こんにちは。日本画家の髙橋友美です。
「日本画」と聞くと、

難しそう…



特別な人だけが描くもの



高級な画材が必要



そのように感じてしまう方も多いのですが、
実は道具の特徴さえ知れば、初心者でも一歩ずつ楽しめる絵画表現です。
この記事では、日本画とは何か、どんな画材の種類があるのかを、できるだけ分かりやすくお話しします。
日本画の画材の種類



まず、どういう画材を使うの?
日本画は、古来より受け継がれてきた天然由来の画材を使う事が大きな特徴です。
- 岩絵具や水干絵具など「天然・鉱物系」の絵具
- 和紙や絹といった日本ならではの支持体
- にかわ(膠)という動物性の接着剤
これらの画材の種類を知ることで、「日本画ならではの発色」や「やわらかな質感」が生まれてきます。
日本画の支持体(紙・絹・ボード・板)
まずは、日本画の「土台」となる支持体の種類から見ていきましょう。
日本画でよく使う支持体の種類
日本画でよく使う支持体は主に和紙です。
画仙紙、鳥の子紙など、絵を描くための色紙などがあります。
初心者には、まずドーサ引きの和紙がオススメです。


Amazon商品ページより
- ドーサ引きとは?
-
「ドーサ(土砂)引き」とは、和紙や絹などの素材に、「ドーサ液」を塗布する工程のことです。
- にじみ止め(滲み止め)
- 和紙が墨や絵具の水分を吸い込みすぎるのを防ぐ
- 線をくっきりさせる
- 絵具を定着させる
- 定着効果
- 岩絵具や金銀箔などを紙にしっかり定着させる
- 筆運びの調整
滲みが止まることで、滑らかな筆運びが可能
ドーサ液の濃度や引き方で滲み具合を調整し、和紙の質(厚さなど)や描画する技法(滲みを活かす場合など)によって、ドーサを引くか引かないか、またその方法が異なります。
- にじみ止め(滲み止め)
ドーサ引きの基本的な手順
- ドーサ液の準備
- 膠水(岩絵具と合わせるものより2〜3倍薄め)を温めて、擦り潰した明礬を溶かしてドーサ液を作ります。
濃度は紙の種類や用途によって調整します
(厚い紙には濃いめ、薄い紙には薄めなど)。
- 膠水(岩絵具と合わせるものより2〜3倍薄め)を温めて、擦り潰した明礬を溶かしてドーサ液を作ります。
- 和紙の準備
- 毛布などの柔らかいものを下に敷き、和紙を広げます(シワを防ぐため)。
- 塗布
- ドーサ液をたっぷりと含ませた刷毛で、和紙の表面(または裏面、両面)に均一に塗ります。
- 乾燥
- 完全に自然乾燥させます。温かいドーサ液は早く乾き、効果も高まります。




明礬(みょうばん)
- 日本画で制作するためのドーサ水作りには「生明礬」の方が良いとされる
- 膠をしっかりと固める
- 水に溶けやすく扱いやすい
- 結晶化(光り)を防ぐ
- 適度な「滲み止め」加減
- 乳鉢ですり潰して使う
※ドーサ引きについての詳細は、今後ご紹介させていただきます。
色紙は、和紙や絹など支持体に加え、サイズも様々で、簡単に試す事ができます。
色紙に描くことで手軽に日本画に触れられます。


色紙
- 種類、サイズが豊富
- そのまま描き始められる
- 仕上がった作品をそのまま飾りやすい




初心者の方が本画を描くには、「麻紙ボード」や「雲肌麻紙ボード」などの「日本画用ボード」がおすすめです。
理由は、準備の手間を大きく減らせるメリットがあるからです。


麻紙・雲肌麻紙ボード
- すでにパネル貼り・ドーサ引きが済んでいる
- そのまま描き始められる
- 仕上がった作品をそのまま額装して飾りやすい




本格的に描きたい、または、公募展などを目指すということであれば、
和紙が張ってあるパネルに描くのが一般的です。


雲肌麻紙パネル
- すでにパネル貼り・ドーサ引きが済んでいる
- そのまま描き始められる
- 仕上がった作品をそのまま額装して飾りやすい






アルテージュ
Yahooショッピング、ゆめ画材商品ページより
丈夫で重ね塗りや洗いなど様々な技法で技法で描く事ができます。サイズは小さいものから大きいサイズまで選択することが出来ます。
一方、絹本(絵絹)は大変美しく、透けるような独特の質感が魅力ですが、
にじみやすさ・扱いの難しさもあるため、日本画中級者〜上級者向けの支持体と言えます。


