は、温度に敏感です。

冬の寒い日は、作業中は冷えると固まってしまう(ゲル化する)ため、電熱器などで温めながら使用します。

これを「膠が戻る」と言います

  • 使うときは必要な分だけスプーンですくい、別の容器に移して温めて使います。
  • 冷えた膠はゼリー状に固まっていますが、温めれば液体に戻ります。

品質の落ちた膠を使うと、絵具が変色したり、剥落の原因になります。

この2つのことを徹底しましょう。

余った膠は捨てずに使える?再溶解のルール

一度作った膠液が余った場合、冷蔵庫で冷やし固めておけば、前述の通り数日は使えます。

しかし、何度も温めたり冷やしたりを繰り返すと、徐々に接着力(強度)は低下していきます。

「古い膠」は接着力が弱まっているため、
下塗りや骨描き(線描き)には使わず、薄めの膠として一番上の層に薄く色をかける時などに使い回すのがベターです。

  • 使う分だけその都度作る
  • 3日で使い切る量を作る
  • 使う分量だけ出す

この3点が、ムダを防ぐ最良の方法ですね。

初心者が選ぶべき日本画の膠(にかわ)とは?おすすめ3選

初心者は、どれを選べばいいの?

おすすめ1:ボトル入りの「膠液」

初めて日本画に触れる方には、断然、「ボトル入り膠液」がおすすめです。

理由はシンプルで、「濃度の失敗が少ない」からです。
自分で煮溶かす膠は、水の量や温度によって濃度が変わりやすく、安定させるのが難しいものです。
ボトル入り膠液なら常に一定の品質が保たれているため、「膠が薄すぎて絵具が剥がれた」というトラブルを未然に防げます。

まずは絵を描く楽しさを知るために、手軽な膠液から入りましょう。

おすすめ2:腐りにくく計量しやすい「鹿膠(しかにかわ)」

膠液を余らせてしまう…管理が大変そう

という方には、「鹿膠」が最適です。

1粒が1センチ4方(約1cm角)の大きさになっているため、「水◯ccに対して何粒」といった計量が非常に簡単です。
また、牛膠に比べて腐敗しにくいという特性があるため、毎日制作できない忙しい社会人の方でも、安心して使い続けることができます。

これは、初めての方、絵を描く時間は毎日は難しい・不定期だという方にいいかもしれません。

「瓶入り鹿膠」なら、既にゼリー状で、使う分だけ取ってすぐに溶かして使うことができて日持ちするので安心です。

おすすめ3:本格派へのステップアップ「三千本膠」

本格的に学びたいし、大きい作品を描きたい。
そのためにコスパがいいものを使いたい。

それならオーソドックスな「三千本膠」をおすすめします。

  • 学校や教室などでは、こちらを指定されることが多く、日本画本来の描き味を学べます。
  • コスパは抜群!

「もっと絵具の発色にこだわりたい」「古典的な技法を学びたい」「大作を描きたい」と思ったら、三千本膠に挑戦してみてください。

おすすめ《特別枠》:新時代!進化系「膠」

時代が進むにつれて、更に便利な商品が開発されてきています。

開封後も長持ちするボトル入り膠(にかわ)液

市販の膠液は一度開封したら、数日以内に使い切る物でしたが、ついに長持ちする膠液が登場しました!

また、自分で作った膠液に「防腐・防カビ」の役割を果たす添加剤を加えることで、大幅なコストパフォーマンスの向上が期待できます!

ドーサ液(にじみ止め)として活躍する膠

膠のもう一つの重要な役割を紹介します。

それが、にじみ止めの役割を果たす「ドーサ(礬水)液」です。

和紙はそのままでは水を吸いすぎるため、膠液に「明礬(ミョウバン)」を加えた「ドーサ液」を紙全体に塗ることで、滲み止め加工を行います。

このドーサ引きが不十分だと、絵具が裏まで抜けてしまったり、発色が悪くなったりします。

ついに、明礬(ミョウバン)なしでにじみ止めに使える膠が登場しました!

新しい画材の発見のために、常に画材屋さんをチェックして試してみてくださいね!

「【日本画画材「膠(にかわ)」とは?】種類と使い方 徹底解説!」のまとめ

日本画の画材「膠(にかわ)」について解説してきました。

日本画の画材としての「膠(にかわ)」とは?種類と選び方

日本画画材としての膠(にかわ)の種類と特徴

日本画画材としての膠(にかわ)の種類と特徴

基本の「膠液」の作り方

日本画制作への使い方

膠を扱う際の注意点と保存方法

初心者が選ぶべき日本画の膠(にかわ)とは?おすすめ3選

  • 膠は日本画の命(接着剤)である
  • 温度管理(60〜70℃)に気をつけて溶かす
  • 生ものなので冷蔵保存し、早めに使い切る

この3点を押さえておけば、膠は決して扱いづらい画材ではありません。
日本画の画材である「膠」は、単なる接着剤ではなく、作品の質を決定づける重要なパートナーです。

最初は手間がかかると感じるかもしれませんが、自分で膠を溶き、指先で絵具と練り合わせる感触は、日本画制作における醍醐味の一つです。

まずは、扱いやすい膠液から始めて、徐々に自分好みの濃度や種類を見つけてみてください。

手軽な市販の膠水から始めてみよう

膠液を作ってみよう

膠の種類や濃度を使い分けてみよう

膠の扱い方をマスターすることで、日本画の表現の幅はぐっと広がります。

ぜひ、膠という素材に慣れ親しんで、日本画を描くことを楽しんでください。

髙橋 友美 Yumi Takahashi
日本画家 Nihonga Artist
日本画情景 - Scenes Art -
この言葉に相応しい絵を描くことをテーマにしています。

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