絵絹
- すでに絵絹貼り・ドーサ引きが済んでいる
- そのまま描き始められる
- 裏彩色ができる






絵絹に彩色 表、裏彩色



私も絹本の美しさに魅了されたひとりです。
完成後は、作品保護の観点からできれば「裏打ち」を専門家に依頼した方が良いです。
(絵絹の裏打ちは大変難しく、そのための道具も別途必要なので自分で行うのはオススメできません)
額装:薄美濃紙等の薄い和紙を絵の後ろに敷いて、その木枠の中の大きさと厚さに合わせたスチレンボード等の緩衝材を入れて保護することは可能です。
軸装:和紙・絵絹共「裏打ち」必須になります。
自分で「木製パネルに和紙を張る」または「木枠に絵絹を張る」
- 一番低価格で調整が効く
- デメリットはどちらも手間と時間が掛かる
- 既にヤニどめ加工済の木製パネルや木枠と、ドーサ引き済加工の紙であれば、少し手間を省くことができます。
- 絵絹は張った後にドーサを引く
まずは描くことに慣れてからやってみるということでOKです。
板に直接描くことは、古来から現代まで受け継がれています。
自然の姿そのままの木目を活かして描くことはそこからインスピレーションや思わぬ効果も期待できます。
但し、そのためには、板のヤニどめや脂分を抜くという下処理が欠かせません。
それができれば、蒲鉾板を再利用するなど、様々な板に描いてみることも可能です。


板
- すぐ手に入る
- そのまま描き始められる
- 自然の姿そのまま生かすことができる
- ヤニどめアク抜きなど、下処理が大事




日本画の絵具
次に、多くの方が気になっている日本画の絵具の種類です。
日本画でよく使われる画材には、主に次のようなものがあります。
日本画絵具


岩絵具
- 天然の鉱石や岩石を砕いて作られた粒子の絵具
- 粒子なので、地色が透ける
- キラキラとしたマチエールや、重なりの深さが魅力






水干絵具
- 泥や土を水で精製し、板状に干し上げて作られた絵具
- 落ち着いたマットな発色で、下塗りなど面を塗るのに向く






具絵具
- 胡粉に顔料を合わせた絵具
- 水干絵具との混色で自由に色調を調節できる


胡粉
- 日本画や工芸で使われる白色の代表的な顔料
- 牡蠣やホタテなどの貝殻を原料とする
- なめらかな質感と温かみのある白色
- 下塗り、仕上げなど様々な種類と用途がある






顔彩(がんさい)
- 固形の日本画絵具
- 水彩のように手軽に使える
- 用途は写生、下絵、仕上げなど
- 絵手紙、水墨画制作
- 初心者が日本画の色に触れる入口として◎






チューブ式日本画用絵具
- チューブ式の日本画絵具
- 水彩のように手軽に使える
- 用途は写生、下絵、仕上げなど
- 初心者が日本画の色に触れる入口として◎



高校生の時、授業で初めて日本画を描くときに使用した絵具です


墨
- 墨だけで描く水墨画はもちろん、日本画の下図にも使う
- 墨の濃淡で奥行きや空気感を表現できる




- 墨汁はNG
- 膠の質と量が固形墨と異なるため、本来の墨の深みや透明感、色の変化を再現しにくい
- シミになりやすく、長期保存性や絵具としての定着性に問題があるため


箔・砂子・金泥など金属製のもの
- 装飾をするために、古来から使われているもの
- 様々な種類や技法がある
- 変色しやすいものは防色加工が必要
- 薄くて繊細なものなので、細心の注意、手間、技術が必要




種類、使用方法などの詳細は別記事にてご紹介します
本格的に日本画を学んでいくなら、少しずつ岩絵具や水干の種類を増やすのがおすすめですが、
最初の一歩としては、顔彩の日本画セットと墨があれば、十分に「日本画らしさ」を体験できます。
日本画の道具
日本画は、絵具や支持体だけでなく、筆や刷毛、膠(にかわ)などの道具の種類も特徴的です。
膠(にかわ)


日本画に欠かせないのが「膠(にかわ)」です。
にかわは、絵具の顔料を固めて画面に定着させる「接着剤」の役割を持っています。
使い方は、水に浸して湯煎で溶かし、布などで濾してから使います。
🔳膠の種類


膠液(にかわえき)
- 最初から液体に加工されているもの
一度開けたら保存は効かないが、すぐ使用できて便利


三千本(さんぜんぼん)
- 明治時代の製法や原料・成分を基に製造されている
- かつて1俵に3,000本入っていたことが名前の由来
- 長い棒状のもの、ペンチなどで折って使用する


鹿膠(しかにかわ)
- 鹿の皮や骨、腱などを煮出して作られる
- 透明度や接着力、柔軟性に優れ、乾燥後のひび割れ防止効果、防腐効果も高い
- キューブ状
- ゼリー状の物は、手軽に使えるようにされている


粒膠(つぶにかわ)
- 粒状
- 長時間水に浸しておく必要がない
日本画用筆


線描筆(せんびょうふで)
- 線を引くための筆
- 抑揚のある線から細い均一な線を描ける筆まで様々
- 骨描筆、即妙筆、削用筆、白毫筆など
- 線描や彩色にも使用


面相筆(めんそうふで)
- 細い線、細部の彩色に使用
- 毛の種類や形状によって、筆のコシの強さや含みが変わるため、豊富な種類がある


彩色筆
- 面を塗る・ぼかす・グラデーション用
- 着彩に使用され、絵具をたっぷり含むよう羊毛をベースに作られている
- 選りすぐった原料で作った長穂彩色
- イタチを入れてコシを強くした夏毛彩色筆
- ぼかし用の隈取筆


削用筆(さくようふで)
- 万能な線描筆
- 先は上質のイタチ、白狸、羊毛で出来た含みがよくてコシもある筆
- 細い線から太い線まで強弱をつけて自在に描ける
- 線描だけでなく彩色にも適している


即妙筆(そくみょうふで)
- 絵具の含みが良く、柔らかでしなやか、かつ穂先がまとまりのある優美な線が描ける
- 細く美しい線(線描)から、細かい部分の塗り(彩色)、ぼかし
- 上質な羊毛に猫の毛などが混毛されることが多く、コシと柔らかさを両立


平筆(ひらふで)
- 広い面を塗るときに使う
- 面塗り、彩色など


連筆(れんぴつ)
- 筆を何本も連ねた形で主に面塗りに使用
- 穂首一つ一つが筆の調子を持っているので、強弱の効いた面塗が可能
- 直線的な面塗りだけでなく、曲線的な面塗り(人物の肌等)にも非常に適している


刷毛(はけ)
- 広い面を均一に塗るためにる使う
- 下地を塗る、水、ドーサを引く、ぼかし
- 絵刷毛、ドーサ刷毛、唐刷毛
他にも、胡粉筆や金泥筆、サイズや毛の種類(硬柔:イタチ、狸、山羊など)など様々な種類の筆があります。
日本画制作道具


絵皿(えざら)
- えのぐをとくための道具
- サイズ、形状は様々
- 陶器製の方が材料に影響されず使いやすい


乳鉢(にゅうばち)&乳棒(にゅうぼう)
- 胡粉や水干絵具を擦り潰すための道具
- サイズは様々
- 胡粉用と水干絵具用と分けた方が良い


膠鍋(にかわなべ)
- 膠を溶かすための小さな土鍋
- サイズは様々


膠匙(にかわさじ)
- 膠を溶かしたり、掬ったりするもの
- 基本は真鍮製


絵具匙(みずさじ)
- 絵具を瓶から出したり、量を調整するもの


筆洗(ひっせん)
- 筆を洗うもの、または水を溜めておくもの
- 中で分かれているものが筆洗用と絵具や膠と合わせるためのものと用途を分けられるので使いやすい


電熱器(でんねつき)
- 膠を溶かすための道具
- サイズは様々
家のガスコンロでもOKですが、自由に制作することを考えたら持っておいた方が良い
冬など膠がすぐ固まる環境であれば、低温保温機能付のIHコンロがあるとさらに便利


ホーロー製の鍋、ボール、バットなど
- 制作を補助する道具
- 熱が均一に伝わり、生麩糊作りが速やかにできる
- バットは大きめの平筆を使う時などに便利


転写用の道具
- 転写用紙(下絵を支持体に写す)
- 薄美濃紙という和紙に水干絵具の弁柄や藍色を日本酒(安いのでOK)で薄く伸ばして乾かして転写紙を作ることもできる
- 日本画用のチャコペーパーでOK
- さっ筆やボールペン、ガラスペンなど
- 写す作業の時に使う
その他、それぞれの作業に付随する道具がありますが、主な日本画の画材を一通りご紹介しました。
用途や好みに合わせて選んでみてください。



天然由来の画材でこんなに種類があるんですね。
日本画初心者におすすめの画材と選び方


ここまで「日本画 画材 種類」をざっと見ていただきました。



初心者はどの画材を買えばいいの?



それでは、私がおすすめしたい、日本画初心者のスターターセットをご紹介します。
日本画用絵具岩絵具初心者セット
まずは、本格的に日本画制作を始めたい方に、その入り口としてオススメです。
一通りの画材、見本の絵と手順書、支持体が揃っています。
絵手紙セット
絵手紙など、もっと簡単に始めたい、または日本画の基本的な色の名前や色味を知りたい、水墨画との違いを知りたい方にオススメです。
見本の絵と手順書が付いています。
色紙
プレゼント用に描きたい方向け、サイズも様々で、最近は葉書サイズのものもあります。
また、支持体も様々で、そのための練習用紙もありますので、気軽に試すことができます。
最初から「完璧な日本画画材の種類を全部そろえよう」と思う必要はありません。
むしろ、少ない種類の画材で何枚か描いてみて、「自分が足りないと感じたもの」から買い足していく方が、失敗も少なく、上達もしやすいです。



これならすぐ始められるね!
日本画の画材の特徴を活かす描き方


2025(令和7)年
豆色紙
最後に、せっかく日本画の画材の種類をそろえたら、
それぞれの特徴をどう活かすかが大切です。



どう描いていけばいいか分からない…
絵の具
- 岩絵具
- 粒子の粗さを活かして、光る部分や質感を強調したい場所に使う
- 水干絵具
- 広い面を落ち着いたトーンで塗りたいときに便利
- 下地として全体に「色の空気」を敷く感覚で使う
- 顔彩
- スケッチ感覚で、日本画らしい色を試したいときに
- 小作品や色の研究に向いている
支持体
和紙
- 麻紙:日本画を描くのに最適様々な表現が可能
- 画仙紙:にじみ・かすれが出る → 水墨画など、墨や淡彩の“空気感”向き
- 鳥の子紙:なめらか・にじみにくい → 線描き、細部の描き込みが可能
- 色紙:小作品向き。反りやすいので水分控えめに
ボード系
- 麻紙ボード/雲肌麻紙ボード:反りに強く安定 → 仕上げ作品に万能、岩絵具も胡粉も扱いやすい
絹本
- 絵絹(絹本):透明感・上品な発色 → 薄塗りの重ね、繊細なグラデ向き
パネル貼り
- 木製パネル+和紙(雲肌麻紙など):好きな紙を選べる → 作品の狙いに合わせて調整しやすい
板
木板など:吸い込み少・硬い → 線がシャープ。下地作りが重要、現代的表現もできる
技術
また、日本画は「塗る」というより、薄い層を重ねていく絵画です。
一度に濃く塗りきるのではなく、
- にごらない程度に薄く溶いた絵具で下塗り
- 乾かしながら、少しずつ色を重ねていく
- 最後に岩絵具などでアクセントを入れる
という流れを意識すると、日本画画材ならではの透明感や深みが出てきます。



砂絵みたいに層を重ねていくイメージですね。
「日本画の「画材」の種類と選び方/初心者にやさしいおススメ道具ガイド」のまとめ
日本画の画材の種類を知ることが、表現の自由につながります。
日本画の支持体(紙・絹・ボード・板)
支持体は仕上がりの質感と描きやすさを決める“土台”なので、表現と扱いやすさで選びます。
日本画の絵具(岩絵具・胡粉・水干絵具・顔彩・墨)
絵具はそれぞれ特徴が違うため、粒子感・白・面・手軽さ・濃淡など役割で使い分けます。
日本画の道具 筆・刷毛・膠(にかわ)など
道具は線・面・定着を支える必需品で、基本を揃えると制作が安定します。
日本画初心者におすすめの画材と選び方
初心者は「日本画用ボード+顔彩+基本の筆+墨」から始め、足りないものを後から買い足すのが失敗しにくいです。
日本画の画材の特徴を活かす描き方
支持体・絵具・道具の組み合わせを目的に合わせて最小限の手順から始めることが、上達と継続の近道です。
「日本画」「画材」「種類」というキーワードで検索される多くの方は、
- これから日本画を始めてみたい
- 自分に合う日本画画材の種類を知りたい
- まず何を買えばいいか迷っている
という不安や疑問を抱えています。
ですが、日本画画材の種類は、決して「難しさ」の象徴ではなく、
あなたの表現を広げてくれる選択肢の多さでもあります。
この記事が、
「日本画って意外と始められそう」
「まずはこの画材から試してみよう」
と感じてもらえるきっかけになれば、日本画家としてとてもうれしいです。



今後も、具体的な画材のレビューや、日本画の描き方、モチーフ別の表現方法なども発信してまいります。
ぜひ、日本画の世界を一緒に楽しんでいきましょう。









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